幼児の聴覚は成人とは異なり,雑音下における選択的聴取の能力が十分に発達していない。本研究では,幼児にとって生態学的に必要性の高い音をシグナルとし,雑音下での聴取力の発達変化を4~6歳児70名を対象に検討した。実験は,交通音や多人数音声を背景雑音とし,車・バイクの通過音や呼びかけ音声等のターゲットを検知するクイズ形式で実施した。実験に先立ちOAEにより基本的な聴力を確認した。実験の結果,4歳児と5及び6歳児との間に有意差があり,雑音下での聴取能力が4歳以降で顕著に発達することが示唆された。発達途上の幼児の音環境はこのような聴覚特性を踏まえて検討する必要がある。
日本国内の15大学の日本語を母語とする大学生,大学院生を対象にして日常的な発話のしにくさの自覚に関するアンケート調査を行った。調査は質問紙法により実施した。回答のうち,言葉や聞こえの問題がないと回答した1,831名を対象に分析した。その結果,普段の会話で発音がうまくいかないと感じることが「ある」又は「どちらかと言えばある」と回答した者は全体の31.0%であった。男女別に分析すると,男性の35.5%,女性の24.4%が普段の会話で発音がうまくいかないと感じることが「ある」又は「どちらかと言えばある」と回答し,発話のしにくさを自覚する人は自分の音声が聞き返されることが多いと感じる傾向があった。