本論文では,感音性難聴者の音声聴取能力と可聴領域内のホルマント情報との関連について調べ,可聴領域と補聴器の振幅圧縮の特性から音声聴取能力を推定する可能性について考察している。まず画像を併用して,単共振分解型補聴器による聴能訓練を効率化し,その効果を分析した。次に5名の難聴者の改善された音声聴取能力と可聴領域におけるホルマントピーク分布には定量的関係が存在することを確認し,補聴器を通して伝達すべき音声情報についての仮説を得た。更にその仮説を健聴者の種々の模擬難聴状態において聴野内のホルマントピークの量を制御する実験で検証した。このことから模擬難聴は感音性難聴の状態をかなり良く模擬していると推測された。最後に,本研究の結果に基づいて,可聴領域にホルマントピーク情報を伝達する単共振分解型補聴器の改良法とその効果の推定について述べている。
抄録全体を表示