超高齢社会で必要性が増すと予想される高齢者の言葉の聞きとりの改善を目的として,定常部抑圧処理(荒井ら,音講i論集, 1, 449-450, 2001; Arai et al., Acoust. Sci. & Tech., 23(4), 229-232, 2002)を用いた音声強調の効果を検討した。この音声強調は,音声の知覚に比較的重要ではない母音の定常部のエネルギーを抑圧することにより,子音部,ホルマント遷移部を相対的に振幅増幅する。24種類の日本語単音節の音声強調を行って, 48人の高齢者を対象に明瞭度実験を行った。その結果,特に難聴者に対して有効であり,実験で使用した子音の調音方法に関わらず明瞭度の改善が見られた。また,高齢者によく見られるラ行音などへの異聴が減少した。
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