映画やテレビドラマなどでは,役者の重要な台詞のあとに音楽を挿入する手法が多用されている。そのような音楽の最適付加時点は,台詞に込められた感情によって異なることが示されている(稲田,藤山,岩宮,2017)。本研究では,先行研究で用いた映像刺激に別の音楽を組み合わせた条件下において,音楽付加のタイミングのよさと音楽が付加する直前の台詞のインパクトの強さに関する評定実験を行い,音楽の違いが評定値に及ぼす影響を検討した。音楽の違いは評定値に影響を与えず,音楽と映像が調和しているか否かに関わらず,音楽の最適付加時点は台詞に込められた感情によって異なり,音楽の付加時点が最適であると台詞のインパクトが最も強くなることが示された。
音の方向性や音質を変化させず,再生環境に合わせて音響レンダリングを行うためには,音源を直接マイクロホンに到達する音(直接音)と,反射音,残響音や背景雑音などの音の方向性が不明瞭な音(拡散音)に分けることが重要である。本研究では,3次元音響信号を対象として,チャネル間の相関が高い信号であるコヒーレント成分で直接音を推定し,原音からコヒーレント成分を除いた信号である残差成分で拡散音を推定する。3次元音響信号では,チャネル間の相関が低い信号が存在するため,チャネル間の相関が高い信号のみを用いて推定することで推定精度が向上すると思われる。本稿では,22.2チャネルの音源を用いて推定精度向上を行った。