箏には,絃を演奏者から見て柱の左側の位置上で押すことにより絃の張力を増加させ,柱の右側の絃振動の基本周波数を上昇させる奏法がある。この奏法は押し手と呼ばれ,元の音高から半音上げる場合には「弱押し」,全音上げる場合には「強押し」と呼ばれる。本論文の著者の一人である安藤は,より弾き易い箏糸を開発する観点からこの押し手における押絃力等の計測を行っている。しかしながら,著者の知る限り,押絃力と,絃の力学的特性や絃の寸法との関係についての先行研究は存在しない。このため,本研究ではこれらの関係を表現可能な押し手の物理モデルを構築した。この物理モデルにより,押絃力の計測結果の評価や押し手の位置による必要な押絃力の変化等を推定することが可能となった。
圧電縦効果で駆動される振動子の振動レベル特性が横効果振動子との比較で論じられた。振動子材料にはハード系PZTセラミックスが使用され,測定には電気的過渡応答法が用いられた。振動レベルの増大と共に共振周波数frと機械的品質係数Qmは減少し振動パワー損失密度Pdは増大した。振動レベルを振動速度で表示した場合,縦効果振動子の諸特性の変動率は横効果振動子との比較で小さいことが明らかにされた。ハイパワー特性として重視されるPdに関して比較すれば,例えば振動速度1m/sという高振動レベルにおいて,縦効果振動子は横効果振動子の約52%であった。