人間同士又は人間と機械との音声対話において,対話相手の音声認識・言語理解性能,対話状況や対話相手の違いによって生じる被験者発話の言語的・音響的特徴の差に関して実音声対話データの分析結果から明らかにする。機械との対話を扱うため,比較的単純な状況設定としてカーナビゲーションシステムにおける目的地検索・設定タスクを想定し,その音声インタフェースという具体的な状況設定において被験者発話に現れる言語的・音響的な特徴の差を比較した。想定した状況は,音声認識・言語理解率が100%と約80%の場合,対話相手が人間,応答能力が制限された人間,又は機械の場合,そして運転中又は停車中の場合である。これらの対話状況の違いにより発話にどのような違いがあるか,被験者24名による実対話音声の収録データに基づいて分析を行った。運転操作中の状況設定に関しては,擬似的な運転操作環境を設定した。その結果,運転操作の有無による言語的な特徴の差異はほとんどないが,音響的な特微の違いが一部見られたほか,対話相手側の応答に関する能力が制限されると被験者発話において幾つかの言語的・音響的な特徴が現れることが明らかになった。
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