A-D変換器の一つとしてデルタシグマ変調器がある。その構成要素であるループフィルタの高次化により,高い信号対雑音比(SNR)が得られるが,入力振幅が大きくなると不安定になる問題がある。先行研究ではロバスト制御理論によるループフィルタ設計手法やシステム構造に注目した入力振幅に対する安定性の改善が行われている。本論文では可変構造制御理論であるスライディングモード制御理論に注目した。切り換え超平面を設計し,状態を超平面に拘束させるコントローラを設計することで,これまでに実現されていない次数の高次デルタシグマ変調器において,大振幅入力でSNRを保ちつつ安定な動作が確認された。