頭部伝達関数の測定は1方向ずつ行うことが一般的であり,測定に長時間を要することが課題となっていた。そこで本稿では,システム同定理論を応用してこの問題を解決する手法を提案する。提案法では,頭部伝達関数を多入力1出力システムと見なすことで,3次元空間上の複数方向から同時に入力を印加し測定を行い,システム同定理論を用いて各方向の頭部伝達関数を推定する。また,このときに用いる適切な入力信号の作成法についても述べる。57方向同時推定実験により,提案法が,TSP(time-stretched pulse)を用いた1方向ずつの測定と概ね同等の推定結果を得つつ,測定時間を大幅に短縮するものであることを示す。
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