集合住宅の界壁の遮音等級はD曲線による接線法が日本建築学会の基準として用いられている。D値と透過音の主観的印象との関係の検証は大切だが留意すべき点がある。まず界壁の遮音欠損のパタン及び透過音の種類が多様なので刺激数が多くなる。次に検証に際しては実用的な評価法の使用が望ましい。そこで多くの刺激条件に対応できるカテゴリ連続判断法を用いて心理実験を行い, 実用的な評価法であるLAeqとの関係を検討した。その結果種々の界壁の周波数特性にかかわらず, LAeqの値が一定のレベルを超えると, 反応は聞こえる方向に系統的に変化し, LAeqの値から検知閾を推定することで遮音性能の評価法にLAeqが有効であることを実験的に示した。
ヒューマンエコーロケーション機能の体得やその訓練・解析を行う上で, 生活環境に存在する様々な物体の超音波領域における反射率等のデータを把握しておくことは重要である。しかしながら, 超音波領域のデータはほとんど存在していない。本研究では, 実環境において, 指向性を有する音源, 受音器を用いて平面パネルの超音波領域の音圧反射係数の測定の考え方を示すと共に, シミュレーションを通して測定結果の妥当性を確認する。ここでは, 合板と家屋内壁の斜め入射反射係数の絶対値の測定結果を示す。このような実環境における構造部材の音響特性をあらかじめ把握しておくことで, 反響音の解析や障害物知覚に対して有益な示唆を与えることができる。
板状に成形加工された多孔質材で構成した有孔板の吸音特性について報告する。このタイプの材料は通常, 吸音性能を得るため塗装表面には細孔が設けられるが, その吸音メカニズムは通常の孔あき吸音板とは若干異なっている。本報告では細孔の設けられた塗装面と多孔質材を対象として, 材料表面から見た音響インピーダンスの計算式を求める。既存の多孔質成形板の音響性能の実測結果に基づき, 2種のモデル試験体の垂直入射吸音率の測定値と計算値の比較を行い, 当該音響モデルの妥当性について検討する。最後に, 若干の垂直入射吸音率の数値計算例を示し, 材料パラメータが及ぼす影響, 及びこのタイプの吸音材料の性質について述べる。