日本語を母語としない日本語学習者にとって,短子音と長子音(促音)及び短母音と長母音(長音)それぞれを区別して発音するためのモーラの時間制御は難しい課題である。本研究では,話速を変化させたときの,対照的な短・長子音及び短・長母音の生成に関わる音声セグメント長の特性を,日本語母語話者と中国語母語話者について調べた。セグメント長を測定して回帰分析した結果以下のようなことが明らかになった。1)日本語母語話者の場合は,単語内の平均モーラ長と促音長及び長音長の間には話者によらず明確な直線関係が存在するが,中国語母語話者の場合は直線からの変動が大きくしかも個人差も大きい。2)中国語母語話者は話速を大きく変化させることが困難である。3)回帰分析によって得られる規格化標準誤差が中国語母語話者の特殊モーラの習熟度を評価する良い指標である。
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