4/4拍子の音楽音響信号を対象としたDownbeatの推定手法を提案している。Downbeatとは一般に小節の開始拍を意味し,それを推定する既存手法では,小節の長さが一時的に変化した場合や拍時刻の誤推定が発生した場合に対応できない。そこでこの研究では,既存手法の問題点の解決策として,小節開始拍となる可能性をその拍前後のスペクトル変動で表し,その周期の一時的な変化を検出する手法を提案している。提案手法では,まず入力楽曲に対して拍を推定し,小節内の1〜4番目に対応する拍を暫定的に決定する。その後,暫定的に決定された1〜4の拍におけるスペクトルの変動量を比較し,スペクトルの変動量が大きい順に順位スコアを付与する。そのスコアを各拍に対して求め,楽曲の進行によるそのスコアの増加傾向の変化を用いることで,小節の長さの一時的な変化や拍時刻の誤推定に対応する。評価実験によって,提案手法は,既存手法では推定が困難な楽曲に対して,Downbeatを正しく推定できることが確認されている。
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