交通機関の騒音の予測における防音壁の遮音量の算出に際しては,本来は速度を持つ音源を静止しているものと仮定して,受音点での騒音を求める手法が用いられている。しかし,音源が高速で移動する場今はドップラ効果により周波数の変調が生じるなど音源特性が変化し,音源の移動速度の上昇と共にその変化も大きくなり,音源特性の変化が無視できないものと考えられる。そこで,音源が高速で移動する場合の防音壁の挿入損失について検討を行った。これまでに我々は,数値計算を用いる手法として,2次元空間での境界要素法で求めた基本解を断面方向に積分変換することにより3次元音場の解を求める手法を音源の周波数が変調する場合へ適用することを検討し,この手法を用いて防音壁の挿入損失の変化について検討した。この計算結果から,音源が音速で移動する場合には,速度に比例して受音点での音圧が上昇し,受音点で最大値を観測する位置は受音点正面を原点として音源の進行方向を正としたときの負の方向に移動する。また,防音壁がある場合には,最大値は更に芦の位置に移動し,その移動量は,速度に応じて大きくなるごとを報告した。本報では,音源が高速で移動するときの防音壁の挿入損失について,実験により検討するために高加速及び高波速度に耐える無指向性の点音源を製作し,その音源を用いて,音源が高速移動する場合のドップラ効果を考慮した防音壁の挿入損失について実測した結果を報告する。
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