音源が高速で移動する場合はドップラ効果により周波数の変調が生じるなど音源特性が変化し,音源の移動速度の上昇と共にその変化も大きくなる。そこで,音源が高速で移動する場合の防音壁の挿入損失について検討を行った。本稿では,まず2次元空間での境界要素法で求めた数値解を直交する方向に積分変換することにより3次元音場の解を求める手法について音源の周波数が変調する場合への適用を検討し,この手法を用いて防音壁の挿入損失の変化について検討した。数値計算結果から,音源が高速で移動する場合には,速度に応じて受音点での音圧が上昇し,受音点で最大値を観測する位置は受音点正面を原点として音源の進行方向を正としたときの負の位置に移動する。また,防音壁がある場合には,最大値は更に負の位置に移動し,その移動量は,速度に応じて大きくなる。防音壁の挿入損失の最大値は大きくなり,700 km/hの場合2dB大きくなることが明らかになった。しかし,この手法では,計算量が膨大となり大きな労力を必要とするため,次に前川の実験式の利用を基本とし,音源が高速移動する場合のドップラ効果による周波数変調及び音源の指向性の変化を考慮して防音壁の挿入損失を求める簡易な手法を提案し検討した。この手法を用いて挿入損失を求めた結果は,概ね数値計算で求めた結果と一致しており,この手法は有用であることが明らかとなった。
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