日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
27 巻, 3 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 岡島 邦雄
    1994 年 27 巻 3 号 p. 725-734
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃癌・大腸癌の発育・進展を検索し次の結論を得た.
    1.癌組織中のcollagenとcollagenase活性の検索によリスキルス胃癌の成因は癌細胞と線維芽細胞により産生されるcollagenaseの活性が低分化型癌の進展先進部において著明に上昇し, この部の膠原線維が破壊され, そのあとに癌細胞が浸潤し, さらにcollagen合成が促進され特徴的なスキルスとなる.
    2.癌組織を分子生物学的に検索し, 癌の発育進展を考察し, 増殖因子-受容体系の異常発現や癌遺伝子の異常発現が癌進展に関与するという結果, すなわち限局性発育はEGF, c-myc, c-erb B2が関与し, 浸潤性発育にはTGF-βが, リンパ節転移にはc-myc, PCNAが, 血行性転移にはEGF, c-myc, c-erbB2が, 腹膜播種にはTGF-βが関与する.また, 癌対宿主のinteractionの因子としては宿主の免疫応答に直結してHLA抗原が癌の進展に関与し, HLA抗原の発現が軽度な場合は特に癌が進展しやすいという結果を得た (escape theory).
    これらの研究結果は直ちに臨床上に応用しうる有用なものと考える.
  • 消化器癌を中心として
    田原 榮一
    1994 年 27 巻 3 号 p. 735-742
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    食道癌, 胃癌および大腸癌におけるそれぞれの遺伝子異常を概説し, それらを実践医療に導入した分子診断の新しい戦略について, 本年8月から開始した広島市医師会検査センターの例をとりあげ紹介した.この新しい戦略は今後の日常の強力な, かつより客観的な癌診断法として役立つのみならず, 癌の悪性度の予知や治療の指針にも貢献するであろう.
  • 大倉 久直
    1994 年 27 巻 3 号 p. 743-752
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腫瘍マーカーの臨床的意義は高危険度群患者の追跡, がん診断の補助, がんの生物学的特性の鑑別, 進行度と予後の推定, 治療経過の観察と再発の発見などにある.消化器がんには多数の腫瘍マーカーがあるが, 早期診断に有用なものはない.唯一, 肝細胞癌が慢性ウイルス性肝炎と肝硬変症は血清α1-fetoprotein (AFP) とprohrombin inhibitor produced by vitanin k dttciency (PIVKA-2) の定期的な測定で比較的早期に診断される.また, 術前血清マーカー値が独立の予後因子であることが証明された.胃や食道では産生腫瘍マーカーやがん遺伝子の過剰発現から予後不良のがんが診断できる.治療効果判定には定期的な定量演J定が有効であり, 血中半減期と治療後の最低レベルが治療の根治度を, 術後の増加が再発の前兆を示す.
    がん遺伝子, 抑制遺伝子と遺伝子産物が腫瘍マーカーとして利用され, 糞便抽出液や膵液の検査で早期診断が可能となろう.
  • 菊地 充, 渡辺 正敏, 小川 將, 中村 隆二, 斉藤 和好, 稲田 捷也, 吉田 昌男
    1994 年 27 巻 3 号 p. 753-758
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    32例の食道静脈瘤直達手術術後に, 血中エンドトキシソ (Et) をNew perchloric acid (New PCA) 処理後エンドスペシー (生化学工業) を用いて測定し, polymyxin B sulfate (PL-B), tinidazol (TDZ) 投与の直腸内細菌, 血中Etに及ぼす効果を調べた.症例を非投与 (A) 群13例と, PL-B300万単位 (B) 群9例, PL-B600万単位 (C) 群5例, PL-B300万単位, TDZ 1,000mg (D) 群5例に分け, 術前に3日間投与した.投与前 (手術3日前), 術後1, 3, 5病日と, 投与群では術前日 (投与後) にも末梢血を採取しEtを測定した.A群は術前5.8 (平均, pg/ml) から第1病日に7.4に増加し, その後漸減した.B群では投与後に16%の減少がみられ, 術後も同じレベルで推移した.一方, C, D群は投与後に30%以上減少したが術後はB群に比し高値であった.PL-B投与は, 術後血中Etの増加を抑制したが, PL-B増量やTDZ併用は必ずしもEt濃度の減少を来さず, 細菌叢の変化あるいは死滅した細菌が放出したEtの増大が考えられた.
  • 細川 治, 山崎 信, 津田 昇志, 渡辺 国重, 谷川 裕, 海崎 泰治
    1994 年 27 巻 3 号 p. 759-767
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    1963年から1982年までに開腹切除術を行った早期胃癌756例中717例 (94.8%) に網嚢切除を行わず, リンパ節郭清がD0-1にとどまる縮小手術を行い, これらの症例を10年以上にわたって追跡調査した.202例の死亡が確認され, 胃癌再発死亡が23例 (11.4%), 他癌死亡が42例 (20.8%), 非癌他病死が137例 (67.8%) であった.肉眼型が混合型である症例では再発死亡率 (7.3%) が高く, 10年相対生存率 (88.1%) が低かった.またリンパ節転移陽性例も再発死亡率 (18.8%) が高く, 10年相対生存率 (84.1%) もリンパ節転移陰性例 (100.8%) より低かった.早期胃癌縮小手術の再発死亡率は3.2%, 根治的切除が行われた症例に限ると2.9%であった.そして, 10年相対生存率は99.2%であった.大部分の早期胃癌は縮小手術の適応になりうると考えられ, どのような早期胃癌に第2群以上のリンパ節郭清が有効かを明らかにすることが今後の課題と考えられた.
  • 脂質過酸化の関与
    福原 賢治, 大内 清昭, 松野 正紀
    1994 年 27 巻 3 号 p. 768-774
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝切除後の胆汁性腹膜炎による肝再生障害について, ラットを用い実験的に検討した.70%肝切除術に総胆管切開による胆汁性腹膜炎を付加すると, 残存肝のDNA合成の発現は有意に遅延し低下したが, 活性酸素スカベンジャーの反復投与は, 胆汁性腹膜炎による肝再生障害を有意に改善した.残存肝の脂質過酸化は肝切除のみでは亢進せず, 胆汁性腹膜炎で術後早期より有意の亢進がみられたが, スカベンジャーの投与により約1/2に抑制された.残存肝エネルギーチャージの低下は胆汁性腹膜炎でより大きく, 回復も遅れる傾向にあった.胆汁性腹膜炎では血中エンドトキシンの上昇がみられ, これが活性酸素の生成を促し残存肝における脂質過酸化反応亢進の一部を担っているが, 胆汁成分の直接的なミトコンドリア膜障害によるエネルギー代謝障害が肝再生障害を引き起こすものと考えられた.
  • 脇坂 好孝, 佐野 秀一, 中西 昌美, 小池 能宣, 尾崎 進, 岩永 力三, 内野 純一
    1994 年 27 巻 3 号 p. 775-780
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    1991年3月末より腹腔鏡下胆嚢摘出術 (以下, LCと略記) を実施した症例の中で腹部超音波検査, endoscopic retrograde cholangiopancreatography (以下, ERCPと略記), 腹部CT検査の3種すべてを術前に行いえた82例について手術適応波定における画像診断の有用性について検討した.特にLC中に開腹に移行した例や逆にLC可能だったと後になって思われた開腹胆嚢摘出術 (以下, OCと略記) 例を中心に分析した.1) 以前LC困難と考えられていた重篤な急性胆嚢炎の既往を有する例は画像上胆嚢壁肥厚や胆嚢造影陰性の所見がなければLC可能である, 2) 超音波検査とCT検査とは胆嚢壁や内部胆汁の性状, 周囲との位置関係の把握に有用で特にERCPにおける胆嚢管描出や途絶様式は適応決定上最も有用な所見であった.これらはLCの適応条件が経験の蓄積と技術の向上のために変化し流動的となっている現在において重要な結論と考えられた.
  • 原田 信比古
    1994 年 27 巻 3 号 p. 781-788
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    十二指腸温存膵頭全切除術 (DpPHR) 15例の術後消化機能および消化管ホルモン分泌能を, 全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除術・胃膵胆配列再建 (PpPD) 14例を対照として比較検討した.術後の食餌負荷後2時間のsecretin分泌増加累積和 (ΣΔ) は, PpPDでは7, 5±0.8ng-min/ml, DpPHRでは9.0±1, 5ng-min/mlであった.術前値に対する術後1年経過時の膵外分泌機能はPpPDで64%, DpPHRで88%であった.術後の食餌負荷に対するgastrin分泌能, 術前後の胃酸分泌能, 膵内分泌機能, および術後1年経過時までの血液生化学検査値, 体重の推移では両群間に差はみられなかった.膵頭切除における十二指腸温存は, 遠隔時の膵外分泌機能維持に寄与する可能性が示唆された.
  • 小西 文雄, 古田 一裕, 斉藤 幸夫, 片岡 孝, 柏木 宏, 岡田 真樹, 金澤 暁太郎, 菅原 正, 篠原 直宏
    1994 年 27 巻 3 号 p. 789-796
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    直腸癌に対する術前放射線化学治療において, 温熱療法を加えることによる腫瘍壊死効果の増強について検討した.A群 (18例) では放射線温熱化学併用治療を, B群 (18例) では放射線化学治療を施行した.放射線照射は総量40.5Gy, Whole Pelvisの照射野で施行した.温熱療法は, 8MHzRadiofrequencyを用いて1回50分計5回施行した.また, 5-nuorouracil坐薬1日200mg計3,400mgを投与した.治療前後で施行した下部消化管注腸造影における腫瘍の縮小率の平均値は, A群では31.8%, B群では18.2%であり, A群において有意に縮小率が高かった.切除標本の病理組織学的所見における治療効果を, 胃癌取扱い規約の規準に従って評価した結果, A群ではB群と比較して有意により高度な腫瘍の変性や壊死が認められた.以上より, 温熱療法を併用することによって治療効果が増強されることが示され, 放射線温熱化学併用治療は直腸癌の術前治療法として有用であろうと考えられた.
  • 酒井 良博, 初瀬 一夫, 市倉 隆, 玉熊 正悦, 入江 敏之, 古井 滋, 緒方 貞夫
    1994 年 27 巻 3 号 p. 797-800
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は77歳の男性.C型慢性肝炎で, 肝生検を施行された.5日後に, 吐血を認めたため内視鏡検査を施行したところ, 十二指腸second portionに凝血塊がみられ, 肝生検に由来したhemobiliaの疑いで当科に紹介された.CTにて胆管内および十二指腸に血腫の存在を疑わせるhigh density areaを認めた.さらに血管造影を施行したところ, 腹腔動脈造影にて肝後下区域に分布する動脈にA-P shuntがみられた.この血管を出血部位と診断しTAEを施行しhemobiliaは治癒した.今後, 肝生検を起因するhemobiliaが増加することが予想されるが, それに対する診断およびTAEの有用性を報告した.
  • 小西 大, 竜 崇正, 木下 平, 河野 至明, 谷崎 裕志, 新井 仁秀, 長谷部 孝裕
    1994 年 27 巻 3 号 p. 801-805
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胆摘後断端神経腫はまれな疾患であるが, 胆管狭窄を来した場合胆管癌との鑑別が問題となる.今回われわれは胆摘後右肝管に発生した症例を経験したので報告する.症例は68歳の女性.主訴は背部痛.13年前, 他院にて胆石のため胆嚢摘出術を受けていた.今回胆道造影にて右肝管の閉塞を認め, 胆管癌の診断にて拡大肝右葉切除を行った.病理組織学的には閉塞部に一致して神経腫を認めた.前回胆石手術施行に際し, 胆嚢管が右肝管より分岐していたため術中右肝管を損傷しており, これに起因する胆管断端神経腫と診断した.
    胆管断端神経腫本邦報告27例の検討により黄疸にて発症し, 胆管狭窄を示した場合胆管癌との鑑別は困難である.詳細な既往歴の聴取, 胆道鏡, 術中迅速病理診断が鑑別に有用である.治療法は腫瘤を伴う狭窄部胆管の切除が妥当であると考えられた.
  • 二村 学, 横尾 直樹, 岡本 亮爾, 白子 隆志, 山本 秀和, 久米 真, 米山 哲司, 森 茂, 東 久弥, 米沢 圭
    1994 年 27 巻 3 号 p. 806-810
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    結腸全摘後7年目に, 腹腔内desmoidを発症したGardner症候群の1例を経験したので報告する.症例は42歳の男性.1986年Gardner症候群のため結腸全摘術を受けた.この時上行結腸に癌腫を認め, 大腸癌取扱い規約によるとa1, n1, P0, H0, M (-), stage IIIであった.1992年3月頃から, 左上腹部に無痛性の腫瘤を指摘されていた.11月になり同腫瘤の増大を認めたため入院となった.
    身体的特徴として, 口唇に色素沈着, 胃・直腸に過形成性ポリープ, 上下顎骨に骨腫, 過剰歯, 埋状歯, 嚢胞が見られた.腫瘤は造影CTで増強され, 血管造影では空腸動脈の圧排とencasementを認めた.
    開腹所見では腫瘤は約10cmで腸間膜由来と考えられた, 高度の癒着と, 短腸症候群の恐れから生検に止めざるをえなかった.組織学的にdesmoidと診断された.現在UFTと, Tamoxifenの投与にて経過観察中である.
  • 竹之内 伸郎, 三浦 哲哉, 大竹 節之, 日下 貴文, 藤森 勝, 関下 芳明, 塩野 恒夫, 黒島 振重郎, 山口 潤
    1994 年 27 巻 3 号 p. 811-815
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は28歳の女性.腹痛を主訴として来院した.精査の結果, 腎の上極のレベルから骨盤腔にわたる腫瘤を認め, 小腸間膜腫瘍の診断にて手術を施行した.腫瘍は小腸間膜に限局していたが腸管壁内にも一部浸潤しており腸管と共に腫瘍を切除した.組織学的所見では, 内皮細胞に被覆されリンパ液を内容とする大小のcystを認め, その周囲には平滑筋細胞の増殖が観察され, リンパ管筋腫症と診断された.
    リンパ管筋腫症は, 妊娠可能な年代の女性に認められ, 縦隔・肺・後腹膜のリンパ組織に過誤腫性の平滑筋細胞の過形成を生ずるまれな疾患である.なかでも, 腸間膜の発生例は極めてまれで, これまでに4例の報告例をみるのみである.今回われわれは小腸間膜リンパ管筋腫症の1例を経験したので, 若干の文献的考察を加え報告する.
  • 鈴木 雅之, 来見 良誠, 花沢 一芳, 岸田 明博, 柴田 純祐, 小玉 正智
    1994 年 27 巻 3 号 p. 816-819
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    術前に診断しえた管外発育性小腸癌というまれな1例を経験したので報告する.
    症例は61歳の女性.下血を主訴に来院.臨床諸検査および組織学的検査にて管外発育性小腸癌と診断した.小腸癌はBauhin弁より約10cm口側に存在し, Borrmann2型で, 組織学的には中分化型腺癌であった.治療は回腸末端50cmにおよぶ右半結腸切除, R3リンパ節郭清を行い, 術後化学療法を追加した.
    回腸癌は全消化管癌の中では非常にまれであり, 術前に確定診断された例も少ない.治癒向上のためには積極的な検索が望まれる.
  • 加藤 一哉, 松田 年, 山本 康弘, 新居 利英, 小野寺 一彦, 葛西 眞一, 水戸 廸郎, 小林 達男, 斉藤 孝成
    1994 年 27 巻 3 号 p. 820-823
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    S状結腸の隆起性病変に対しtriple stapling technique (TST) を用いて腹腔鏡下S状結腸部分切除術を施行した.症例は, 55歳男性, S状結腸に最大径約2cmの無茎性腫瘤を認め, 生検にてGroup IVと診断されたため腹腔鏡下S状結腸部分切除術を施行した.
    臍部より腹腔鏡を挿入, 他の4本の10mm trocarを腹腔内に挿入し, ディスポーザブル腸鉗子およびendopath linear cutter 60®を用いて完全に腹腔内操作のみにてS状結腸部分切除術を施行した.吻合は肛門より挿入したCurved Detachable Head® (CDH) を使用し, TSTを用いて端々吻合を終了した.TSTを利用した腹腔鏡下S状結腸切除術は, 術後のquality of lifeを考慮するにも非常に有効な方法と考えられた.
  • 金田 真, 広田 有, 岩佐 真, 玉置 久雄
    1994 年 27 巻 3 号 p. 824-828
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は75歳の男性で, 主訴は腫瘤の肛門外脱出.約3年前に腫瘤の肛門外脱出を認め近医にて直腸ポリープを指摘されるも放置していた.その後症状の増悪と肛門出血を認め当科入院.
    直腸指診にて肛門縁より5~6cm, 7時方向に柔らかい腫瘤を触知し, 注腸透視では下部から上部直腸にかけて径約7cmで, カリフラワー様の腫瘤陰影がみられ, 大腸内視鏡検査では表面が分葉し, 顆粒状で粘液に覆われた腫瘍を認めた.
    腹部CTでは直腸内腔を脳回状で内部均一な腫瘍が占居しており, endoscopic ultrasonographyでは固有筋層以深への浸潤が疑われたが, 脱出した腫瘍には, 潰瘍や硬結などの浸潤癌を疑わせる所見は認めなかった.重積法にて腫瘍を切除した.腫瘍は8.5×8.0cm大の広基性病変で, 組織学的にはvillous adenomaであり悪性所見はみられなかった.
  • 新井 正明, 大和田 進, 森下 靖雄
    1994 年 27 巻 3 号 p. 829-833
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    下大静脈と胆管に浸潤し, 胆管細胞癌と鑑別困難であった直腸癌肝転移の1切除例を報告する.症例は54歳の女性で, 1989年10月に直腸癌で低位前方切除術を受けた.1992年5月に肝腫瘍を指摘され, 腫瘍マーカーはCEAとCA19-9が上昇していた.CTでは尾状葉から肝後上区域に辺縁不明瞭な低吸収域を認め, 超音波では辺縁不整な高エコー像で, 下大静脈と肝内胆管への浸潤が疑われた.内視鏡的逆行性胆管造影では前・後区域枝分岐部に陰影欠損を認め, 後区域枝は途絶していた.動脈造影では淡い腫瘍濃染を認めた.胆管細胞癌または非定型的な直腸癌の肝転移の疑いで手術を行った.下大静脈を25分間遮断し, 拡大肝右葉切除・下大静脈前壁合併切除を施行した.下大静脈欠損部は馬心膜でパッチ縫合閉鎖した.摘出標本の割面で腫瘍は4.0×3.5cm大で, 組織学的に下大静脈と胆管に浸潤した直腸癌の肝転移と判明した.
feedback
Top