日本消化器外科学会雑誌
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50 巻, 10 号
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症例報告
  • 脇 悠平, 山本 幸司, 高月 秀典, 松田 良一, 前田 智治
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 10 号 p. 769-779
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/18
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     患者は66歳の男性で,血便で前医を受診し,胃前庭部に2型腫瘍を認め,胃癌の疑いで当院に紹介された.生検では高度のリンパ球浸潤と異型リンパ球を認め,悪性リンパ腫疑いと診断された.しかし,精査中に腹痛と発熱を訴え,CTにて造影効果の乏しい胃壁の広範な肥厚と胆囊への腫瘍浸潤所見を認めた.悪性リンパ腫による胃穿孔の診断で,幽門側胃切除および胆囊摘出術を行った.病理組織学的検査所見では,放線菌の菌塊を認めたが,悪性リンパ腫の所見は認めず,胃放線菌症の診断であったため,抗生剤加療を3か月間行った.しかし,術後5か月で吻合部潰瘍が再出現し,生検から末梢性T細胞性リンパ腫と診断された.初回手術標本の再切り出し・精査を行うと,標本のごく一部に核異型を伴うリンパ腫細胞を認めた.出血・狭窄予防のため幽門側胃部分切除と横行結腸合併切除を行った.現在,術後6か月で化学療法を継続中である.

  • 松本 謙一, 遠藤 俊治, 中島 慎介, 太田 勝也, 池永 雅一, 山田 晃正, 西嶌 準一, 山内 周
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 10 号 p. 780-787
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/18
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     HER2陽性胃癌術後に異時性肝転移を来し,化学療法後に肝切除を施行した結果,組織学的CR(complete pathological response;以下,pCRと略記)であった1例を経験したので報告する.症例は75歳の男性で,上部消化管内視鏡で胃角部前壁の2型進行胃癌を指摘され,当科を紹介受診した.幽門側胃切除術を施行し,病理結果は以下であった[pT2(MP)N1 M0,pStage IIA,HER2(IHC 3+)].術後補助化学療法としてS-1を1年間内服した.術後2年6か月のCTで肝S3とS5に異時性肝転移が出現した.Capecitabine+cisplatin+trastuzumab療法を2コース施行し,PRであった.新規病変の出現を認めず,肝部分切除術を施行した.病理組織学的所見ではviableな腫瘍細胞を認めず,pCRであった.Capecitabine+trastuzumabを継続し,術後18か月現在無再発生存中である.

  • 萩原 清貴, 西川 和宏, 三宅 正和, 清川 博貴, 濱 直樹, 宮本 敦史, 宮崎 道彦, 池田 正孝, 平尾 素宏, 中森 正二, 関 ...
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 10 号 p. 788-795
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/18
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     症例は80歳の女性で,前庭部胃癌を指摘され,幽門側胃切除術,Roux-en-Y再建,胆囊摘出術を施行した.病理組織診断はpT4a,N2,ly2,v2,pStage IIIBであった.S-1術後補助化学療法を施行したが,好中球減少のため7コースで中止した.経過観察中に造影腹部CTで下部直腸の壁肥厚を認め,下部消化管内視鏡検査で直腸に半周性の2型病変を認め,原発性直腸癌を疑われた.生検検査は低分化腺癌で,免疫染色検査で胃癌と酷似することから胃癌直腸転移,子宮浸潤と診断し,術後14か月目に腹腔鏡下低位前方切除術,子宮全摘術を施行した.病理組織学的検査所見は低分化腺癌で,免疫染色検査結果が既往の胃癌と一致し,胃癌直腸転移と診断された.胃癌の直腸転移はまれな疾患であり,原発性直腸癌との鑑別が困難な症例も認めるが,免疫染色検査は診断に有用と考えられた.

  • 落合 洋介, 京兼 隆典, 河合 徹, 松葉 秀基, 浅井 悠一, 渡邉 夕樹, 久世 真悟
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 10 号 p. 796-802
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/18
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     症例は80歳の女性で,近医より腹部超音波検査で肝腫瘤を指摘され紹介となった.腹部造影CTで肝左葉と右葉に10.0×7.0 cm,1.0×1.0 cmの腫瘤を認め,大腸内視鏡検査で2/3周性の直腸癌を認めた.直腸癌の同時性多発肝転移と診断した.さらに,前下縦隔に2.5×1.5 cm大の腫瘤を認め,大動脈周囲に転移を疑うリンパ節が認められなかったことより,肝転移巣から前下縦隔リンパ節に孤立性に転移したと考えた.低位前方切除,拡大肝左葉切除,肝右葉部分切除,前下縦隔腫瘤摘出術を施行した.病理組織学的に前下縦隔腫瘤は直腸癌のリンパ節転移と診断された.術後補助化学療法としてmFOLFOX6を7コース施行し,術後4年間無再発生存中である.大腸癌肝転移の肝門部リンパ節転移は予後不良因子とされているが,縦隔リンパ節への転移症例の報告は少なく,郭清の意義や予後は不明である.

  • 山本 隆嗣, 宮崎 徹, 金田 和久, 大河 昌人, 田中 肖吾, 上西 崇弘, 久保 正二, 大野 耕一
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 10 号 p. 803-811
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/18
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     症例は76歳の男性で,56歳時に胆石症で胆囊摘出術が施行されており,この時,肝臓に異常所見はなかった.76歳時に心房細動治療の確認CTで肝左葉の萎縮と肝内胆管の拡張を認め,紹介受診となった.腹痛や黄疸,発熱はなく,血液データ上WBC,CRP,DUPAN-2以外異常なく,IgG4,pANCA,抗ミトコンドリア抗体は正常であった.画像上,左肝内胆管は拡張していたが,腫瘤影は認めなかった.PET-CTで狭窄部にSUV 4.3の集積を認めた.誘因不明の良性肝内胆管狭窄を最も疑ったが,肝内胆管癌と鑑別がつかず,肝左葉切除を施行した.病理組織で肝実質は萎縮し,左葉全体にGlisson鞘の線維増生と動脈肥厚,胆管内腔の拡張,門脈の萎縮を認め,狭窄部Glisson鞘に非特異的な炎症細胞の浸潤を認めた.術2年後現在,残肝に再燃は認めていない.

  • 北見 智恵, 五十嵐 俊彦, 牧野 成人, 河内 保之, 西村 淳, 川原 聖佳子, 新国 恵也
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 10 号 p. 812-822
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/18
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     近年高齢化,画像診断の進歩により重複癌の報告が増加しているが,膵胆管合流異常を伴わない異時性胆道系重複癌はまれである.胆囊癌術後30年目に発生した下部胆管癌の1例を報告する.症例は80歳の女性で,1983年胆囊癌[Gf]に対し,胆囊全層切除術が施行された.病理組織所見は高分化型腺癌,漿膜下層に浸潤を認め,No. 12bリンパ節転移陽性であった.2013年黄疸を主訴に来院し,下部胆管癌の診断で幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織所見は高分化型腺癌,T3aN1M0:stage IIBであった(胆道癌取扱い規約第6版).膵胆管合流異常は認めず,胆管断端にまで胆管上皮内腫瘍性病変(biliary intraepithelial neoplasia;以下,BilINと略記)を認めた.胆管断端には正常上皮,BilIN 2,BilIN 3が混在していた.術後4年経過した現在無再発生存中である.

  • 横山 新一郎, 安保 義恭, 高田 実, 木ノ下 義宏, 中村 文隆, 樫村 暢一
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 10 号 p. 823-829
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/18
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     症例は70歳の男性で,7年前に食道癌に対し胸部食道亜全摘,胸骨後経路胃管再建術を施行され,再発なく経過していた.今回,黄疸の精査で遠位胆管の狭窄所見を認め,同部からの生検でadenocarcinomaを検出し膵頭部癌と診断され,術前化学療法施行後に切除術を行った.術式は,右胃動脈(right gastric artery;以下,RGAと略記),胃十二指腸動脈,右胃大網動脈(right gastroepiploic artery;以下,RGEAと略記)を温存した,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後5日目に幽門下動脈断端の仮性動脈瘤破裂を来し,RGEAのコイル塞栓術を施行した.翌日縫合不全が明らかとなり再手術を施行した.十二指腸空腸吻合部縫合不全による腹腔内膿瘍が,仮性動脈瘤の形成,破裂をじゃっ起したと考えられた.結果的に胃管血流はRGA単独となったが,術中indocyanine green(以下,ICGと略記)蛍光法による胃管血流評価を行い,術後は胃管壊死なく経過した.RGA単独による胃管温存の報告は極めて少なく,胃管血流評価にはICG蛍光法が有用と考えられた.

  • 上坂 貴洋, 三澤 一仁, 大島 隆宏, 大島 由佳, 齋藤 健太郎, 沢田 堯史, 寺崎 康展, 皆川 のぞみ, 奥田 耕司, 大川 由美 ...
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 10 号 p. 830-837
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/18
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     症例は84歳の女性で,1998年2月,12 cm大の小腸gastrointestinal stromal tumor(以下,GISTと略記)に対して小腸部分切除を施行した.補助化学療法は行わず,2014年1月まで経過観察を行っていた.2016年6月,高血圧のスクリーニング目的に他院で実施された腹部USで肝右葉に腫瘤を指摘され,精査目的に同月当院紹介受診となった.腹部造影CTで肝S8に98 mm大の腫瘍を認め,腫瘍生検を行ったが診断は確定できなかった.腹部USやCTの結果はGISTの肝転移として矛盾しないものであり,肝右葉切除術を施行した.摘出標本の病理組織検査では紡錘形細胞の束状増生像を認め,c-kit陽性であることから小腸GISTの肝転移と診断した.GISTは切除後10年以上経過してからの再発例が散見され,10年を越える長期的なフォローアップが必要と考えられる.

  • 蝶野 晃弘, 池内 浩基, 堀尾 勇規, 後藤 佳子, 佐々木 寛文, 平田 晃弘, 坂東 俊宏, 辻村 亨, 宋 美紗, 内野 基
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 10 号 p. 838-848
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/18
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     本邦の炎症性腸疾患患者は年々増加し,長期経過例に合併する発癌が問題となっている.潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;以下,UCと略記)に合併する発癌症例の組織型は,頻度的には,高分化型腺癌が最も多いが,低分化の癌合併の報告も進行癌を中心にみられる.今回,神経内分泌細胞癌(neuroendocrine carcinoma;以下,NECと略記)を合併したUC症例を2例経験したので報告する.UCの長期経過例に対するサーベイランスの普及により,早期癌が増加し予後は改善しているが,NECの症例は2例とも早期に遠隔転移を生じ,予後は極めて不良でそれぞれ術後16か月,15か月で永眠となった.症例1のように早期発見は困難な症例も存在するが,dysplasiaが検出された症例は手術を強く勧めるべきだと考える.

  • 野垣 航二, 村上 雅彦, 渡辺 誠, 山崎 公靖, 山下 剛史, 古泉 友丈, 榎並 延太, 青木 武士, 大池 信之
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 50 巻 10 号 p. 849-855
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/18
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     症例は56歳の男性で,大腸内視鏡にて上行結腸に10 mm大の隆起性病変を認め手術目的で来院した.術前の腹部CTでは特に異常所見はなかった.同部位からの術前生検では病理学的確定診断は得られなかったが,内視鏡所見では癌が疑われ,腹腔鏡下右半結腸切除術を施行した.切除標本の病理学的検査にてsynaptophysin陽性の内分泌細胞癌を含んだ大腸未分化癌と診断された.術後補助化学療法は施行せずに外来経過観察を行っていたが,術後3か月で多発肝転移再発を来した.FOLFOX+Bevによる治療を開始したが,腫瘍は増大し術後5か月で死亡した.大腸未分化癌は極めてまれであり,悪性度が高く,早期癌の報告は少ない.今回,我々は早期に根治的切除を施行したが早期に再発・死亡した症例を経験したため報告する.

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