臨床上何等異状を認めない和牛牝牡計42頭に付電氣心働圖を撮影し,又牡犢40頭に就て放牧の前後に於ける電氣心働圖を比較し次の如き結果を得た。
(1) 和牛の電氣心働圖には第I誘導に於てQの判然としRの判然としない型と逆にRの判然と表はれQの殆ど表はれない型と二型あるが大多數の和牛は第1型である。
(2) 波高に於て性に依る一定の差は認ぬられないが生後6~10ヶ月の犢は他に比し波高稍著大に表はれる如くである。
(3) 波高に於て第II誘導=第I誘導+第III誘導なるアイントーベンの定則は和牛に於ても成立する。
(4) 波間時間に於ても性に依る一定の差は認められないが,成牛と生後6~10ヶ月の犢牛との間には幾分差がある樣である。
(5) PQとP-Pとの關係に於ける高階の公式は大體牛にも當てはまる如く,之を應用する時には成牛に於て約+0.01秒,生後6~10ヶ月の犢牛に於て約-0.01秒のPQ差を生ずる。
(6) QTとP-Pとの關係に於けるHEGGLIN & HOLZMANN式も大體牛に當てはまるらしく之を應用する時は牡犢を除き一般に實測値と計算値はよく合致するかの感がある。
(7) 放牧は電氣心働圖に於てP. Q. Rの波高を増し,PQ, QTを延長せしめる傾向がある。而して特に心室收縮時間を正常と思はれるものに近接せしめる如く,總じて循環器に好影響を及ぼすものと推察せられる。
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