日本畜産学会報
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39 巻, 12 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • I. 子宮小丘間領域の内膜について
    山内 昭二, 小寺 敬一, 垣下 奉史
    1968 年39 巻12 号 p. 487-504
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    家畜個体の内在性原因に由来する低受胎性(早期胚死亡を含む)および早期流産に関する問題点は遂次解明されているが,現在なお未解決の問題が少なくない.牛において,受精卵(胚)の死亡の54%~65%は妊娠の第34日までに生ずる28).HAWKら14)はさらに詳細に調査し,胚死亡の52%は妊娠の16日から34日の間に発現することを明らかにした.この他,胎児死亡率が妊娠の初期(妊娠のおよそ第1月と第2月)に高いことを示す多くの実績が示されている.
    胚が子宮に附着する時期について,個々の結果は幅広く変動し,第12日から第3月に及んでいる.子宮腔に浮遊して生存するblastocystにとって,栄養供給の良否は着床の成立およびその後の発育を支配する重大な要因である.従って,この時期は胎児の生存と発育に対するcritical periodであろうと考えられる.
    WINTERSら32)によれば,牛の受精卵は交尾後第5日に32-細胞期の段階で子宮に到着し,13日14時間で子宮壁に軽く附着する.一方,KINGMAN17)は妊娠の50日から90日の期間を着床の時期と考えた.牛において,妊娠の16日から33日の間は胎児自身にとって急速な発育と分化の時期であるだけでなく,同様にextraembryonicmembraneにとっても発育と分化の重要な時期で,ここを無事に経過しないと着床の遅滞を引き起すといわれる10).
    妊娠中の胎児に対する栄養(embryotrophe)供給の機構についてはGROSSER11)およびAMOROSO1)によって体系づけられている.胎盤が確立されるまでの期間の胎児にとって組織栄養(histotrophe)は唯一の供給源である.組織栄養はさらに,内膜組織から産生された物質(histopoietic material)と内膜組織の崩解に由来する物質(histolytic material)とに大別される.牛胎盤に関して多数の形態学的研究が今日までに報告されているが,ここに述べた観点からparaplacentaの形態と意義を論じたものは少ない.
    妊娠の進行とともに胎児は発育し,同時にconceptusの形は変化する.GILLESPIEら9)およびREYNOLDS25)はconceptusに対する子宮の適応機構を報告した.適応は胎児への栄養を効果的に供給することを目的とするもので,血管系の再編成をも包括する大規模な過程である.子宮の適応はすべての動物について認められると示唆されているが,その様式ならびに出現の時期は個々の動物種に固有のものであろうといわれる25).
    著者らは上述の問題点に留意しながら和牛における胎盤形成の意義を明らかにするため表記の研究を行なった.ここに,第I報として妊娠中の子宮小丘間領域の粘膜(子宮腺については第II報に報告予定)について得られた成果を発表する.
  • 椎野 昌隆, Edward G. RENNELS
    1968 年39 巻12 号 p. 505-510
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    NIH-FSH (NIH-FSH-S4)を用いて作成した抗体血清はその抗原との間にオータロニーの二重拡散法によると少なくとも4本の沈降線が明らかである.またこの抗体血清はLH (NIH-LH-S11)を抗原とした場合でも同じく4本の沈降線を認めた.
    NIH-LH (S11)を抗原として作成した抗体血清ではその抗原との間に2本の沈降線を観察した.しかし,両抗体血清とも吸収法によりpH6.8の寒天に明瞭な一本の沈降線を認めた.
    これら吸収血清から分離したグロブリンを用い螢光抗体法によりLH含有細胞は主に,腺体の周辺部に,FSH含有細胞は主に腺体の中央部に集合するのを認めた.
  • I. 血球抗原の分類
    赤木 昭治, 渡辺 誠喜, 鈴木 正三
    1968 年39 巻12 号 p. 511-516
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    緬羊血球の型的分析を行なうために異種血球免疫および同種血球免疫による型的抗体の産生,およびこれによる新血球抗原の分類を試み,つぎの結果を得た.
    1) 緬羊正常血清中には同種血球凝集素は存在しなかった.また同種溶血素は存在するように見受けられたが,その出現頻度は極めて低く,抗体価も極めて弱かった.
    2) 家兎を免疫動物とした血球免疫により,単一な型的溶血素を産生し,これにより血球抗原sh1を分類した.抗-sh1血清の抗体価は128倍であった.
    3) 同種血球免疫により単一な型的溶血素を産生し,これにより血球抗原2を分類した.抗-2血清の抗体価は16倍であった.
    4) sh1, 2抗原の出現頻度は,わが国で飼養されているコリーデール種145頭では,それぞれ8.3%,49.6%であった.特にsh1の出現頻度は低かった.これに対して米国の緬羊50頭では,それぞれ57.5%,67.5%で比較的高かった.またこの緬羊はS抗原についてもわが国で飼養されている緬羊にくらべてその出現頻度は低かった.
    5) 新しいsh1, 2抗原とS抗原の組合せにより,緬羊の血液型は8型に分類でき,360頭の緬羊のうち各型の出現頻度はS型がもっとも高く,30.3%を示し,sh1型,S-sh1型,S-sh1-2型は極めて低くそれぞれ2.3%であった.またわが国の緬羊220頭のうちS型の出現頻度はもっとも高い(34.1%)のに対して,米国の緬羊40頭のそれはsh1-2型が高かった(32.5%).
  • IV. コラーゲン繊維による煙中のタール成分の吸収
    岡村 浩, 川村 亮
    1968 年39 巻12 号 p. 517-522
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    アルカリの影響の少ない解繊方法で回収せられたコラーゲン繊維を精製し,このコラーゲン繊維とアセテート繊維のたばこ喫煙中におけるタール成分の吸収能力を比較した結果,コラーゲン繊維のタール成分吸収能が著しく優れていることを認め既に予報4)として報告した.本報では,コラーゲン繊維,ビニロン,テトロン,絹,木綿,羊毛,アセテート,レーヨンなどのタール吸収能を比較した.また,コラーゲン繊維の性状,すなわち,石灰漬処理および鞣剤による改修処理などがタール成分の吸収におよぼす影響を検討した.
  • I. 東アジアにおける牛の血液型ならびに蛋白質の多型現象について
    阿部 恒夫, 大石 孝雄, 鈴木 正三, 天野 卓, 近藤 恭司, 野沢 謙, 並河 鷹夫, 熊崎 一雄, 古賀 修, 林田 重幸, 大塚 ...
    1968 年39 巻12 号 p. 523-535
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    世界における畜牛を大別すると,Bos taurus domesticus L.と呼ばれるヨーロッパ系の牛と,Bos zebu indicesと呼ばれるインド系牛およびこれら両者の混血と見なされる牛群の3つに分けられる.東亜における畜牛は,インドから,ビルマ,マレー半島,ジャワ,ボルネオ,セレベス,ニューギニアにまで分布するインド系の牛が主体をなし,一方,満蒙,中国大陸北部より朝鮮半島にかけて分布するのはヨーロッパ系牛,および中国大陸南部,インドシナ半島にかけて両者の混血系が分布していると考えられている(PHILLIPS, 1961)15).
    わが国の在来和牛は,朝鮮半島から渡来したいわゆる韓牛がその基をなしていると考えられ,その後仏教の伝来(西歴552)とともにインド系牛も入ったといわれている19).今日の和牛は,明治に入ってから在来和牛を基礎に幾つかのヨーロッパ系牛が導入され改良されたものである.すなわち黒毛和種は主としてデボン種,ブラウンスイス種およびショートホーン種により,褐毛和種は韓牛およびシンメンタール種により,また日本短角種はショートホーン種により,無角和種はアバデーンアンガス種により改良されてきたものである19).このような事実は確認されてはいるが,各品種における外来牛の影響の程度は,品種によりまた地域により異なり明らかではない.
    家畜の系統史の過去における研究は,主として考古学的あるいは形態•体型の比較による方法によってなされたものである.本研究は,近年著しく進歩した免疫遺伝的手法および電気泳動の手法によって,血液型および血清蛋白質型を支配する遺伝子を指標として,先人の研究結果を再検討し,さらに今後の育種に役立つ新たな知見を得ようとするものである.
  • 浜田 龍夫, 丹治 健吉, 金 康植, 亀岡 暄一, 森本 宏
    1968 年39 巻12 号 p. 536-542
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    いろいろの年令の在来種肉用山羊を用いて,反芻家畜に対するDL-1,2-プロパンジオールの利用について検討し,つぎのような結論を得た.
    1) 子山羊のエネルギー源として,全飼料中に5~10%のプロパンジオールを混入しても何ら支障はおきず,よく利用された.
    2. この程度のプロパンジオールの混入によっては,全飼料の乾物消化率はほとんど変らなかった.
    3) 反芻胃内におけるプロパンジオールのプロピオン酸への経時的転換率は,反芻胃内微生物をプロパンジオールに2週間適応させることによって増加した.
    4) プロパンジオールに対して適応した山羊と適応しない山羊との間で,反芻胃内に投与したプロパンジオールの消失速度,プロパンジオールの血中への出現速度,および血糖値の増加量において,著しい差異を見出せなかった.
  • I. 大麦およびマイロの煮沸処理が,給与飼料の消化率に及ぼす影響
    小島 洋一, 中井 貞夫, 川島 良治, 上坂 章次
    1968 年39 巻12 号 p. 543-548
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    めん羊を用いて,大麦とマイロとを煮沸した場合,その各種栄養素の消化率への影響を検討した.
    大麦の場合は,めん羊2頭を用い,おのおのについて煮沸区と無処理区とを設けて消化試験を行なった.飼料はひき割り大麦2,ふすま1,野乾草4の割合に混じて与えた.その量は,1日量が体重の2.5~3.0%であった.その結果,大麦を煮沸すると粗蛋白質の消化率が明らかに低下した.すなわち,無処理区71.0%,煮沸区62.6%であった.粗脂肪と粗繊維の消化率は,煮沸によりいくぶんよくなる傾向がみられた.その他の成分の消化率には,煮沸の影響は認められなかった.
    マイロの場合は,めん羊4頭を用いて,2頭ずつ2区に分け,1区を煮沸区,他の区を無処理区として消化試験を行なった,飼料は,めん羊1日1頭当り粉砕マイロ400g,ふすま200g,野乾草400gを与えた.その結果,マイロ煮沸区は,無処理区より粗蛋白質,粗脂肪,粗繊維の消化率がいくぶん低下する傾向がみられたが,その他の成分の消化率には,とくに差はなかった.
    以上の結果から,大麦やマイロを煮沸しても,その飼料全体のTDNを高めることは期待できず,粗蛋白質の消化率はむしろ低下する恐れがあると考えられた.
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