日本畜産学会報
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83 巻, 4 号
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一般論文(原著)
  • 西村 慶子, 中原 高士, 大久津 昌治, 川本 康博, 中西 良孝
    2012 年 83 巻 4 号 p. 335-343
    発行日: 2012/11/25
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    自給粗飼料(トウモロコシサイレージ,イタリアンライグラスサイレージ,イネホールクロップサイレージおよび稲わら)に対し,乾物ベースで0, 10および20%をカンショ焼酎粕ケーキ(SDC)で置き換えた3種類の混合サイレージを調製し,発酵品質を調べた.また,混合サイレージを原料としたTMRについて,乾乳牛4頭を用いた消化試験および窒素出納試験を実施するとともに(試験1),搾乳牛6頭を用いた泌乳試験を実施した(試験2).SDC混合サイレージの発酵品質はV-SCOREで70点以上であった.SDCを0, 10あるいは20%混合したサイレージを含むTMR(それぞれ,0%混合区,10%混合区および20%混合区)を乾乳牛に給与した結果,消化率,TDN摂取量,第一胃内溶液性状および窒素利用性に差は認められなかった.また,搾乳牛に同様のTMRを給与したところ,乾物摂取量は0%混合区よりも10%混合区および20%混合区で有意に高かった(P < 0.05)が,乳量および乳成分に区間差は認められなかった.以上から,自給粗飼料にSDCを混合したサイレージの発酵品質は良好であり,これを含むTMRは乳用牛の飼料として利用可能なことが示された.
  • 野中 最子, 栗原 優佳子, 樋口 浩二, 田鎖 直澄, 田島 清, 鎌田 八郎, 大下 友子, 栗原 光規
    2012 年 83 巻 4 号 p. 345-356
    発行日: 2012/11/25
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種育成後期雌牛4頭を用い,環境温度20, 28および33°Cを各2週間ずつ順次負荷し,高温が育成後期雌牛の生理状態,窒素およびエネルギー出納に及ぼす影響を調べた.その結果,1)環境温度の上昇に伴い,呼吸数および体温は増加し,粗飼料の摂取量は減少した.2)乾物および粗タンパク質の消化率は,20°Cと比較して33°Cで高かった.3)消化管における固相の滞留時間は,20°Cおよび28°Cと比較して33°Cで増加した.4)トリヨードサイロニン濃度およびアルカリフォスファターゼ活性は,20°Cと比較して33°Cで低かった.5)窒素出納は28°Cから影響を受け,窒素摂取量あたりの糞への窒素排泄割合は33°Cで低下したが,尿への窒素排泄割合は高かった.6)エネルギー出納は28°Cから影響を受け,蓄積エネルギー量は33°Cで低下したが,脂肪およびタンパク質への体蓄積割合は変化しなかった.以上の結果から,育成後期雌牛では28°Cから高温の影響を受けると考えられた.
技術論文
  • 黒瀬 陽平, 鈴木 喜博, 高橋 秀之, 児島 将康, 寒川 賢治, 長谷川 喜久, 東 善行, 小林 茂樹
    2012 年 83 巻 4 号 p. 357-362
    発行日: 2012/11/25
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    栄養状態の指標としての血液成分濃度の有用性を検討するため,放牧1シーズン目(育成期)と2シーズン目(肥育期)の日本短角種を対象に,放牧開始から終了まで2週間間隔で体重と血漿成分濃度を測定した.遊離脂肪酸(NEFA)およびグレリンの血漿濃度については,両シーズン間でほとんど差はなかった.放牧終盤に両シーズン共に増体量がマイナスとなり,遊離脂肪酸の血漿濃度は増加傾向にあった.血漿グルコース濃度については,放牧後半に2シーズン目が有意に低くなり,増体量も低値を示した.血漿インスリン濃度については,放牧期間を通して2シーズン目が有意に高くなった.インスリン様成長因子1 (IGF-1)濃度については,放牧前半に2シーズン目が有意に高くなった.1シーズン目では血漿IGF-1濃度と体重との間に正の相関が認められた.栄養状態の指標としての血漿成分濃度の有用性が示唆されたが,血漿成分の変動は発育ステージに依存することが判明した.
  • 山科 一樹, 吉村 義久, 生田 健太郎, 丸山 朝子, 村中 洋美, 時田 康広, 加藤 和雄, 田鎖 直澄, 寺田 文典
    2012 年 83 巻 4 号 p. 363-372
    発行日: 2012/11/25
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種乳用牛において乾乳期間の短縮が,乳牛の泌乳成績,繁殖成績および健康状態に及ぼす影響を,乾乳期間を40日に短縮した乳牛群(短縮区)と乾乳期間60日の牛群(慣行区)を設定し,比較検討した.2産以上かつ分娩予定60日前に約20kg/日以上泌乳しているウシを短縮区21頭,慣行区20頭供試した.実乾乳期間は,短縮区40.7日,慣行区61.4日となった.短縮区における搾乳期間延長(3週間)に伴う乳生産量は325kg/頭であった.分娩後43週までの泌乳成績は,乳量,乳成分ともに区間に差はなく,泌乳曲線にもほとんど差はなかった.分娩後10週までの飼料摂取状況,体重およびボディコンデションスコア(BCS)の推移に区間の差はなかった.分娩難易度,出生子牛の体重,初乳の比重・IgG濃度,分娩後の繁殖成績,および疾病発生状況について区間に差はなかった.以上のことから,乾乳期間を60日から40日に短縮しても,乳牛の泌乳成績,繁殖成績および健康状態の低下を招くことなく,搾乳期間延長分の乳生産量が増加することが示された.
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