産卵鶏に油脂(牛脂,ラード,大豆油あるいはココヤシ油)をそれぞれ10%配合した飼料を50日間給与し,飼料中の油脂による卵黄脂質の脂肪酸組成ならびに卵黄トリグリセリド内の脂肪酸分布の変動を調べた.牛脂あるいはラードを配合した飼料の給与で,卵黄全脂質のC
18:1が増加し,G
16:0とC
18:2は減少を示し,リン脂質分画ではC
20:4やC
22:5の減少をきたした.大豆油給与で中性脂質ではC
16:0,C
18:1は減少し,C
18:2は顕著に増加し,リン脂質ではC
22:5が減少し,C
18:0の増加をみた.ココヤシ油の給与で,卵黄の全脂質と中性脂質ではC
14:0,C
16:1が増加し,C
18:1およびC
18:2は減少し,他方リン脂質ではC
20:4のC
22:5減少とC
18:1の増加をきたした.トリグリセリド内の脂肪酸分布は膵臓リパーゼ分解法で調べた.牛脂とラードとでは,トリグリセリド内の脂肪酸分布が著しく異なっているが,牛脂を給与した鶏の卵黄脂質は,トリグリセリド内脂肪酸分布では,ラード給与のものと大きな差異が見られなかった.大豆油給与とココヤシ油給与とでは,卵黄トリグリセリドの脂肪酸組成に,かなりのちがいがあったが,そのいずれにおいてもC
16:0やC
18:0は,トリグリセリドの1,3-位置に多く結合していた.また,C
18:2は2-位置に多く結合していた.市販配合飼料給与の時のに比べ,牛脂の給与で卵黄脂質中SUUやSUSなどの型のトリグリセリドは減少して,SSS,SSUおよびUUUの型のは増加する傾向があり,ラード給与でSUSは減少し,UUUは増加を示した.大豆油給与では卵黄脂質中SUSの減少が著しく,UUUの増加が顕著であったが,これに対してココヤシ油の給与では,SSS, SSU, SUSおよびUSUが明らかに増加し,SUUとUUUは減少をきたした.おもな成分トリグリセリドにあっては,牛脂給与でPLP, PLO, OLOなどが減少し,POO, OOOなどが増加をきたし,ラード給与でもPLP, POPtなどの減少,OOOの増加が認められた.さらに,大豆油給与ではPOP, POSt, POO, OOOが減じ,PLP, POPt, StLO, PLL, OLOおよびOLLは明らかに増加を示した.他方,ココヤシ油給与ではPLP, POO, PLO, OOOおよびOLOは減少し,MyOP, MyOOの増加が見られた.
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