黒毛和種去勢牛33頭を用いて,種雄牛(初代14,雲河19)×肥育前期粗飼料給与レベル(17ヵ月齢までの肥育前期にTDN要求量の55%を粗飼料から給与:R区(粗飼料多給区),粗飼料•濃厚飼料とも自由摂取:C区(濃厚飼料多給区))×仕上げ体重(550kg,600kg,650kg)×17ヵ月齢以降の肥育後期濃厚飼料の構成内容(大麦主体,トウモロコシ主体)の要因を組み合わせた肥育試験を行い,肥育牛のTDN摂取量,増体,枝肉構成および胸最長筋脂肪量に対するこれらの処理の影響を比較検討した.初代14群の筋肉量は雲河19群より少なかったが胸最長筋脂肪量は高かった.さらに,初代14群における枝肉中分離脂肪の増加に対する胸最長筋脂肪量の増加割合も雲河19群におけるより高い傾向にあり,枝肉中分離脂肪と筋肉中脂肪蓄積のバランスも系統間で異なると思われた.肥育前期におけるR区の総TDN摂取量はC区におけるよりも小さく,両区とも自由摂取となる肥育後期開始時期の17ヵ月齢体重もR区が小さかった.また,R区の枝肉重量,赤肉量,骨量はC区に比べ肥育終了時体重は同じであるにも関わらず有意に小さく,肥育前期の極端な粗飼料給与多給の否定的な影響が認められた.しかし,枝肉中分離脂肪量と胸最長筋脂肪量について有意の差はなく,脂肪蓄積に対する影響は認められなかった.大麦主体区とトウモロコシ主体区で枝肉中分離脂肪量と胸最長筋脂肪量は変わらなかったが,赤肉量および骨量は大麦主体区の方が大きい傾向にあり,飼料の種類により赤肉生産量が異なることが考えられた.胸最長筋脂肪量については飼料に関する処理の影響は認められなかったが,仕上げ体重間および種雄牛間で有意に異なっていた.また,月齢を一定とした場合,胸最長筋脂肪量と体重との間に有意な相関は認められなかったが,体重を一定とした場合,胸最長筋脂肪量と月齢との間には有意な正の相関が認められた.
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