複数の気象観測所における気温データから豚舎外気温を推定するための適切な方法を考案することを目的とした.選定した9地点の気象庁気象観測所における気温データ(日平均気温,日最高気温,日最低気温)をマスクし,その周辺の近隣1~8観測所における気温データを用いて,逆距離加重法によってマスクした気温データを推定した.また,日最高気温と日最低気温から日較差を推定した.その結果,日平均気温および日最高気温は,近隣の3つの観測所から推定することで精度の高い推定値を得られることが明らかとなった.1年を通した推定値の経時的変化では,平均誤差の絶対値および二乗平均平方根誤差はいずれの気温も6月から10月にかけて小さく,相関係数は9月を中心に高くなる傾向にあった.以上の結果から,本研究に用いた気温における推定精度は日平均気温または日最高気温が高く,特に暑熱の影響を考慮する場合には有効であると考えられた.
現場後代検定における飼料利用性の検定方法の確立に資するため,肥育牛の飼料摂取量測定方法の効率化を検討し,余剰飼料摂取量(RFI)と経済形質の関連性を調査した.黒毛和種去勢および未経産牛各240頭の飼料摂取量から求めたRFIにより飼料利用性を評価した.RFIを算出する飼料や期間を調査した結果,肥育後期の濃厚飼料摂取量を基に肥育期全体のRFIが推定できた.また,RFIを4クラスに分類し,生産性との関連性を調査した結果,肥育期全体のTDN摂取日量はクラス1が4より12%少なかった.去勢牛におけるクラス1の平均RFIはTDNとして−0.921 kg/日を示し,クラス4より1.8 kg/日少なかった.発育や枝肉形質は,クラス1と4において同等であり,経済性は向上した.以上から,現場後代検定における飼料摂取量測定は省力化でき,経済形質に影響なく飼料摂取量を低減し,生産性向上に活用できることが示唆された.
牛枝肉のBeef Marbling Standard(BMS)を枝肉横断面画像からの情報をもとにランダムフォレストを用いて推定した.説明変数として枝肉横断面のロース芯に着目した画像解析値23形質を使用した.推定値と格付員によって判定された値との差をもとにした推定精度は,±0以内割合で51.8%および±0~1以内割合で94.1%であった.重要度は高い順から脂肪面積割合(0.8634),新細かさ指数(0.0297)およびあらさ指数1-10(0.0121)となり,BMS推定には脂肪交雑の量,細かさおよびあらさが重要な形質であることが明らかとなった.脂肪交雑の量および細かさは推定値にプラスの影響性を持っていた.脂肪交雑のあらさは推定にマイナスに作用し,BMS7から10においてより強く働いていた.ランダムフォレストを用いることで高精度かつ予測値に説明性を持たせたBMS推定の実施可能性が示唆された.
日本畜産学会若手企画委員会では,研究者間のネットワークの強化や若手のキャリアパスの構築に資する様々な企画を実施している.若手企画委員会ではafterコロナに向けた第一歩として,2023年2月に茨城大学農学部にて「第4回 日本畜産学会若手企画サイエンスキャンプ~若手が切り拓くアニマルサイエンスの最前線~」を開催した.本稿では,コロナ禍以降4年半ぶりに対面開催となった本サイエンスキャンプの様子について簡単に紹介したい.
標記の国際会議(通称ICoMST:International Congress of Meat Science and Technology)を2022年8月22から25日の4日間,神戸国際会議場で開催した.1999年に横浜にてアジアで最初の会議を行って以来,2度目の日本開催で,会議の概要を以下報告する.なお,本会議の主催団体は日本食肉科学会である.