平均生後日数163日,平均体重31.7kgの若令雄めん羊を25頭用い,8月1日より11月13日までの104日間,濃厚飼料,乾草および生草の一定量にプロピレン•グリコール(PG)を添加給与し,PGの動物の発育と第一胃内VFA発酵に及ぼす効果を検討した.(1) 基礎飼料にPGを1日おきに0.5g/kg B. W.添加したP-A群および1.0g/kg B. W.添加したP-B群は,基礎飼料のみを給与した対照群に対していずれも有意の増体効果を示し(P〈0.05),1日当たりの平均増体量は,対照群の78.7gに対し,P-A群104.2g, P-B群104.9gとそれぞれ32.5%と33.4%の増体率であった.(2) 実験期間中の飼料要求率は,対照群の表11.3に対して,P-A群8.6, P-B群8.5といずれも著しく飼料効果がよいことを示した(P〈0.05).これらの増体率と飼料要求率における著しい効果は,主として実験開始後最初の31日間(第1期)にもたらされた.(3) 第1期における採食後約5時間目の第一胃内プロピオン酸濃度は,対照群の22.4mEqに対し,P-A群30.9mEq, P-B群37.3mEqとPG投与群はいずれも有意の増加を示し(P〈0.01),酢酸に対するプロピオン酸の濃度比(以下C
2/C
3比と省略)も対照群の3.8に対し,P-A群2.4,P-B群23といずれも著しく低下した(P〈0.01).総揮発性脂肪酸(以下総VFAと省略),酢酸,プロピオン酸および酪酸濃度は,実験期間を通じて,PG投与群,とくにP-B群が高い値を示した.(4) 屠体の解体成績では,PG投与群は,対照群にくらべ,産毛量,枝肉量および赤肉量が多い傾向を示した.(5) 以上の結果より,PGの少量の飼料添加は,動物の採食量に影響を与えず,発育を促進し,屠体の解体成績においても良好な結果をもたらすことが示された.また,PG投与量の多少により増体量に差がなかったことから,PGの増体効果は,PGのもつエネルギー源としての作用によるよりは,PGによる第一胃内発酵の変化によることが示唆された.
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