フェノール性化合物含量の少ないイタリアンライグラスと多いレッドクローバから緑葉蛋白質(LP)を調製し,65°C,10時間の熱風乾燥によるLPの劣化について実験を行なった.
1) 緑葉搾汁液からLP-凝固物を分離したあとの残液deproteinized juice (DPJ)の組成は,粗蛋白質が少なく,糖質,灰分が多く,ミネラルの中ではカリウムがいちじるしく多いのが特微であった.また,粗蛋白質,糖質,灰分以外の成分にはフェノール性化合物が含まれると考えられるが,この成分の割合はレッドクローバDPJが多かった.2) 両牧草について,それぞれ,DPJ含量の異なる二種類の湿潤LPカードを調製し,熱風乾燥してLPに対するDPJの影響を調べたが,DPJ含量の多い湿潤カードを乾燥して得たLPの方が粗蛋白質含量が低く,粗灰分が高く,また,ラットに対する栄養価が低いことが確かめられた.3) 湿潤カードを熱風乾燥して調製したLPに対するリジンの補足試験の結果,イタリアンライグラスLPの場合は栄養価の改善が見られたが,レッドクローバLPの場合は改善が見られず,レッドクローバDPJによる劣化が大きいことを示した.レッドクローバLPのアミノ酸分析から,リジンのほか,ヒスチジンも損傷をうけ,試験飼料中のヒスチジンに不足を来し,そのためにリジンの補足効果が見られなかったものと推測された.4) それぞれの湿潤LPカードのDPJ含量に合わせて,DPJ-カゼイン混合物を調製し,熱風乾燥して栄養価を測定したところ,イタリアンライグラスDPJの影響はほとんど認められなかったが,レッドクローバDPJの影響が少ないながらも認められた.しかし,単にDPJとカゼインを混合したモデル系では,LP-DPJの反応を十分,表わせないものと考えられた.
以上の結果から,加熱乾燥によるLPの劣化は,DPJ成分と蛋白質との反応に基づくものであり,加熱乾燥によるLPの劣化を防止し,蛋白質含量が高く,高品質のLPを製造するには,乾燥前のLP凝固物から,できるだけDPJを分離することが必要であることが確かめられた.
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