日本畜産学会報
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57 巻, 8 号
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  • 斎藤 守
    1986 年 57 巻 8 号 p. 631-641
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    総数で212匹のウィスター系の未経産雌ラット(約10週齢,体重約200g)を用いて,妊娠時の維持に要する蛋白質量が,供試飼料中の蛋白質源によってどのように変化するか,また妊娠時の維持に要する蛋白質量と非妊娠時のそれとの間にどのような関係があるか,さらに維持に対する蛋白質の利用率が妊娠と非妊娠とでどのように異なるかについて検討した.供試蛋白質源として,カゼイン,大豆粕,魚粉と,これらを等量混合したもの,およびカゼインにメチオニンを添加したものの5種類を用いた.これらの蛋白質源を3~20%の間で,4~5水準で配合した22種類の飼料を用いた.なお,供試飼料中のエネルギー,ミネラルおよびビタミンは,充分量含まれるようにした.これらの飼料を妊娠時には,体重が約200gに達した時点で交配し,スメア中に精子を検出した日(妊娠0日)から給与し,妊娠8~15日(妊娠中期)および妊娠15~20日(同,後期)において窒素(N)出納試験を実施した.非妊娠ラットについても試験開始後,妊娠時と同一期間経過後にN出納試験を行なった.これらのN出納試験のデータを用いて,蛋白質の出納量をゼロとする時の蛋白質の摂取量を算出し,維持に要する蛋白質量とした.
    維持に要する蛋白質量は,供試蛋白質源によって異なっていた.また,維持に要する蛋白質量は,メタボリックボデイサイズ(Wkg0.75)当りで,妊娠中期と後期では,ほぼ同じであった.さらに,妊娠時の維持に要する蛋白質量は,非妊娠時に比べて約20~30%低く,非妊娠時の値から推定できることが明らかになった.維持に対する蛋白質の効率は,妊娠時が非妊娠時に比べて約15~30%高かった.
  • 入江 正和, 西村 和彦
    1986 年 57 巻 8 号 p. 642-648
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    豚において残飯給与,屠殺月齢および蓄積部位によって脂肪の性状がどのように変化するかを調査した.残飯給与あるいは穀類給与した豚計18頭を6,7,8ヵ月齢に屠殺し,背脂肪(内層,外層)と腎臓周囲脂肪を採取し,脂肪酸組成,ヨウ素価,屈折率,テクスチュロメーターによる硬度を測定した.残飯を給与した豚の脂肪は,穀類を給与した豚の脂肪よりも不飽和脂肪酸レベル,ヨウ素価および屈折率が高く,融点と硬度が低かった.脂肪に対する屠殺月齢の影響は,飼料による影響に比べてわずかであり,6ヵ月齢より7,8ヵ月齢でパルミトレイン酸とオレイン酸レベルがやや増加し,一方,ステアリン酸レベルが低下する傾向にあり,融点が低下したが,ヨウ素価と屈折率には有意な変化はみられなかった.ミリスチン酸,ステアリン酸,オレイン酸,リノール酸,融点,屈折率およびヨウ素価で脂肪の蓄積部位による差がみられた.本実験では,腎臓周囲脂肪は背脂肪に比べて,飽和脂肪酸レベルが高く,融点が高く,ヨウ素価と屈折率が低かった.また,飼料,屠殺月齢および脂肪蓄積部位のうの2つの主効果間における脂肪の性状に対する顕著な交互作用は認められず,リノール酸レベルは各脂肪蓄積部位で飼料に関連したあるレベル以上に増加しなかった.以上から,残飯給与は脂肪を軟化させ,屠殺月齢を延ばすことは脂肪を軟化させる傾向にあった.また,飼料の蓄積脂肪の性状への影響は蓄積部位や屠殺月齢によってほとんど左右されなかった.
  • 柿市 徳英, 鎌田 信一, 小林 茂, 内田 和夫
    1986 年 57 巻 8 号 p. 649-653
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    豚舎汚水処理におけるばっ気式ラグーン法の窒素除去率の向上を目的に実験を行なった.実験は,22時間エアレーションの回分式と半回分式の両ばっ気式ラグーン法,4時間嫌気撹拌の後に18時間エアレーションを行なう回分式のばっ気式ラグーン脱窒変法,および汚水流入2~4時間で4~6時間の嫌気撹拌の後に16~18時間のエアレーションを行なう半回分式のばっ気式ラグーン脱窒変法の4種の方式で比較した.また,いずれの方式とも滞留時間を5日,沈殿時間を2時間とした.その結果,次の知見を得た.
    1. 各方式の比較,すなわち回分式あるいは半回分式のばっ気式ラグーン法,回分式の脱窒変法および半回分式の脱窒変法のそれぞれの窒素除去率は81~83,87.5および93%を示した.
    2. 半回分式のばっ気式ラグーン脱窒変法により3日間の運続運転を5回くり返し行なっだところ,窒素除去率は初めの2日間に比べ最後の3日目が高率で安定した値を示した.
    以上により,半回分式のばっ気式ラグーン脱窒変法は一定の馴養期間をもてば十分応用可能な窒素除去法と思われた
  • 堀米 隆男, 〓 永守, 内田 仙二
    1986 年 57 巻 8 号 p. 654-662
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    フェノール性化合物含量の少ないイタリアンライグラスと多いレッドクローバから緑葉蛋白質(LP)を調製し,65°C,10時間の熱風乾燥によるLPの劣化について実験を行なった.
    1) 緑葉搾汁液からLP-凝固物を分離したあとの残液deproteinized juice (DPJ)の組成は,粗蛋白質が少なく,糖質,灰分が多く,ミネラルの中ではカリウムがいちじるしく多いのが特微であった.また,粗蛋白質,糖質,灰分以外の成分にはフェノール性化合物が含まれると考えられるが,この成分の割合はレッドクローバDPJが多かった.2) 両牧草について,それぞれ,DPJ含量の異なる二種類の湿潤LPカードを調製し,熱風乾燥してLPに対するDPJの影響を調べたが,DPJ含量の多い湿潤カードを乾燥して得たLPの方が粗蛋白質含量が低く,粗灰分が高く,また,ラットに対する栄養価が低いことが確かめられた.3) 湿潤カードを熱風乾燥して調製したLPに対するリジンの補足試験の結果,イタリアンライグラスLPの場合は栄養価の改善が見られたが,レッドクローバLPの場合は改善が見られず,レッドクローバDPJによる劣化が大きいことを示した.レッドクローバLPのアミノ酸分析から,リジンのほか,ヒスチジンも損傷をうけ,試験飼料中のヒスチジンに不足を来し,そのためにリジンの補足効果が見られなかったものと推測された.4) それぞれの湿潤LPカードのDPJ含量に合わせて,DPJ-カゼイン混合物を調製し,熱風乾燥して栄養価を測定したところ,イタリアンライグラスDPJの影響はほとんど認められなかったが,レッドクローバDPJの影響が少ないながらも認められた.しかし,単にDPJとカゼインを混合したモデル系では,LP-DPJの反応を十分,表わせないものと考えられた.
    以上の結果から,加熱乾燥によるLPの劣化は,DPJ成分と蛋白質との反応に基づくものであり,加熱乾燥によるLPの劣化を防止し,蛋白質含量が高く,高品質のLPを製造するには,乾燥前のLP凝固物から,できるだけDPJを分離することが必要であることが確かめられた.
  • 辻 荘一, 広瀬 傑, 向井 文雄, 福島 豊一
    1986 年 57 巻 8 号 p. 663-670
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    White Leghorn種B系統(WL-B)の腎臓Orni-thine transcarbamylase (OTC)活性は,卵黄粉の給与によって誘導される.われわれはこのOTCの誘導機構を解明するため,卵黄粉に含まれるOTCの誘導物質を検索している.本実験では,卵黄粉の約60%を占める脂肪がOTCの誘導にかかわっているか否かについて検討した.脂肪源を異にする試験区を3区設けた.卵黄より抽出した卵黄脂肪区,ニワトリ体脂肪区,コーンオイル区である.蛋白質源としては脱脂卵黄粉を用いた.その含有量は25%である.これらの飼料を2週齢のWL-Bのひなに10日間給与し,OTC活性を測定したの卵黄脂肪飼料とコーンオイル飼料の給与で,OTC活性の明らかな増加が認められた.ニワトリ体脂肪飼料給与でもOTC活性は上昇したが,前の2区には劣った.コーンオイルを脂肪源として飼料中の脂肪含有量を増加させ,OTC活性への影響を見たところ,脂肪含有量の高い区ほどOTC活性が高い傾向が認められた.これらのことから,卵黄に見られるような高脂肪の吸収によってOTCの誘導が引起されることが明らかとなった.また,卵黄脂肪中には特異なOTC誘導物質は含まれないと推定された.
  • 辻 荘一, 広瀬 傑, 向井 文雄, 福島 豊一
    1986 年 57 巻 8 号 p. 671-678
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    White Leghorn種B系統(WL-B)の腎臓Ornithine transcarbamylase(OTC)活性は,卵黄粉の給与によって誘導される.前報では卵黄の主成分である脂肪がOTC活性の誘導にかかわっていることを明らかにした.ここでは,もう一方の主成分である粗蛋白質分画がOTC活性に及ぼす影響について検討した.蛋白質源を異にする試験区を2試験で合計5区設けた.グルテン,ゼラチンを蛋白質源とする試験区,脱脂卵黄粉区,この脱脂卵黄にアミノ酸組成を合わせたアミノ酸飼料区(AA1), NRC飼養標準にアミノ酸組成を合わせたアミノ酸飼料区(AA2)である.脂肪源としてはコーンオイルを用い,その含有量は卵黄の脂肪含有量に近い高含有量とした.対照区は市販飼料給与区である.これらの飼料をWL-B系の2週齢のひなに10日間給与し,OTC活性を測定した.その結果,脱脂卵黄粉,AA1,AA2の3試験区でOTC活性の顕著な上昇が見られた.アミノ酸を混合した半精製飼料の給与区と脱脂卵黄粉給与区との間でOTC活性に差のなかったことから,卵黄粗蛋白質分画中にOTC活性を誘導する特異な物質は存在しないと考えられた.また,飼料中の脱脂卵黄粉含有量を増加させてもOTC活性の上昇は見られず,このことも上記の結論を支持するものであった.脱脂卵黄粉の多給は腎臓重量の増加をもたらし,ひな1羽あたりのOTC活性の増加につながった.
  • 久米 新一, 柴田 正貴, 栗原 光規, 相井 孝允
    1986 年 57 巻 8 号 p. 679-686
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    牛の採食時および絶食時の主要ミネラル代謝に及ぼす環境温度の影響について調べた.環境条件は相対湿度を60%に保ち,環境温度を18,27,36°Cの順に2頭の牛を暴露させ,また他の2頭の牛はその逆の順で暴露させた.絶食時の主要ミネラル代謝の測定は,飼料給与中止後68~116時間の間で行なった.採食時および絶食時の体重は,処理間で有意差は認められなかった.採食時の乾草摂取量は高温で減少したが,飲水量は採食時および絶食時とも温度上昇とともに増加した.主要ミネラルの摂取量は,Kを除くとやや不足していた.採食時のCa,PおよびMg排泄量は温度上昇とともに減少したが,絶食時のそれらは暑熱ストレスによって影響され,27°Cで急激に増加した.絶食時のCaおよびMgの尿中排泄量は採食時のそれよりも少なかったが,絶食時の尿中P排泄量は採食時のそれよりも非常に多かった.絶食時のNa排泄量は暑熱ストレスによって影響されたが,K排泄量は影響されなかった.以上の結果から,維持に要する主要ミネラル要求量は暑熱ストレスによって影響され,27°Cを超えると温度上昇とともに増加することが示唆される.
  • 久米 新一, 柴田 正貴, 栗原 光規, 相井 孝允
    1986 年 57 巻 8 号 p. 687-693
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種乾乳牛4頭を環境制御室に収容し,乳牛の採食時および絶食時の微量元素代謝に及ぼす環境温度の影響について調べた.環境条件は相対湿度を60%に保ち,環境温度を18,27,36°Cの順に2頭の牛を暴露させ,また他の2頭の牛はその逆の順で暴露させた.絶食時の微量元素代謝の測定は,飼料給与中止後68~116時間の間で行なった.微量元素の摂取量は,Zn,Cu,SeおよびCoはやや不足していたが,Fe,MnおよびMoはほぼ充足していた.採食時の微量元素排泄量は36°Cで減少したが,絶食時のそれらは暑熱ストレスによって影響され,温度上昇とともに増加する傾向があった.採食時および絶食時のふん中への微量元素排泄量が尿中への排泄量よりも多かったので,採食時および絶食時においてはふん中への排泄が微量元素の主要な排泄経路と思われる.以上の結果から,乳牛の維持に要する微量元素要求量は暑熱ストレスによって影響され,27°Cを超えると温度上昇とともに増加することが示唆される.
  • 佐藤 勝紀, 山本 敏幸, 伊東 伸一, 小林 英文, 猪 貴義
    1986 年 57 巻 8 号 p. 694-702
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究は近交の継続に伴う孵化率低下の要因となる胚死亡について,その出現頻度と発現時期を明らかにする目的で行なった.材料には当教室で維持した日本ウズラの閉鎖集団を起源とする近交群と無作為交配群を用い,両群での胚死亡率および孵卵開始より孵化時に至る全期間を通じての胚死亡率について比較検討した.また,胚死亡に関連する位置異常(逆位)と奇形の出現頻度についても検討した.胚死亡の発現時期を明らかにするために,胚の発生期間は17段階に分けた.1. 近交群の胚死亡率は無作為交配群のものに比べて高く,また近交世代に伴い増加した.さらに,4世代まで継続した近交系の胚死亡率は他の近交系に比べて低かった.2. 近交群の胚死亡率は無作為交配群に比較していずれの発生期間を通じても高い値を示した.両群間の胚死亡率の差異は特に1日から4日目までの発生日齢で顕著であった.近交群と無作為交配群ではいずれも2時期すなわち1日目と17日目の胚発生日齢において胚死亡率のピークが認められた.4世代まで継続しなかった近交系では4世代まで継続した近交系に比べて,1日目と17日目の2時期での胚死亡率は高くなる傾向がみられた.3. 胚の位置異常(逆位)の出現頻度は近交に伴う変化がみられず,近交群と無作為交配群の間に有意な差が認められなかった.また,奇形の出現頻度は近交の継続に伴い2世代目まで増加する傾向が認められた.
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