日本畜産学会報
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総説
  • 梅原 崇, 島田 昌之
    2024 年 95 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2024/02/25
    公開日: 2024/03/14
    ジャーナル 認証あり

    ブタの人工授精は,効率的なブタ生産を支える重要な技術であり,その実施率は世界各国で80%を超えている.人工授精において,精液は希釈液で希釈・保存された後,母豚へと注入されることから,希釈液には精子機能の保護と,受精の場である卵管への精子の上行の補助という役割があると考えられる.希釈液には,栄養基質であるグルコースが高濃度含まれていることから,筆者らは希釈液に含まれるグルコースに着眼し,その役割の解明を試みた.その結果,希釈液中の高濃度のグルコースは,精子において解糖系を介したエネルギー産生に用いられるだけでなく,ペントースリン酸回路を介して活性酸素類の産生を抑制し,ミトコンドリアの機能をサポートする役割も担うことが見出された.本稿では,ブタ人工授精用の希釈液成分のグルコースに焦点を当て,従来の知見をまとめると共に,新しい役割について紹介する.

一般論文(原著)
  • 野村 凪沙, 口田 圭吾
    2024 年 95 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2024/02/25
    公開日: 2024/03/14
    ジャーナル 認証あり

    画像解析技術を用いて黒毛和種経産肥育牛における産次数および再肥育期間が脂肪色に及ぼす影響を調査した.供試牛は2016年9月から2022年7月に北海道内に出荷された黒毛和種経産牛で最終飼養者の飼養期間が365日以内の個体を抽出した(n=504).画像解析によって皮下脂肪ならびに3箇所の筋間脂肪におけるL*a*b*値を求めた.BFS No.と各脂肪のL*a*b*値との相関係数は皮下脂肪のb*値が0.76と最も高い値を示した(P<0.01).産次数および再肥育期間はBFS No.ならびに皮下脂肪のb*値に有意に影響を及ぼした(P<0.05).BFS No.の最小二乗平均値は再肥育期間4ヵ月で5.4,5ヵ月で4.2と低下し(P<0.01),皮下脂肪のb*値は再肥育期間4ヵ月で21.2,5ヵ月で14.2と低下した(P<0.01).皮下脂肪と筋間脂肪の平均b*値差は再肥育5ヵ月目で減少した(P<0.01).

  • 呂 惠眞, 小泉 聖一, 石田 正美
    2024 年 95 巻 1 号 p. 19-29
    発行日: 2024/02/25
    公開日: 2024/03/14
    ジャーナル 認証あり

    日本のと畜場におけるブタとウシの各部位の活用・廃棄状況を知るため,一般と畜場を対象にアンケート調査を2015年12月~2016年6月と2020年11月~2021年3月に実施し,それぞれ22件,11件の有効回答を得た.調査結果を記述統計で概観し,調査年,ブタ/ウシの種別,各部位のダミー変数を用いて2項ロジットモデルで検証した.全体的に副生物の活用率は高くなく,調査年次間では,ブタとウシの血液とウシの脳と外鼻を除く部位で,2020~2021年の活用率が増加している.部位別では,2015~2016年の血液,胆嚢と胆汁,2020~2021年の胆汁の活用率でウシがブタより高く,他の部位では,ブタの活用率がウシより高い.血液,陰茎,精巣,胆嚢,胆汁の活用率はブタ,ウシともに50%未満であった.血液は,沖縄で血粉,京都で研究用と一部食用に用いられているのみであった.大都市圏のと畜場で,他地域より廃棄率が低く活用率が高くなる傾向にあった.

技術報告
  • 増田 豊
    2024 年 95 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2024/02/25
    公開日: 2024/03/14
    ジャーナル 認証あり

    ゲノミック選抜されたホルスタイン若雄牛(GYS)を牛群で利用することのリスクを評価した.種雄牛を交配して得た後代の真のNTPが,母牛のNTP推定値を下回る確率をリスクと定義した.2023年8月時点で利用可能な乳用種雄牛を,乳用牛群検定を受けた娘牛を60頭以上もつ種雄牛(BULL-OLD),1頭以上59頭以下もつ種雄牛(BULL-NEW),1頭ももたないGYS(BULL-GYS)に区分した.交配相手は,2020年に誕生した雌牛(COW-2020)および2022年生まれでゲノミック評価値をもつ若雌牛(HEI-2022)であった.各区分について,NTP公表値の平均値をもつ仮想個体を想定し,親とした.後代の真のNTPは,両親平均値を期待値とし,両親平均の予測誤差分散とメンデリアンサンプリング分散の和を分散とする正規分布をなすとした.母牛をCOW-2020(HEI-2022)とするときのリスクは,BULL-OLDで14.4%(23.2%),BULL-NEWで10.2%(17.1%),BULL-GYSで2.1%(4.1%)であった.牛群の真のNTPを改善するには,GYSの利用が効果的である.

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