熊本県,長崎県および秋田県において1993年12月までに出荷された褐毛和種の枝肉データを用いて日齢枝肉重量(枝肉重量/出荷時日齢),ロ-ス芯面積,皮下脂肪厚,歩留基準値,BMSナンバー,BCSナンバー,しまりおよびきめの8形質について,遺伝的趨勢を明らかにした.分析には,10,471頭の枝肉データを用い,個体モデルのBLUP法により種雄牛および雌牛の育種価の推定を行った.数学モデルには,要因として農協•出荷年次,出荷月,性,個体および出荷月齢の一次,二次回帰を取り上げた.この分析に必要な遺伝的パラメーターはHendersonの方法IIIにより推定した.その遺伝率推定値は,日齢枝肉重量,ロース芯面積,皮下脂肪厚,歩留基準値,BMSナンバー,BCSナンバー,しまりおよびきめでそれぞれ,0.225,0.313,0.297,0.397,0.271,0.218,0.247および0.195であった.遺伝的趨勢をみるため1975年から1989年までの生年に対する雌牛の標準化推定育種価平均値の直線回帰係数を求めたところ,日齢枝肉重量,ロース芯面積,BMSナンバー,BCSナンバー,しまりおよびきめでそれぞれ,0.665,0.051,0.030,-0.016,0.015および0.011となり,すべて1%水準で有意であった.また,種雄牛についてはどの形質についても,一定の趨勢は見られなかった.しかし,肉量および肉質に関する形質について,高い育種価推定値を示す種雄牛が,より多くの後代を持つことが明らかになった.
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