日本畜産学会報
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67 巻, 12 号
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  • 永井 卓, 堀 登, 安部 茂樹, 平山 匡男
    1996 年67 巻12 号 p. 1037-1042
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    カゼインホスホペプチド(CPPs:α-CPP及びβ-CPPの混合物)が,ウシ精子のウシ体外成熟卵子への侵入(体外受精)およびその後の胚発生に及ぼす影響について検討した.受精試験には,通常の体外受精方法では受精率が低いウシAおよびBならびに受精率が高いウシCの凍結融解精子を用い,体外成熟卵子への精子侵入率(受精率)を調べた.体外受精用培養液には,カフェイン(5mM),ヘパリン(10単位/ml)を添加し,実験区にはさらにCPPs(1mg/ml)を添加した.その結果,体外受精培養液にCPPsを添加することによって,ウシAおよびBにおいて有意に高い受精率が得られた:ウシA(添加79%,無添加38%),ウシB(添加45%,無添加13%)(P<0.01).しかし,ウシC精子はCPPsの添加,無添加にかかわらず高い受精率(94%-95%)を示した.体外受精卵を7日間体外培養したところ,ウシAおよびB精子を用いて媒精した場合に,受精培養液へのCPPs添加によって有意に高い胚盤胞期胚への発生率が得られた:ウシA(添加20%,無添加4%),ヴシB(添加6%,無添加0%)(P<0.01).以上のことから,CPPsが低い受精率を有する精子の受精率を高め,さらに,その後の受精卵の胚盤胞期胚への発生率を高めることが示された.
  • 藤田 正範, 山本 禎紀
    1996 年67 巻12 号 p. 1043-1049
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    飼育条件が家禽に及ぼすストレス程度の理解を深めるために,自由採食,80%制限給餌,60%制限給餌,緊縛負荷および暑熱暴露の条件下で産卵鶏の血漿中グルコース,FFA,エピネフリン,ノルエピネフリン濃度およびモノアミンオキシダービ活性を観察した.飼料摂取量は,100%給餌に較べて緊縛負荷と暑熱暴露で有意に減少した.呼吸数と体温は暑熱暴露で有意に増加し,心拍数は緊縛負荷で有意に増加した.グルコース濃度は緊縛負荷で有意に増加し,FFA濃度は,80%給餌,60%給餌および緊縛負荷で有意に増加し,暑熱暴露で増加する傾向を示した.エピネフサン濃度は緊縛負荷で最も高く,80%給餌と60%給餌でも有意に増加し,また,暑熱暴露で増加する傾向を示した.ノルエピネフリン濃度は緊縛負荷で最も高く,60%給餌ど暑熱暴露で有意に増加し,また,80%給餌で増加する傾向を示した.以上の結果,産卵鶏に対する行動抑制,棚限給餌および暑熱暴露はストレス度が高いものと判断された.
  • 山本 朱美, 石橋 晃
    1996 年67 巻12 号 p. 1050-1057
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    単一または複数のアミノ酸を同時に過剰添加したときに,どのアミノ酸の血漿濃度がいつ反応し,その反応が長期に渡り保持されるか否かを明らかにするために2つの試験を行った.15ヵ月齢の産卵鶏を単飼し,トウモロコシ,フスマおよびコーングルテンミールを主体とする基礎飼料を14日間給与した後,試験1では,それぞれのNRCのアミノ酸要求量の40%を含む4種類(Arg, His, Phe, Met)および3種類(Ile, Thr, Va1)のアミノ酸の混合物を,試験2では,10種類(Arg, Ile, Gly, Glu, Thr,His, Phe, Met, Lys, Leu)のアミノ酸を同じくNRC要求量の40%ずつおよび基礎飼料中の40%に相当するGluを単独に添加した試験飼料に切り替えた.飼料切り替え後,経日的に採血を行った.飼料にアミノ酸を混合添加したとき,HisとPhe以外のアミノ酸の血漿濃度は別々に4日までに添加アミノ酸に応答し,応答した血漿遊離アミノ酸濃度は試験終了日である24日目まで持続された.単独に添加した場合,Glu, His,およびPhe以外のアミノ酸の血漿中濃度は4日目までに応答し,その状態は20日目まで持続された.
  • 阿部 又信, 入来 常徳, 恩田 賢, 岩野 房子, 舟場 正幸
    1996 年67 巻12 号 p. 1058-1067
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種雄子牛計24頭を用いて2回の窒素(N)出納試験を実施した.各試験では3頭を1区とし,2週間を王期とする2×2ラテン方格法による実験を2回反復実施した.子牛は6週齢で離乳し,8週齢から開始した4週間の試験期間中も食道溝反射を維持させた.試験期間中の基礎飼料はトウモロコシ,大豆粕および稲ワラから成り,乾物当たりのCP含量は14.5%であった.試験1ではL-リジン塩酸塩とDL-メチオニン,試験2ではL-リジン塩酸塩のみを食道溝経由で投与した場合のN出納および血漿遊離アミノ酸濃度を,それぞれ等N量のL-グルタミンを同様にして投与した場合と比較した.その結果,N出納はL-リジン塩酸塩とDL-メチオニンの同時投与により改善されたが,L-リジン塩酸塩単独では改善されなかった.L-リジン塩酸塩とDL-メチオニンの同時投与は血漿中の遊離リジンとメチオニンの濃度を増加させる一方,側鎖アミノ酸濃度を減少させた.しかし,L-リジン塩酸塩の単独投与は血漿リジン濃度を増加させたが,側鎖アミノ酸濃度には影響しなかった.
  • 金 海, 濱名 克己, 関根 純二郎
    1996 年67 巻12 号 p. 1068-1075
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    反芻胃内発酵の過程における飼料粒子の真密度,比重およびかさ密度の変化を測定するため,オーツヘイ単独給与めん羊の反芻胃内で7種類の乾草を培養した.7種類の乾草の真密度は,1.6から1.8g/mlの範囲にあり,培養時間による違いは認められなかった.乾草の実効比重は,培養開始時の0.7g/mlから培養2時間後の約1.3g/mlまで増加した.その後は,ほぼ一定の水準で培養96時間まで推移した.乾草粒子のかさ密度は,培養4時間まではほとんど変化が認められなかったが,その後,培養24時間までにもとの値の70%まで減少した.それ以降は培養96時間まで著しい変化は認められなかった.中性デタージェント繊維の分解様相は,かさ密度の変化と同様であった.この両者には,有意な相関関係が認められた(P<0.01).かさ密度は,乾草粒子の構造との関連により繊維分画の消化過程と関係していると結論された.しかしながら,乾草の真密度および実効比重は,繊維分画の消化過程とは関連がないと推察された.
  • 細野 明義, 白井 秀和
    1996 年67 巻12 号 p. 1076-1081
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    アミノ酸とグルコースの加熱によって生じる変異原性に対する発酵乳の減弱作用を調べる目的で本実験を行った.グリシン,アラニン,プロリン,セリン,システイン,リジンの各1M水溶液にグルコースを1Mになるよう溶解させ,120°Cで30分間加熱した.加熱物のpHを7.0に調整後,それぞれの変異原性をSalmonella typhimurium TA98から造成したストレプトマイシン依存性株(SD510)を指標菌として,S-9Mix無存在下で調べた,その結果,システインーグルコース加熱物にもっとも高い変異原性が認められ,復帰変異コロニー数は190/プレートであった.また,システインーグルコース加熱物の濃度に依存して変異原性の増加が認められた.一方,インドネシアの伝統的発酵乳であるダデヒから分離した乳酸菌6株(Lactococcus lactis sbusp. lactis R-22, Lc. lactts subsp. cremoris R-48, Lactobacil-lus casei subsp. casei R-52, Leucanostoc paramesenteroides R-51, Leu. paramesenteroides R-62およびEnterococcus faecalis subsp. ltquefaciens R-32)を単独に,脱脂乳に30°Cで48時間培養した.得られた発酵乳のシステインーグルコース加熱物に対する抗変異原性を調べた.その結果,Lactobacillus casei subsp. casei R-52を用いて製造した発酵乳に高い抗変異原性が認められ,システインーグルコース加熱物の示す変異原性の約60%を減弱させた.
  • 古瀬 充宏, Remedios T. MABAYO, 村井 篤嗣, 森 良一, 奥村 純市
    1996 年67 巻12 号 p. 1082-1085
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    The aim of this study was to clarify the mechanism by which dietary medium-chain triacylglycerol induced insulin secretion in rat. To investigate whether cholecystokinin released by medium-chain triacylglycerol was involved in insulin secretion, devazepide, a cholecystokinin -A receptor antagonist, was applied. Devazepide (1mg/kg) or vehicle (0.25% methylcellulose) was i. p. injected just after medium-chain triacylglycerol administration by gavage. After 1h, serum insulin concentration significantly increased when compared with the control, though devazepide significantly suppressed insulin release enhanced by medium-chain triacylglycerol in comparison with vehicle treatment. It is concluded that the increment of serum insulin concentration through the medium-chain triacylglycerol action may largely depend upon the enhanced release of cholecystokinin in the rat.
  • 笠井 孝正, 横濱 道成, 井上 勝弘, 石島 芳郎
    1996 年67 巻12 号 p. 1086-1089
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    The characteristics of fatty acid composition of the shoulder clod, round, neck, and adipose tissues in sixteen feral Yeso sika deer of both sexes were compared with the other species of animals. There was no significant difference in fatty acid composition in each tissue of both sexes. The total unsaturated fatty acids of Yeso sika deer ranged from 49.86±4.23 to 52.48±5.74% which was similar to the range of feral Japanese serow, which evidently occupies a high ratio of the total fatty acids. The most striking distinction was the high content of linoleic acid in Yeso sika deer compared with that of the other species of deer.
  • マイノル バルガス, 大橋 登美男
    1996 年67 巻12 号 p. 1090-1094
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    Shiitake mushroom extract, obtained from industrial wastes of dry shiitake, was found to reduce the coagulation time of skim milk culture media by stimulating the bacterial growth of Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus B-5b incubated at temperatures from 25 to 45°C. It was observed that the stimulatory effect depended on the incubation temperature, being this effect stronger at 35°C. The faster acidification of the culture media led to a rapid aggregation of casein with the formation of coarser gels. These samples showed great propensity to spontaneous syneresis, and the effect was intensified as incubation temperature increased.
  • 白井 達夫, 長嶺 慶隆, 安宅 倭, 長野 満美子, 池内 豊
    1996 年67 巻12 号 p. 1095-1100
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    熊本県,長崎県および秋田県において1993年12月までに出荷された褐毛和種の枝肉データを用いて日齢枝肉重量(枝肉重量/出荷時日齢),ロ-ス芯面積,皮下脂肪厚,歩留基準値,BMSナンバー,BCSナンバー,しまりおよびきめの8形質について,遺伝的趨勢を明らかにした.分析には,10,471頭の枝肉データを用い,個体モデルのBLUP法により種雄牛および雌牛の育種価の推定を行った.数学モデルには,要因として農協•出荷年次,出荷月,性,個体および出荷月齢の一次,二次回帰を取り上げた.この分析に必要な遺伝的パラメーターはHendersonの方法IIIにより推定した.その遺伝率推定値は,日齢枝肉重量,ロース芯面積,皮下脂肪厚,歩留基準値,BMSナンバー,BCSナンバー,しまりおよびきめでそれぞれ,0.225,0.313,0.297,0.397,0.271,0.218,0.247および0.195であった.遺伝的趨勢をみるため1975年から1989年までの生年に対する雌牛の標準化推定育種価平均値の直線回帰係数を求めたところ,日齢枝肉重量,ロース芯面積,BMSナンバー,BCSナンバー,しまりおよびきめでそれぞれ,0.665,0.051,0.030,-0.016,0.015および0.011となり,すべて1%水準で有意であった.また,種雄牛についてはどの形質についても,一定の趨勢は見られなかった.しかし,肉量および肉質に関する形質について,高い育種価推定値を示す種雄牛が,より多くの後代を持つことが明らかになった.
  • 服部 育男, 熊井 清雄, 福見 良平
    1996 年67 巻12 号 p. 1101-1109
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    本実験はサイレージの好気的変敗の抑制技術を開発するために,数種の化学薬品の中からスクリーニングしたソルビン酸とカプロン酸を供試し,それらの好気的変敗に対する有効阻止濃度を検討したものである.実験材料として糊熟期トウモロコシを供試した.サイロ詰め込み時にこれら薬剤の濃度を変えて添加してサイレージを調製し,約100日後に開封して,好気的変敗の生起を調べた.得られた結果を要約すると以下の通りである.カプロン酸添加においては,対照区と0.025%添加区は発熱開始時間とピーク時の品温がほぼ同じであったが,0.05%添加区は発熱開始が約10時間,0.1%添加区は発熱開始が約40時間それぞれ対照区より遅れ,0.2%添加区は発熱が認められなかった.一方,ソルビン酸添加においては,0.025%添加区は対照区より20時間遅れ,0.05%添加区は0.025%添加区とほぼ同時に発熱を開始したが,温度上昇が緩慢で実験終了時である170時間後までピークに達しなかった.0.1%と0.2%添加区は品温が全く上昇しなかった.pHについてみると,カプロン酸添加は開封時において各区のpHが同程度であった.対照区と0.025%添加区は開封後4日目から上昇し,ほぼ同様に推移した.0.05%添加区と0.1%添加区は対照区より2日遅れて上昇を示し,8日目のpHは対照区とほぼ同じであった,一方,0.2%添加区はpHの上昇が認められなかった.ソルビン酸添加では,開封時における各区のpHは同程度であった.対照区は4日目,0.025%添加区と0.05%添加区は7日目に上昇が認められた.実験終了時である7日目には処理濃度が高まるにつれてpHが低くなり,0.05%以上添加の各区はサイレージの至適pH域内におさまった,微生物相については,開封時においてカプロン酸とソルビン酸の各区は処理濃度が高まるにつれて各菌数が減少する傾向を示した.開封後の菌数の推移は対応する処理のpHの推移とほぼ同様の傾向を示した.有機酸含量の推移についてみると,開封時におけるカプロン酸添加区は処理濃度が高まるにつれて乳酸含量が低下したが,ソルビン酸添加区では区間に差がほとんどなかった.一方,開封後の乳酸含量の推移はカプロン酸添加区,ソルビン酸添加区ともに処理濃度が低い区ほど早い時期から減少したが,0.2%添加区はいずれも減少しなかった.以上より,ソルビン酸の有効阻止濃度はカプロン酸より低く,材料草当たり0.1%程度の添加で十分と考えられる.
  • 三津本 充
    1996 年67 巻12 号 p. 1110-1126
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2008/03/10
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