ラテン方格法は,多頭数の家畜を利用できない研究機関でよく用いられる実験計画法である.本研究では,単一のラテン方格法と複数のラテン方格法(3ケース)の計4つのケースを想定してラテン方格法を用いた場合の分析方法と結果の解釈を解説することを目的とした.また,各ケースにおけるSASとRパッケージによるプログラムを補足資料として例示した.
本研究では,ウシに市販海藻飼料を給与した場合の糞中IgA, VFA濃度および糞便性状について調査し,腸管免疫賦活活性に与える影響について検討した.試験には黒毛和種の経産牛4頭を用い,海藻飼料を給与する区(海藻区)および給与しない区(対照区)に2頭ずつ分け,給与I期(10日間),休止期(13日間),給与II期(10日間)の3期からなる2×2のクロスオーバー法で実施した.糞中IgA濃度の変化量は,海藻区が対照区に比べ有意に増加した(P<0.05).一方,糞pH値および糞中VFA濃度は両区ともに正常範囲内で推移し,海藻飼料の給与の有無で差は認められなかった.また,糞中VFA濃度と糞中IgA濃度との間にも相関は認められなかった.以上から,ウシへの市販海藻飼料の添加給与は,腸内微生物叢には影響しないものの,腸管免疫を活性化させることが示唆された.
精米もしくは精米と米ぬかの併用給与が豚肉質に及ぼす影響を検討した.供試豚は,平均体重70kgのデュロック種雌豚32頭を4つの区に割り振った.区分は,トウモロコシを70%配合した対照区,対照区のトウモロコシを精米に代替した精米区,精米を60%と米ぬかを10%配合した精米+米ぬか10%区および精米50%と米ぬかを20%配合した精米+米ぬか20%区とした.精米区の背脂肪内層L*値とオレイン酸割合は,対照区よりも高く(P<0.05),米ぬかの配合割合が増すと対照区との差が無くなった.精米区の背脂肪内層リノール酸とα-リノレン酸割合は,対照区に比べて低く(P<0.05),米ぬかの配合割合が増すと対照区と同程度まで増加した.以上より,精米給与は,背脂肪内層のL*値とオレイン酸割合を増加させ,多価不飽和脂肪酸酸割合を低下させた.米ぬかの配合割合の増加は,この効果を減少させることが明らかになった.
豚肉中の2つの亜鉛プロトポルフィリンIX(ZnPP)形成機構を解明するために,異なる筋肉を用いたZnPP形成モデルを用いて,ZnPPの基質である各種ポルフィリンならびに金属イオンの推移から,報告されている形成経路との関係性を調べた.両モデルともに,ZnPPの結合亜鉛量は総亜鉛に対して極めて低く,低濃度の亜鉛キレート剤ではZnPP形成の影響がなかったため,亜鉛源は豚肉中に十分量あることが示された.最長筋を用いたモデルにおける総ポルフィリン量の増加と鉄キレート剤によるZnPP形成の一部抑制から,ヘム生合成経路からプロトポルフィリンIXが作られ,フェロケラターゼ(FECH)による触媒反応と非酵素的に亜鉛が挿入されてZnPPが形成することが示唆された.棘下筋を用いたモデルでは非ヘム鉄の増加と鉄キレート剤の抑制効果から,FECHによるヘム脱鉄経路を介してZnPPを形成することが示唆された.
国内で流通しているシカおよびイノシシ肉の品質向上のために,処理施設より胸・腰最長筋を購入して,熟成終了時のpHを測定し変動要因について調べた.調査票から動物種,性別,体重,捕獲方法(箱わな,囲いわな,足わな)を要因とし分散分析により解析した.また,タンパク質の変性程度を測定しPale, Soft, and Exudative (PSE)の発生についても調査した.その結果,調査個体の35%はDark, Firm, and Dry (DFD)が疑われるpH>6.0であり,足わなによる捕獲がpHを有意に高くし,オスがメスより高くなる傾向が認められた.一方,PSEと判定されたのは箱わなおよび囲いわなで捕獲された頭数の52%,足わな捕獲の5.8%であった.以上の結果より,品質の高い野生獣肉を提供するには早期発見によるDFDの回避と,興奮を抑えた止め刺し技術によるPSE回避が重要であることが示された.
黒毛和種去勢牛の枝肉(n=11)の第6から第7肋骨間の切開面に認められる8筋肉および皮下脂肪について,接触型電極を装着したLCRメータを用いて,1Hz,120Hz,および100kHzにおけるインピーダンスを測定し,またガスクロマトグラフィー法により脂肪酸組成を分析した.胸最長筋では,すべての周波数でオレイン酸割合とインピーダンスとの間に有意な相関が得られた.この結果は,すべての周波数でインピーダンスを測定することにより,胸最長筋のオレイン酸割合を推定できることを示している.皮下脂肪のオレイン酸割合と1Hzにおけるインピーダンスとの間には有意な相関が得られた.胸最長筋のオレイン酸割合と皮下脂肪のオレイン酸割合との間にも有意な相関が得られた.これらの結果から,1Hzで皮下脂肪のインピーダンスを測定することにより,胸最長筋のオレイン酸割合を間接的に推定できることが示された.
寒冷地の周年親子放牧における子牛の発育と親牛の繁殖成績を明らかにするため,北東北地域で黒毛和種の周年親子放牧を実践しているK農場において調査を行った.計24頭の子牛について2年間にわたり毎月体重測定を行った.親牛の繁殖成績については繁殖記録を閲覧し解析した.放牧地はケンタッキーブルーグラス優占草地であった.子牛への補助飼料として夏季はグラスサイレージと濃厚飼料,冬季はさらにコーンサイレージを給与していた.9ヵ月齢までの子牛の平均日増体量は,雄で1.07kg/日,雌で0.94kg/日であった.冬期(12月~2月)生まれの子牛に限ると,雄で1.13kg/日,雌で0.93kg/日であり,いずれも冬期以外の出生子牛と有意な差はなかった.親牛の分娩間隔の平均値,中央値はそれぞれ410日,384日であった.北東北地域の周年親子放牧における子牛の発育成績は良好で,親牛の分娩間隔についても全国平均より劣ることはなかった.