7羽の産卵鶏を用い,それぞれの産卵クラッチ後の1休産日とその翌日の2日に亘つて低Ca飼料(Ca 0.1%)を与え,その後再び正常Ca飼料(Ca 3.0%)に戻した.低Ca飼料の第1日にCa
45を経口投与し,排泄物および卵殻のCaとCa
45量を測定し,低Ca飼料給与時における産卵鶏のCa代謝の変化について検討を加えた.
低Ca飼料を与えることによつて,卵殼Ca量と血中Ca濃度は明らかに減少し,両者間に有意の相関がみられた.低Ca飼料給与後にえられた2卵(第1,第2卵)とそれに続く正常Ca飼料に戻した時の1卵(第3卵)の卵殼Ca
45含量はそれぞれ45~65%,11~13%および3~5%であつた.卵殼を5層に分けて測定した結果,第1卵ではそのCa
45比放射能は内層から外層に向つて急激に減少した.第2卵々殼のCa
45は骨に蓄積したCa
45から由来し,各層の比放射能はほぼ一定していた.第3卵々殼Caの多くは正常飼料のCaによつてまかなわれ,Ca
45は骨から与えられている.各層の比放射能は第1層から第4層まではほぼ一定の低い値を示したが,最外層では急に高い値を示した.これはこの層が形成される時に与えられた飼料Caが骨へ急速に蓄積されることによつて,骨Ca
45が大量に溶脱され卵殻に利用されたことによると考える.3日間のCa排泄量は8%で,卵殼蓄積量と比べて極めて少量であつた.正常飼料に戻してからの24時間のCa
45排泄量は,低Ca飼料での終りの24時間における値よりも逆に高い値を示した.
産卵鶏では飼料Caが欠乏すると骨Caが卵殼の形成に大量に利用されるので,骨Ca量は急速に減少し,その後充分な量の飼料Caが与えられるとそれは骨および卵殼へ盛んに蓄積される.同時に骨Caの溶脱はなおも続き,その溶脱量は骨蓄積量の増大にともなつて増加するものと考えられる.従つて,骨におけるCaの交換過程および割合は,骨のCa量,Caスペースおよび飼料Ca量とその採取時刻と卵殼形成時刻との関係などから極めて複雑に変化し,骨Ca自体の1ife spanもこれらの条件によつて変化するものと思われる.
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