日本短角種の発育速度が遺伝的に改良されていることを明らかにし,今後最も重要な課題である精肉歩留り向上のために現場後代検定を行なった.1974~1985年に直接検定にかけられた雄牛のうち13頭の種雄牛の息牛183頭の成績を用いて一日平均増体量(DG)の表型価の推移,および遺伝的趨勢をみた.種雄牛の育種価はBLUP法により推定した,種雄牛の育種価の出生年次に対する回帰係数は+10.6g/年(P〈0.05)であり,息牛におけるDGの表型価の検定年次に対する回帰係数は+30.1g/年(P〈0.01)であった.1985年9月から1986年1月に出荷された1,009頭の枝肉について5~6肋骨間断面の3ヵ所の皮下脂肪厚,ロース芯面積の測定および脂肪交雑の判定を行ない,現場後代検定を実施した,皮下脂肪厚1,2,3の和および各皮下脂肪厚の平均値は63.8,25.7,21.9,16.3mm,またロース芯面積と脂肪交雑評点の平均値は40.2cm
2,0.33であった.精肉量による種雄牛の順位づけを行なうため,17頭のデータを用い5~6肋骨間断面の測定値から精肉量を推定する次の重回帰式を作製した.
精肉量推定値(kg)=0.492×枝肉重量(kg)-0.280×皮下脂肪厚3ヵ所の和(mm)
+0.488×ロース芯面積(cm2)+33.31(R=0.95)
平均枝肉重量の概数340kgと一次回帰式により340kg時の値に補正した各個体の測定値を代入して精肉量推定値を求めた.その結果,現場後代検定における精肉量推定値の平均は202,6kg,枝肉重量340kgに対する精肉歩留りの平均は59.6%であった.1,009頭の枝肉のうち26頭の種雄牛の息牛237頭のデータを用い,BLUP法により各形質のExpected Progeny Difference (EPD)を推定した.EPDは皮下脂肪厚3ヵ所の和では-6,0~+12.1mm,ロース芯面積では-3.0~+2.9cm2,脂肪交雑評点では-0.10~+0.21の範囲であった.前述の精肉量推定式を用いて枝肉重量340kg時の種雄牛別の精肉量を求めたところ,197.9~203.9kgの推定値が得られた.
抄録全体を表示