日本畜産学会報
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72 巻, 10 号
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  • 嫌気性処理技術および高度処理技術を中心として
    田中 康男
    2001 年 72 巻 10 号 p. 509-523
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    In Japan, nearly 30% of piggery farms installewda stewater treatment facilities. Most of the facilitieasd opt aerobic treatment system based on the activated sludge process. This process is reliablea nd has high performance of organic pollutant removal. However, running cost reduction and implementation of advanced treatment process for removing phosphorus, nitrogen and color become more and more important for farmers due to embarrassed economy and strengthen of environmental legislatioonn effluentw ater quality. Thus, development of new treatment process has become important task, which process has performance of phosphorus, nitrogen and color removal with low running cost. Though this task is difficultto accomplish, several new fundamental processes have been investigatedw hich are anticipateda contribution to the improvement of the treatment systems.
  • 奥村 直彦, 三橋 忠由
    2001 年 72 巻 10 号 p. 524-535
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ブタは約7千年前にヨーロッパや近東,アジア各地で独立に家畜化されたと考えられている.その毛色には,野生型,均一な黒,均一な赤,黒斑あるいは黒ドミノ斑,白地または赤地に黒斑,黒や赤の駁毛,黒地に白のポイント,白,セピア,糟毛または灰色,青等があり,アグーチ,ダイリューション,エクステンション,白色,ホワイトヘッドまたはヘレフォードと呼ばれる遺伝子座が推定されている.動物の毛色関連遺伝子として,エンドセリンおよびエンドセリンレセプター,受容体型チロシンキナーゼKITとそのリガンドSCF,転写因子であるMITF,メラニンの合成に関与するチロシナーゼおよび関連タンパク質,メラノサイト刺激ホルモンレセプター(MC1R)とαMSH,アグーチタンパク質等が考えられている.ブタの毛色変異のうちこれまで分子レベルである程度対応のっいているものは,第6染色体末端にあるMC1R遺伝子(E遺伝子座)と第8染色体にあるKIT遺伝子(I遺伝子座)である.
  • 蔡 義民, 増田 信義, 藤田 泰仁, 河本 英憲, 安藤 貞
    2001 年 72 巻 10 号 p. 536-541
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    低未利用飼料資源を有効に利用するため,容易に流通できるポリドラムサイロを用い,食品産業廃棄物である茶飲料残渣の飼料調製•貯蔵技術を検討した.茶飲料生産工場から排出された緑茶飲料残渣には乳酸菌は検出されず,好気性細菌および酵母が高い菌数で分布していた.茶飲料残渣に含まれるグルコースなどの可溶性炭水化物(WSC)がきわめて少ないため,飼料作物のようなサイレージ発酵が出来なかった.飼料作物から分離された乳酸菌株Lactobacillus plantarum FG1または市販乳酸菌剤Lactobacillus rhamnosus SN1とAcremonium属菌由来のアクレモニウムセルラーゼを添加して茶飲料残渣サイレージを調製した.乳酸菌とセルラーゼを添加した茶飲料残渣サイレージはpH値が低く,乳酸含量が高い良質なものが調製され,125日間の貯蔵中に変敗しなかった.また,茶飲料残渣サイレージにはタンパク質,機能性成分であるカテキン類,カロチンおよびビタミンEなどが豊富に含まれた.
  • 渡辺 千春, 谷 浩, 藤田 耕, 冨家 武男, 吉田 栄治, 二階堂 隆友
    2001 年 72 巻 10 号 p. 542-550
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    厨房残さの温風乾燥処理物について,養豚用飼料としての実用性を検討した.130°Cで約10時間乾燥処理した厨房残さは,基礎飼料として用いた市販飼料(くみあい配合飼料)に比べ,粗タンパク質(CP),粗脂肪,粗灰分含量が高かったが,CP消化率は55%と低かった.3ヵ月間の常温保存で過酸化物価が16.9から36.5meq/kgに上昇し脂肪の酸化が示唆された.体重30kgの育成豚16頭を供試し,給与CPの10,25,50%が処理物由来CPとなるよう基礎飼料に配合した3試験区と,基礎飼料のみの対照区により,1区4頭の群飼,不断給餌•自由飲水で体重110kgまで飼養試験を実施した.50%区は飼料摂取量,平均体重が低く,枝肉背脂肪における不飽和脂肪酸の割合が有意に高かった.10%区と25%区は対照区と差がなく,排泄糞の臭気への影響もなかった.以上の結果から,温風乾燥処理した厨房残さは飼料原料としてCP代替レベルで25%(原物配合割合20%)程度の配合利用が可能であると考えられる.
  • 石塚 譲, 川井 裕史, 大谷 新太郎, 入江 正和
    2001 年 72 巻 10 号 p. 551-556
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    野生ホンシュウジカ(Cervus nippon centralis)肉の特性を知るため,胸最長筋,半膜様筋と大腿二頭筋の一般成分,無機物および色調を分析し,性と季節の影響を検討した.灰分を除く一般成分においては部位,性,季節間による有意な差はみられなかった.粗脂肪は1%以下と低く,Fe含量は3つの測定部位の平均値が3.8mg/100gと高かった.Na,PとK含量は筋肉部位間に差がみられ,Na含量には性差もみられた.分光スペクトルでは胸最長筋の色調はほとんどの可視波長域で反射率が30%以内であった.ブルーミングは30分以内で完了し,ミオグロビンのメト化は24時間後に観察された.以上の結果から,野生ホンシュゥジカ肉の特性は,他の家畜肉に比較して低脂肪でFeに富み,無機物の一部に差が見られたもののその差は小さいと考察され,さらに,色調は濃く,かっ褐色化しやすいが,ブルーミング時間は他の食肉とほぼ同じであることが明らかとなった.
  • 佐藤 博, 井浦 美幸
    2001 年 72 巻 10 号 p. 557-563
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ウシの脳脊髄液(CSF)性状を検討するため,61頭から腰椎部あるいは大槽(小脳延髄槽)の穿刺によってCSFと,頸静脈血を採取し,グルコース,尿素,尿酸,クレアチニン,Na,Cl,K,Ca,無機リン(Pi),Mgを分析した.健康牛のほか患畜も用いたが,中枢神経疾患例は除外した.両部位を穿刺した18頭によると,腰椎部のCSFでは尿素とクレアチニン濃度が小脳延髄槽より高く,グルコースと尿酸も同様な傾向を示したが,ミネラル濃度には部位による差がなかった.CSFのグルコースは血漿よりも低く,血漿の約65%であった.CSFのClは血漿の約1.2倍の濃度を示し,CSFのNaも血漿濃度より高かった.CSFのK,PiおよびMgは血漿濃度の変動に関係なく狭い範囲に維持され,とくにPiとKで顕著であった.CSFの尿素は血漿濃度に比例的であったが,尿酸とクレアチニン濃度は血漿濃度に関係なく狭い範囲に維持された.
  • 金 辰保, 森田 潤一郎, 石下 真人, 鮫島 邦彦
    2001 年 72 巻 10 号 p. 564-569
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ニワトリ砂嚢筋ミオシンの加熱ゲル形成能に及ぼす塩化鉄の影響を調べた.ミオシンの加熱ゲル強度はFeCl2の添加で上昇した.加熱ゲル強度に対するFeCl2の効果は塩濃度の違いで異なっていた.ミオシンの蛍光強度もFeCl2の添加により,低塩濃度(0.1~0.2M)では低下し,高塩濃度(0.4~0.5M)では上昇した.0.3M KClでは中間型の変化を示した.ゼロ長架橋剤(EDC)によるミオシンロッドの架橋はFeCl2によって促進された.FeCl2によるミオシンフィラメントあるいはミオシン分子のこれらの変化が加熱ゲル強度の上昇に関係していると推察できた.
  • 牛水 徹, 佐藤 俊男, 齋藤 忠夫, 伊藤 敞敏
    2001 年 72 巻 10 号 p. 570-578
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ウシおよびブタの筋肉および腎臓中に残留する可能性のあるペニシリン系抗生物質(PCs;ペニシリンG,オキサシリン,クロキサシリン,ジクロキサシリンおよびナフシリン)を蛍光誘導体化することにより,高感度に定性定量する分析法を開発した.7種の蛍光誘導体化試薬についてペニシリンGとの反応性を検討し,もっとも良好な結果の得られた1-プロモアセチルピレンを選択した.筋肉および腎臓試料の水抽出液を,硫酸およびタングステン酸ナトリウムで除タンパク処理を行い,C18固相抽出カートリッジカラムを用いてPCsを濃縮した.カラム溶出液中のPCsを1-ブロモアセチルピレンおよび18-クラウン-6を用いて蛍光誘導体化(40°C,30分)し,逆相モードの高速液体クロマトグラフィーにより分析を行った.筋肉および腎臓試料に各PCsを50および200ng/g添加した時のPCsの回収率は,ペニシリンGで73~96%ともっとも良好な結果が得られ,オキサシリン,クロキサシリン,ナフシリンおよびジクロキサシリンにおいても,それぞれ73~90,64~83,62~71および61~67%と良好であった.食肉試料における検出限界はペニシリンGでは2ng/g,その他のPCsでは5ng/gであった.また,簡易検査法によりPCs残留の疑われたウシ筋肉および腎臓試料から,本法によりペニシリンGを定量(0.045~29.0μg/g)することができた.
  • 安藤 哲, 大槻 和夫
    2001 年 72 巻 10 号 p. 579-586
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種育成雌牛の放牧時のエネルギー収支の解析方法について検討した.牧草の刈り取り前後差法と補助飼料より代謝エネルギー摂取量(MEI)を,放牧地での日増体量(DG)よりNRCの式を用いて増体に要した正味エネルギー量(NEg)を,放牧地での心拍数(HR)より,トレッドミル上で求めた熱産生量(HP)の心拍数(HR)に対する回帰式を用いてHPを求め,MEI=HP+NEgが成り立っかどうかで,エネルギー収支を検討した.4回の放牧試験でのMEIに対するHP+NEgの割合は,95.2,101.8,98.9,111.8%であり,DGがプラスの3回については,おおむねMEI=HP+NEgが成り立ち,回帰式より推定したHPを用いてエネルギー収支の解析ができると考えられた.一方,DGがマイナスの条件下ではNEgの算出は困難であり,MEIとHP+NEgの差も大きかった.放牧で本法を用いてエネルギー収支の解析を行うためには,NEg算出の基となるDGの測定期間中に採食量が極端に変動しないことが必要であると考えられた.
  • 清宮 幸男, 菊池 文也, 山口 直己, 菅原 薫, 中嶋 芳也
    2001 年 72 巻 10 号 p. 587-593
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    乳牛86頭の分娩前3週間の飼養管理としてTMRを群単位で(対照群)あるいは個体別に(試験群)給与し,分娩前の適切な飼養管理による周産期疾病の予防効果について同時期の体重推移の観点から検討した.過肥の栄養状態で乾乳開始時期を迎えたウシにおける妊娠の進展にともなう増体重を除く分娩前1ヵ月間の体重減少率および周産期疾病の発生率は,対照群の5.0±2.9%(平均値±標準偏差)および8例中6例(75%)から試験群の1.4±2.5%および13例中3例(23%)へと,後者の減少率が有意に軽減し(P<0.01),発生率も低下傾向(P<0.1)を示した.適正な栄養状態で同時期を迎えたウシのそれらは,対照群において2.9±3.6%および8例中5例(63%),試験群において1.0±2.7%および27例中3例(11%)であり,後者の発生率が有意に低下した(P<0.0l).両群の初産牛は体重減少を示さず,疾病発生は対照群の11例中1例(9%)のみに観察された.以上の結果から,分娩前の適正な飼養管理は,体重減少率を軽減する効果および本調査では特定できなかった他の効果により疾病発生率を低下させることが示唆された.
  • 石川 圭介, 江口 祐輔, 植竹 勝治, 田中 智夫
    2001 年 72 巻 10 号 p. 594-604
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究では,イノシシへの嫌悪刺激としてイヌを利用することが有効か否かを検証するため,イヌとイノシシの対面テストを行った.供試犬には1頭の警察犬と4頭の家庭犬を用い,供試猪には10ヵ月間飼育管理された約16カ月齢の個体6頭を用いた.対面は供試犬および供試猪を実験施設に馴致した後,1日3回,8:00~9:00,12:00~13:00,16:00~17:00の時間帯に行い,各供試犬を2日間で6頭すべての供試猪に対面させた,供試犬は供試猪との対面が始まると,対面前と比較して有意に供試猪の方に視線を向け(P<0.01),供試猪に向かって吠えて(P<0.05),警戒を示した.また,吠えの頻度には個体によって差がみられた(P<0.01).供試犬の供試猪に対する注視と吠えは,供試猪が走って逃げる直前の3秒に有意に多くみられ(それぞれ,P<0.05,P<0.01),この二つの行動が供試猪にとって嫌悪刺激となっていることが示唆された.本研究の結果,イノシシに対して回避反応を引き起こさせるイヌの行動は,視線を対象に向ける,対象に向かって発声するなどであったが,これらの行動はイヌによって個体差が大きかった.このことから,イヌをイノシシに対する嫌悪刺激として効果的に用いるためには,それに適したイヌの行動を見極め,行動に基づいて個体を選択する必要があると考えられた.
  • 平山 琢二, 安里 直和, 太田 實
    2001 年 72 巻 10 号 p. 605-609
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    夏季における黒毛和種の第一胃収縮運動に与える庇蔭設置の効果について検討する目的で経産牛3頭を用いて次に示す方法で試験を行った.すなわち,パドック内で無庇蔭区,庇蔭設置区,さらに舎飼い区の3区を設け,採食,反芻および休息時の第一胃収縮運動をラジオカプセルを用いて午前7時から午後7時までの12時間測定した.3区の試験を通して日射量の最高は1.22cal/cm2/分であった.環境温度の最高および最低は,29.2および23.1°Cであった.体温には,3区間で有意な差は認められず,最高:38.8°C,最低:37.6°C,平均:38.1°Cであった.午後の反芻時間は,庇蔭設置区が舎飼い区および無庇蔭区に比べて有意に長くなった.第一胃の収縮の振幅については,いずれの区においても採食時で高くなり,さらに採食時における庇蔭設置区および舎飼い区が無庇蔭区よりも有意に高くなった.また,反芻時においても同様な傾向が認められた.第一胃の収縮の頻度は,振幅同様に採食時で高くなったが,試験区間での有意な差は認められなかった.総採食時間は,舎飼い区が無庇蔭区および庇蔭設置区よりも有意に長くなった.総反芻時間は,庇蔭設置区が舎飼い区および無庇蔭区よりも有意に短くなった.総休息時間は,庇蔭設置区,無庇蔭区および舎飼い区の順に短くなった.これらの結果から,第一胃収縮の振幅は,庇蔭設置および舎飼いなどといった太陽光線を遮ることによって高くなる傾向が示唆された.しかし,反芻および休息時間といった黒毛和種の行動と第一胃収縮の振幅間の関連性は本試験からは認められなかった.
  • 広岡 博之, 島田 和宏, 林 孝, 寺田 文典
    2001 年 72 巻 10 号 p. 610-617
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    肉用肥育牛の窒素排泄は窒素汚染の原因の一つと考えられているため,それを削減する方法を探ることは重要な課題である.本研究では,肥育去勢牛の糞尿による窒素排泄量を予測する数学式を作成,評価し,さらにその式を用いたシミュレーションによって窒素排泄量の削減の可能性を調べることを曲とした.2つの新しい式,Nf+u=Ns-CPg/6.25およびNf+u=a(Ns-Nr)+b+Nf+u(b)とすでに報告されているNf+u=16.74×DMI+8.54×CP+0.108×W-154.3を比較した.ただし,Nf+uは窒素排泄量(g/日),Nsは摂取窒素量(g/日),Nf+u(b)は内因性窒素排泄量(g/日), Nrは窒素要求量(g/日),CPgは増体のためのタンパク質要求量(g/日),DMI, CPおよびWはそれぞれ乾物摂取量(kg/日),粗タンパク質含量(乾物中%),体重(kg)である.CPg, NrおよびNf+u(b)は日本飼養標準を用いて推定し,回帰係数aとbは式を解くことによって求めた.新しい式は,23頭の黒毛和種と45頭の承ルスタイン種去勢牛の窒素出納実験の結果を用いて,作成•評価した. 1日当たりの増体量(DG; kg/日),粗タンパク質含量(CP; %)および代謝率(q)をそれぞれ独立に変化させることによって,肥育期間中の総窒素摂取量に対する総窒素排泄量(I1)および肥育期間中の総窒素蓄積量に対する総窒素排泄量(I2)の2つの環境負荷指標に対するこれらの要因の影響をシミュレートした.その結果,DGの増加はI1とI2の減少をもたらしCPの減少とqの増加はI2の減少をもたらすことが示された.また, I1に対するCPとqの効果は,用いる式によって異なることがうかがえた.
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