肉用肥育牛の窒素排泄は窒素汚染の原因の一つと考えられているため,それを削減する方法を探ることは重要な課題である.本研究では,肥育去勢牛の糞尿による窒素排泄量を予測する数学式を作成,評価し,さらにその式を用いたシミュレーションによって窒素排泄量の削減の可能性を調べることを曲とした.2つの新しい式,N
f+u=Ns-CP
g/6.25およびN
f+u=a(N
s-N
r)+b+N
f+u(b)とすでに報告されているN
f+u=16.74×DMI+8.54×CP+0.108×W-154.3を比較した.ただし,N
f+uは窒素排泄量(g/日),Nsは摂取窒素量(g/日),N
f+u(b)は内因性窒素排泄量(g/日), Nrは窒素要求量(g/日),CP
gは増体のためのタンパク質要求量(g/日),DMI, CPおよびWはそれぞれ乾物摂取量(kg/日),粗タンパク質含量(乾物中%),体重(kg)である.CPg, NrおよびN
f+u(b)は日本飼養標準を用いて推定し,回帰係数aとbは式を解くことによって求めた.新しい式は,23頭の黒毛和種と45頭の承ルスタイン種去勢牛の窒素出納実験の結果を用いて,作成•評価した. 1日当たりの増体量(DG; kg/日),粗タンパク質含量(CP; %)および代謝率(q)をそれぞれ独立に変化させることによって,肥育期間中の総窒素摂取量に対する総窒素排泄量(I
1)および肥育期間中の総窒素蓄積量に対する総窒素排泄量(I
2)の2つの環境負荷指標に対するこれらの要因の影響をシミュレートした.その結果,DGの増加はI
1とI
2の減少をもたらしCPの減少とqの増加はI
2の減少をもたらすことが示された.また, I
1に対するCPとqの効果は,用いる式によって異なることがうかがえた.
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