既報に提案した膜透過に関する多成分系の輸送方程式と濃度分極式を用いてチーズホエーの逆浸透濃縮を解析する場合に, 輸送方程式の水透過係数を定数として取り扱うことができる体積透過流束の範囲について検討した.
ホエーを逆浸透濃縮する過程において, あるファウリング起因溶質成分の膜面濃度が限界濃度を越えるとファウリングを発生するという仮説を立て, その溶質成分の限界膜面濃度を与える体積透過流束を限界安定体積透過流束 (J
v lim) と定義した.
ポリベンッイミダゾロン膜を装着した平面膜型モジュールを組み込んだ一過式逆浸透装置を用いて, 流速変化法により, ファウリング起因溶質成分の限界膜面濃度が存在することを証明するとともに, J
v limはこの限界膜面濃度により支配されることを示した.すなわち, J
v limはモジュール流量の1/3乗に比例して変化した.
ファウリング起因溶質成分, その濃縮液濃度および限界膜面濃度が, ホエーのpH, 全溶質濃度および温度履歴, ならびに濃縮温度の濃縮操作条件によって変化することが考えられたので, これらの濃縮条件のJ
v limに及ぼす影響を検討した.ホエーのpHを6.4から4.6まで変化させると, J
v limはpH5.8で極大値を示した, ホエーの全溶質濃度が高いほどJ
v limは低下した.50℃1時間の熱処理を行なったホエーのJ
v limは, 未処理ホエーのそれよりも上昇した. 濃縮温度を変えると, J
v limはホエーのpHおよび温度履歴によってそれぞれ異なった変化を示した.
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