本報告は剪毛回數及收毛方法が兎毛の毛量毛質に及ぼす影響に付て基礎的研究を行つた結果を記述したものである,蓋し家兎のみならず一般家畜の飼養管理及能力改善の研究の一部をなすものとして考慮さるべきであると思ふ故に茲に發表することにした。
次に其の結果を記述すれば下の如くである。
1. 1年間の收毛量の最も多いのは年3回剪の場合にして年2回剪の場合之に次ぎ年4回剪及6回剪の場合は收毛量が非常に少い。
2. 各剪毛時に於ける粗毛,粗緬毛及緬毛の割合をみるに,年4回剪及6回剪の場合は年2回剪及3回剪の場合に比し緬毛の割合が少く粗緬毛の割合が比較的多い。
3. 剪毛回數の少い程,毛長が長なるのは當然であるが,年2回剪の場合と年3回剪の場合とに於ては其の間の毛長の差は甚だ僅少である。年6回剪の場合は緬毛及粗緬毛共,毛長5cmに達せず,又年4回剪の場合に於ても緬毛は5cmに滿たない。
4. 緬毛の纎度に對する剪毛回數の影響は殆ど認められない。
5. 緬毛に於けるcrimps數は大體,其の毛長に比例し,年6回剪の場合,最も少く,年4回剪の場合之に次ぎ,年3回,年2回剪と漸次多くなる。
6. 年2回剪及3回剪は試驗開始時よりも終了時に於ける緬毛の抗張強度(纎度1μに對する強度)を増加するが,年4回剪及6回剪に於ては斯る事實は認められない。又年3回剪は緬毛の伸度をも増す様である。
7. 以上の結果に依り1年間に於ける剪毛回數は3回を以て最適とし,其の時期は4月,8月,12月若くは3月,7月,11月であらう。
8. 次に毟毛に依つて收毛するも,特に毛量が大となる樣なことはない。
9. 毟毛の場合は剪毛の場合に比し緬毛の割合が稍少い。
10. 毟毛の場合に比し剪毛の場合の方が稍毛長大である,即ち毟毛に依り特に毛の成長が促進されるが如きことはない。
11. 繊度は一般に年齡と共に増すが,此の増加率に於て毟毛した場合は剪毛した場合より大である。
12. 毟毛した場合と剪毛した場合とに於てcrimps數の差は殆ど認められない。
13. 剪毛した場合は其の兎毛に於ける緬毛の抗張強度は必ず漸次増加したが,毟毛の場合には必ずしもさうでなかつた。伸度に於ては兩者殆ど差がない。
14. 以上に依り,收毛方法としては勞力の點から考慮するも,毟毛よりも寧ろ剪毛を推すべきであらう。曾てTANZERは第5回萬國家禽會議に於て採毛方法としては毟毛などよりも剪毛が最良の方法であることを報告したが(報文No-144)本研究に於ても同樣の結果を示して居る。
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