日本畜産学会報
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53 巻, 2 号
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  • 田中 桂一, 高木 伸雄, 大谷 滋, 重野 嘉吉
    1982 年 53 巻 2 号 p. 73-79
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    飼料中の脂肪あるいは蛋白質の配合量を変化させることにより,エネルギー含量を増減させた時,鶏ヒナの肝臓における脂質合成能および脂肪酸合成に関連しているいくつかの酵素活性を検討した.脂肪の配合量を変えた場合,肝臓中の全コレステロール含量は,ME1,900kcal/kgの飼料を給与したヒナにおいて低い値を示した(P<0.01).血清中のNEFA濃度は,飼料のMEが1,900から3,100kcal/kgの給与飼料まで,エネルギー含量の増加に伴って増加した(P<0.01).蛋白質の配合量を変えることにより,肝臓中のトリグリセリド含量は飼料のMEが1,800から3,200kcal/kgの給与飼料まで飼料中MEの増加につれて低下したが(P<0.01),ME3,700kcal/kgの飼料を給与したヒナにおいて,ME3,200kcal/kgの飼料を給与したヒナの値まで増加した.肝臓中の全コレステロール含量は,ME 3,700kcal/kgの飼料を給与したヒナにおいて,高い値を示した(P<0.01).脂肪の配合量を変えることにより,肝臓切片における脂肪酸合成能,肝臓中のNADP-リンゴ酸脱水素酵素およびクエン酸開裂酵素活性は低下した(P<0.01).蛋白質の配合量を変えることにより,肝臓切片における脂肪酸合成能および肝臓中のNADP-リンゴ酸脱水素酵素活性は,飼料のME1,800から3,200kcal/kgまでは順次低下したが(P<0.01),ME3,700kcal/kgの飼料給与では増加した.肝臓中のクエン酸開裂酵素活性は,ME3,700kcal/kgの飼料を給与したヒナにおいて増加を示した(P<0.05).
  • 渋井 仁志, 入来 常徳, 阿部 又信
    1982 年 53 巻 2 号 p. 80-84
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    子牛に対する代用乳の給与方法が異なる場合,あるいは下痢の程度が異なるような場合に,酸化クロムを用いて測定した消化率(標識消化率)が,全糞採取法による消化率(全糞消化率)とどの程度の相関を有するかについて検討した.約1週齢で導入したホルスタイン種雄子牛12頭を4頭づつの3区に分け,そのうちのTN区に対してはタローを含有する代用乳を乳首哺乳し,TB区には同種の代用乳をバケツ哺乳,SN区には大豆油を含む代用乳を乳首哺乳した.用いた2種類の代用乳は脂肪源が異なる以外は同一組成で,いずれも酸化クロムを0.2%含有していた.子牛導入後2週間を試験期間とし,その間は代用乳以外の飼料を与えず,最終4日間の糞を全量採取して全糞消化率を求めるとともに,その一部を用いて標識消化率を測定した.その結果,下痢はSN区において最もひどく,TN区において最も軽度であり,TB区はほぼその中間であった.代用乳各成分の見掛けの消化率は,全糞採取法では個体間の変動が全区において比較的小さく,TB区の粗脂肪消化率が他の2区と比べて有意に低いことが認められた(P<0.05),しかし標識法では特にTB区において変動が大きく,したがって,全成分について平均値間の差に有意性は認められなかった.供試牛全頭をまとめて全糞消化率と標識消化率との間の相関係数(r)を求めると,乾物以外の成分については相関は有意であったが,しかしr値は全般的に低かった.一方,タロー含有代用乳を乳首またはバケツで給与した子牛(T群;TN区とTB区)と,代用乳は異なるがいずれも乳首哺乳した子牛(N群;TN区とSN区)とに分けて,それぞれrを求めたところ,N群では個体間で下痢の程度にかなりの差があったにもかかわらず,2種類の消化率の間には全成分について高い有意の相開が認められた(P<0.01).しかし哺乳方法を異にするT群においては,下痢の程度には個体間の差が比較的小さかったにもかかわらず,全ての成分において両消化率間に有意の相関は認められなかった.
  • 吉田 治弘, 池本 卯典
    1982 年 53 巻 2 号 p. 85-88
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    イヌ血清をSDS-PAGEで泳動すると,遺伝的変異を示す蛋白質を認めた.この蛋白質はPAS陽性で,分子量は約34,000,等電点はpH4.5を示し,免疫電気泳動ではα1領域に沈降線を形成し,α1-acid glycoproteinと推定された.表現型の出現頻度は陽性型80%,陰性型20%で雌雄による差異は認められなかった.また,常染色体性優性遺伝子に支配されると仮定して求めた遺伝子頻度はAcg+: 0.553, Acg-: 0.447であった.
  • 高鳥 浩介, 田中 一郎
    1982 年 53 巻 2 号 p. 89-92
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    1979年岐阜県下のミツバチに自然発生したChalk broodが発生し,その死んだ蜂児から原因菌であるAscosphaera apisを分離同定した.本症例は,本邦で初めて認められ,原因菌の真菌学的所見について記載した.巨大培養をMY20寒天培地でおこなったところ,発育は,著しく早くその集落は綿毛状を呈した.集落表面は,白色から暗灰色調となり,臭気強く酸敗臭を有した.胞子のうは,集落下方に密生して形された.胞子のうの形状は,球型で直径75~100μm,黒色ないし暗褐色を呈し,表面は滑面であった.胞子球は,球型ないし亜球型で直径11~17μmであった.子のう胞子は,無色の単細胞性で,滑面なだ円形を呈し,3.0~4.0×1.0~2.5μmであった.無性生殖の分生子世代は,認められなかった.
  • 宮本 元, 石橋 武彦
    1982 年 53 巻 2 号 p. 93-98
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    妊娠後期の山羊卵巣におけるステロイドホルモン合成に関して検討するために,妊娠110~130日の在来種山羊黄体中のステロイド水酸基•脱水素酵素(HSD)と脂質の活性を組織化学的に検出した.調べたHSDは,3β-(基質はpregnenoloneまたはdehydroepiandrosterone), 3α-(androsterone), 11β-(androstenedione), 17β-(estradiol-17βまたはtestosterone), 20α-(20α-dihydroprogesterone)および20β-HSD (20β-dihydroprogesterone)であった.なお,HSDの組織化学的反応は,NADHまたはNADPH脱水素酵素に依存しているので,これらの酵素活性についても検討した.黄体中の脂質活性は,Sudan black Bでは中等度であり,oil red Oでは弱かった.NADHとNADPH脱水素酵素の活性は非常に強かった.3β-HSDの活性に関しては,pregnenoloneを基質として用いると中等度の活性があり,dehydroepiandrosteroneを基質とすると強い活性が認められた.弱い3α-HSD活性も出現した.11β-,17β-,20α-および20β-HSD活性は検出されなかった.これらの成績は,妊娠後期の山羊黄体がprogesteroneの合成能をもっているにとを示し,山羊の妊娠維持には黄体が必要であるという,これまでの実験結果と一致していると思われる.
  • 古谷 修, 高橋 正也, 亀岡 喧一
    1982 年 53 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    豚における消化率測定の指標物質として,酸化クロムペーパーについて,糞中への回収率および採糞時刻にともなう消化率の変動を子豚を用いて検討した.供試した酸化クロムペーパーは,酸化クロムを乾物換算で約42%含有する市販のもので,これを1mm四方に切断し飼料に0.1%配合して用いた.実験1および2では酸化クロムペーパーの糞中への回収率を,それぞれ,従来から指標物質として用いられている酸化クロム粉末および酸不溶性灰分の回収率と比較した.その結果,酸化クロムペーパーとして投与した酸化クロムの糞中への回収率は99.2-101.5%となり,それによって算出した消化率は全糞採取法による値と大差なかった.しかしながら,粉末として投与した酸化クロムおよび酸不溶性灰分の回収率はそれぞれ,89.8および90.9%となり,これを指標物質として算出した消化率は全糞採取法あるいは酸化クロムペーパー指標物質法による値よりも有意に(p<0.05)低かった.実験3では,1日を3時刻,すなわち,08:30-12:00,12:00-15:30および15:30-08:30に区分して採糞し,各時刻における消化率を比較したが,乾物,粗蛋白質およびエネルギーのいずれの消化率においても有意差は認められなかった.
  • 横田 浩臣
    1982 年 53 巻 2 号 p. 105-109
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    成雄鶏において,メチオニンを静脈に連続的に注入し,血漿メチオニン濃度を高めたときの腸管のメチオニン吸収能力における変化を測定した.メチオニンを33.3m mole/hrの速度で注入すると,血漿メチオニン濃度は1時間後に3.03μmole/mlとなった.一方,200mmole/hrの速度で注入すると,30分および1時間後には,それぞれ10.97,15.84μmole/mlとなった.この条件のもとで還流装置を用い,腸管のメチオニン吸収能力を測定した.メチオニンは10μmole/mlの濃度でKrebs-Ringer phosphate solution (pH7.4)に溶解し,1時間に亘って空腸後部を還流し(再循還法),還流液からのメチオニンの消失量を吸収量とした,低膿度でメチオニンを注入した場合には,メチオニン吸収能力はKrebs-Ringerphosphate solutionのみを注入した場合と同程度であったが,高濃度で注入した場合には,メチオニン吸収能力はKrebs-Ringer phosphate solutionのみを注入した場合に比較して,低下した.メチオニンを注入した場合の血漿メチオニン濃度の変化と,腸管におけるメチオニン吸収能力を考え合せると,血漿メチオニン濃度がメチオニン吸収能力を測定するための還流液中のメチオニン濃度より高い場合には,メチオニン吸収能力は低下するものと考えられる.
  • 宮本 元, 古林 亮介, 石橋 武彦
    1982 年 53 巻 2 号 p. 110-115
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    グルコース6リン酸脱水素酵素とイソクエン酸脱水素酵素はNADPHの産生に関与し,NADPHはステロイドの水酸化に必要である.山羊卵巣の機能を明らかにするため,妊娠後期(妊娠110~130日)の在来種山羊黄体における,酸化還元酵素と加水分解酵素の活性を組織化学的に検討した.妊娠黄体中の酸化還元酵素では,グルコース6リン酸脱水素酵素とイソクエン酸脱水素酵素が非常に強い活性を示し,乳酸脱水素酵素,コハク酸脱水素酵素およびリンゴ酸脱水素酵素は中等度の活性を示した.一方,加水分解酵素に関しては,アルカリ性フォスファターゼの活性は強く,酸性フォスファターゼとアデノシントリフォスファターゼの活性は弱かった.これらの成績は,妊娠後期の山羊黄体がステロイド合成能をもつとともに,エネルギー代謝を行っていることを示唆している.また,山羊の妊娠維持には黄体が必要であるという,従来の実験結果と一致していると思われる.
  • 小堤 恭平, 岡田 光男
    1982 年 53 巻 2 号 p. 116-123
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    放牧終了後のホルスタイン種去勢牛7頭を実験に供試し,このうち3頭を100日間,4頭を200日間それぞれ肥育した.屠殺解体後,右半丸より最長筋を採取し,胸椎および腰椎の各脊椎長に切断し試料とし,各部位の重量および切断面の面積を測定した.さらに各部位について理化学的分析をおこなった.肥育100日から200日における最長筋の長さの増加割合は2.4%であったのに対し,重量の増加割合は22.9%と顕著であった.この間における重量の増加した主な部位は胸椎の10番目から腰椎の5番目にかけてであった.第13番目の胸椎および第1番目の腰椎の切断面が他の部位と比較して大きかった.各部位の粗脂肪含量は肥育100日から200日にかけて,2から4%に増加した.第10胸椎から第4腰椎における粗脂肪含量が他の部位に比較して少ない傾向が見られた.肥育100日から200日における第4胸椎から第9胸椎における粗脂肪含量の増加率は2.12倍で,第10胸椎から第4腰椎のそれは2.08倍であった.この肥育期間中の,脂肪蓄積は両者間でほとんどかわらなかった.一方,同じ部位における筋肉の増加率は,前者が1.05倍に対し,後者が1.22倍と両者間で異なっていた.このことは筋肉内での成長速度の相違が筋肉内の脂肪分布の相違をもたらすことを示すと考えられる.肥育100日後におけるshear valueは6-19lb/cm2と部位間で著しい相違がみられた.第11胸椎の部位が最も高いshear valueを示した.一方,肥育200日のもののshear valueは5~8lb/cm2と減少した.このことから放牧後の牛はよりやわらかい肉を得るためには,約200日間の肥育が必要と考えられた.
  • 水野 利雄, 佐藤 一義, 佐田 雅宏, 氷上 雄三, 長谷川 信
    1982 年 53 巻 2 号 p. 124-131
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    鶏ヒナ肝臓におけるゲルコース及びアミノ酸からの脂肪酸合成能に及ぼす飼料蛋白質含量の影響を調べ,次の結果を得た.1) あらかじめ17%蛋白質飼料を給与したヒナでは,絶食により低下した脂肪酸合成能(in vivo)は,グルコースの投与により絶食前の値にまで回復したが,アミノ酸混合物の投与によっては全く回復は起こらなかった.これに対し,67%蛋白質飼料を給与した後絶食したヒナでは,アミノ酸混合物の投与によ脂肪酸合成能は絶食前の値の約33%にまで増加したが,グルコースの投与による回復は全く認められなかった.アミノ酸混合物は大豆蛋白質のアミノ酸組成に準じて調製した.2)67%蛋白質飼料を給与したヒナでは,[U-14C]グルコースからの脂肪酸合成能は著しく低く,17%蛋白質飼料を給与したヒナで得られた値のわずか2%にすぎなかった.これに対し,[U-14C]チロシンからの脂肪酸合成能は,[U-14C]グルコースからの合成能に比較して,著しく高い値を示した.3) 飼料蛋白質含量の増加により,解糖系酵素(ヘキソキナーゼ,ホスホフルクトキナーゼ,ピルベートキナーゼ)の活性は低下した.これらの結果から,高蛋白質飼料を給与したヒナの肝臓では,脂肪酸は主としてアミノ酸から合成され,グルコースは脂肪酸合成の基質として利用され難いことが推測され,更に,この理由として,解糖系酵素の活性減少によるグルコースの利用性の低下が示唆された.
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