日本畜産学会報
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94 巻, 4 号
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総説
  • 瀬戸口 暁, 大石 風人, 荻野 暁史, 広岡 博之
    2023 年 94 巻 4 号 p. 397-411
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル 認証あり

    持続可能な畜産を実現するための3要件として,経済的に成り立ち,環境負荷物質の排出を低減でき,社会的に受け入れられることが挙げられる.特にライフサイクルアセスメント(LCA)は,2つ目の家畜由来の環境負荷物質の排出とそのインパクトについて評価するための有効な手法で,これまで畜産分野で数多くの研究成果が報告されている.そこで,本総説では畜産におけるLCAのこれまでの国内外における研究を紹介することを目的とした.特に,本稿ではわが国で重視されている自給飼料やエコフィードに関するLCA研究を解説するとともに,LCAと経済評価との関係,LCAと社会的持続性との関係,LCAの理論研究などこれまであまり取り上げてこなかったテーマについても言及した.本稿がこれからの畜産におけるLCA研究の発展に貢献できることを期待している.

技術報告
  • 野村 哲郎
    2023 年 94 巻 4 号 p. 413-425
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル 認証あり

    ジーン・ドロッピング・シミュレーション(GDS)は,始祖個体に割り当てた遺伝子をメンデルの分離法則にしたがい血統データに沿って伝達させ,現存個体あるいはそれらによって構成される現存集団の全個体の遺伝子型を確率論的に決定する血統分析の手法である.GDSからは,遺伝子型や遺伝子頻度の現存集団における確率分布など,通常の血統分析からは得られない情報が導ける.GDSの最大の難点は,信頼性の高い結果を得るために必要なシミュレーションの反復回数の設定が難しいことである.この問題に対処するために,本研究ではGDSから得られる結果を,部分共祖係数を用いて決定論的に計算するための方法を示すとともに動物育種への応用例を与えた.

  • 大番 羽音, 伊藤 めぐみ, 渡邉 謙一, 髙橋 英二
    2023 年 94 巻 4 号 p. 427-431
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル 認証あり

    本研究は,超音波画像診断装置を用いた子牛胸腺の発育評価指標を確立することを目的として実施した.2ヵ月齢以内の子牛 (n=25)を供し,触診により胸腺スコアを,超音波画像診断装置を用いて頸部胸腺断面積を,体重推定尺を用いて推定体重を,病理解剖により実際の胸腺重量を測定した.単回帰分析により,胸腺スコア,頸部胸腺断面積および推定体重と胸腺重量との関係をそれぞれ解析した結果,順位相関係数はそれぞれ0.84,0.91および0.07であり,P値はそれぞれ<0.01,<0.01および0.73であった.胸腺スコアおよび頸部胸腺断面積と胸腺重量との間に共に有意な正の相関が認められたが,客観的・連続的数値として示される頸部胸腺断面積は胸腺スコアよりも胸腺重量との相関が強かった.超音波画像診断装置を用いた頸部胸腺断面積測定により,臨床現場において誰でも正確に胸腺の大きさを評価可能である.

  • 矢島 絢介, 川端 庸平, 長谷川 靖洋, 前田 尚之, 岩崎 智仁
    2023 年 94 巻 4 号 p. 433-440
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル 認証あり

    グルコース,ソルビトールは塩漬剤として日本の非加熱食肉製品製造に使用される.しかし,これらを製品製造時に添加する理由は明確ではない.本研究は,これらの糖類を用いて作られた非加熱食肉製品について製造途中での組織化学的観察ならびに熱分析などを行い,その添加効果についての理解を深め,最終製品の品質の管理に利用することを目的に実施した.15%(w/w)食塩を使用し,15%(w/w)グルコース,あるいはソルビトール,または糖類などを使用せず,0.12%(w/w)乳酸,0.1%(w/w)アスコルビン酸ナトリウム,0.07%(w/w)亜硝酸ナトリウムをそれぞれ使用した3種類の調味液による湿塩漬法にて,1週間の塩漬を行った.すべての試験区で経時的に筋線維の膨潤が見られ,筋線維の真円度も増加した.熱分析測定の結果は,糖類を添加することで低温での塩の析出を抑制し,より効率良く塩漬工程を経ることならびに凍結製品の解凍後の品質維持にも寄与している可能性が示された.

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