日本畜産学会報
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61 巻, 5 号
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  • 井上 良
    1990 年61 巻5 号 p. 377-384
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    祖先の遺伝的寄与率を用いた育種法に理論的根拠を与えようとして,ごく単純な遺伝様式を想定し,祖先の遺伝子型や遺伝様式ごとに,世代によって子孫の遺伝子型価がどう変動するかを調べた.その結果,特定祖先およびその子孫が無作意交配を受けた場合,祖先から複数の経路を経た子孫の遺伝子頻度が,祖先の遺伝的寄与率の父母和(SGC)と父母積(PGC)に関する1次式で表せること,したがって,その子孫群の遺伝子型価平均値もSGCとPGCの1次関数になることがわかった.全集団における当該遺伝子の遺伝子頻度を一般化しても,複対立遺伝子であっても,子孫群の遺伝子型価平均値がSGCとPGCの1次関数となることには変わりがなく,SGCの係数はその祖先の相加効果,PGCの係数は優性効果を表すことが証明された.
    複数の遺伝子を想定したときも,各遺伝子が,ある形質に独立に作用する場合には,同じことが成立し,また,遺伝子に上位,下位の関係があるときは,子孫群の遺伝子型価平均値はSGCとPGCのべき乗,積を含む関数となり,2次項の係数は相加効果と優性効果の2次成分,および交互作用を表すことを明かにした.このことから,SGCとPGC,およびそのべき乗等を用いて,個体の表型価を表す数学的モデルが作られ,これらの回帰係数がその祖先の与える遺伝的効果を相加効果,優性効果,上位性効果に区別して表すことが明かとなった.
    この原理を実用形質の表型価の分析に応用すれば,子孫に対する遺伝的効果の大きい祖先を見いだすことができ,相加効果の大きな祖先の寄与率を高めるような選抜で,集団の能力向上がはかられ,優性効果の強い祖先について,遺伝的寄与率の高い個体と低い個体の交配でその形質のすぐれた個体を作出できることが推測された.この方法は推定誤差の大きいことが予測されるものの,和牛の肉質のように表型の判定しにくい形質について,種畜候補を予備選抜する際に有力な手段となることが予想される.
  • 小沢 忍, 小石川 常吉, 千国 幸一, 吉武 充
    1990 年61 巻5 号 p. 385
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    平均仕上げ時体重675kg(3頭)および612kg(3頭)の2群のホルスタイン去勢牛の胸最長筋を供試し,仕上げ時体重が屠殺後の筋肉の解糖系にかかわる物質の変化に及ぼす影響を調べた.その結果,屠殺後における筋肉のpH値の低下,グリコーゲンの減少,ATP等ヌクレオチドの変化から,高体重仕上げ区の方が低体重仕上げ区より解糖作用は速く進み,また最終pH値も低い傾向を示した.解糖作用が完全に停止した時の筋肉中グリコーゲン濃度も,高体重仕上げ区が多かった.これらの測定値の差は,仕上げ時体重より,むしろ肥育度が反映したものと推察された.すなわち,脂肪蓄積が進んだ個体ほど死後の解糖作用が速く,グリコーゲン量も多いと考えられた.
  • 菅原 弘, 伊藤 敞敏, 足立 達
    1990 年61 巻5 号 p. 390-394
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ウズラおよびニワトリの卵白から硫安分画法によって粗フラボプロテイン(硫安70-95%飽和沈殿)を得た.これはDEAE-セファデックスA-50イオン交換クロマトグラフィーによって2成分に分画された.いずれの成分もタンパク質当り1:1のモル比でリボフラビン結合能(1:1のモル比)を有していた.SDS-PAGE上ではウズラのフラボプロティンはニワトリのそれぞれの成分よりも移動度が大きいことから,分子量は多少小さいことが推定された品量的に多い画分IIの卵白中における含量はウズラが1.540量多い.糖組成はマンノース,グルコサミン,シアル酸から成り,ウズラの方がニワトリのものよりもいずれも少なかった.フラボプロテインのアミノ酸組成は酸性生アミノ酸,セリン,シスチンが多く,スレオニン,プロリン,バリン,イソロイシンが少ないのが特徴であるが,主成分と副成分間には顕著な違いはなく,ウズラではニワトリと比較してシスチンがわずかに多い外は大きな違いはなかった.
  • 広谷 彰
    1990 年61 巻5 号 p. 395-400
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    フィンランドにおいて,年齢や血縁関係の知られているハードを対象に個体識別に基づく調査を行ない,半家畜トナカイの社会関係に仔の屠殺や隔離,去勢という管理がどのような影響を及ぼすかを調べた.2個体間の親疎関係は同じグループに一緒にいた度合を指標(AI)として使用した.得られた結果は以下の通りである.1) その年の春に生まれたオスの仔の大部分は生後約半年で屠殺されるが,仔を失った母親はそうでないものと比較して前年の娘と高い平均AIを示した.2) 仔の屠殺を契機に仔を失った母親同士は仔を伴った母親とよりも相対的に高いAIを示した.3) 約1ヵ月間にわたって離ればなれになった母娘ペアは,そうでないものより有意に低いAIを示した.しかし,このような母娘ペアでさえも,期間中同じハードにいた非血縁の成メスと若メスの任意のペアよりも有意に高いAIを示した.この事実は,分離を経験しても母娘間の認知がまだ保たれていることを示している.4)性的に活発なオスが敵対的になる交尾期においてさえ,表勢オス同士は親和的関係を示した.ハレムに合流した場合でも,去勢オスはメスに対して性行動を示さず,ハレムホルダーから追い払われることはなかった.
  • 口田 圭吾, 山岸 敏宏, 八巻 邦次, 水間 豊
    1990 年61 巻5 号 p. 401-405
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    1975年から1987年までの13年間に実施された,日本短角種産肉能力間接検定成績を用いて遺伝的パラメータを推定した,分析した検定雄牛および後代牛は,それぞれ53頭および431頭であった.分析には,HARVEYの最小自乗分散分析用コンピュータプログラムLSMLMW(1986)を使用し,要因として年次-検定場,年次-検定場内検定雄牛および検定開始時日齢への1次および2次の回帰を取り上げた.分散分析の結果,年次一検定場の効果は脂肪交雑評点および格付成績を除くすべての形質において,年次-検定場内検定雄牛の効果は枝肉歩留を除くすべての形質でそれぞれ高度に有意であった(P<0.01).開始時日齢との関係では,終了時体重および格付成績が1次回帰で,また背部皮下脂肪厚が2次回帰でそれぞれ有意であった.産肉形質の遺伝率は,1日当り増体量(以下DGと略す)0.35,終了時体重0.54,枝肉歩留0.15,背部皮下脂肪厚0.62,脂肪交雑評点0.86,ロース芯断面積0.65および格付成績0.79であった.DGと終了時体重,枝肉歩留,脂肪交雑評点および格付成績との遺伝相関は,それぞれ0.75,0.89,0.40および0.39と正であったが,背部皮下脂肪厚およびロース芯断面積との遺伝相関はそれぞれ-0.13,-0.14と負であった.さらに,背部皮下脂肪厚と脂肪交雑評点および格付成績との遺伝相関は,それぞれ-0.42および-0.41と負の値を示した.表型相関に関しては,DGと終了時体重0.76,脂肪交雑評点と格付成績0.86が非常に高い正の相関を示した.
  • 信国 喜八郎, 古賀 脩, 西山 久吉
    1990 年61 巻5 号 p. 406-410
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    低温環境下における甲状腺除去雛(甲除雛)の体温および生存に及ぼすサイロキシン(T4)投与の影響について検討するため,甲除雛に5°C処理の直前,6,9,12,18あるいは24時間前の各時期に体重100gあたり1.5μgのT4を胸筋中に1回投与し,処理後6時間の体温,および生存日数を検討した.その結果,T4を5°C処理の直前に投与した区では,T4無投与区(対照)の雛と同様に処理後の体温は急激に低下し,大部分の雛が処理1日以内に死亡した.6,9あるいは12時間前に投与した区では,直前処理区にくらべて体温低下の程度は減少し,T4投与から5°C処理開始までの時間が長くなるにしたがって体温低下の速さは緩やかとなった.しかし,各投与区とも半数以上の雛が1日以内に死亡した,一方,18あるいは24時間前に投与した区では,体温は5°C処理後少なくとも6時間の間40.5~41.0°Cに維持され,雛の2/3が2日以上生存した.以上の結果から,甲除雛の胸筋内に投与したT4が5°Cの低温環境下で体温ならびに生命の維持に確かな効果を発揮するまでには,18~24時間を要することが明らかとなった.また甲除雛が低温処理後において体温を維持し,生命を維持するためには,処理開始の時点でT4の体熱産生作用が十分発揮されていることが必要であると推察された.
  • 峯尾 仁, 小山田 尚, 安田 太一, 秋山 道夫, 加藤 清雄, 牛島 純一
    1990 年61 巻5 号 p. 411-416
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    血漿グルコース,インスリンおよびグルカゴン濃度におよぼす採食頻度の影響を4頭の雌ヒツジを用いて検討した.1日に与える飼料の総量は一定とし(ルーサンペレット1500gとオーチャードグラス乾草300g)1回,2回または3回に分けて給与した.採食開始にともなって,血漿グルコースは低下し,インスリンおよびグルカゴンも変化することが総ての給餌パターンで観察された.採食頻度が増すことにより,それぞれの採食時に生ずる血漿グルコースおよび膵ホルモンの変動は小さくなった.採食頻度が多くなることにより,1日の平均血漿グルコースおよびインスリン濃度が上昇し,グルカゴン濃度が低下したので,その結果,I/G比が上昇した.以上の結果,ヒツジにおいて1日の飼料給与量が同じ場合,採食の頻度が変化することは,採食直後に生ずる血漿グルコースおよび膵ホルモンの変動のみならず,栄養素やホルモンの1日の平均レベルにも影響を与えると考えられる.
  • 上野 三郎, 高瀬 佳子, 森田 哲夫, 東 泰好, 満田 久輝
    1990 年61 巻5 号 p. 417-423
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ラットを用いて,PSE様筋変性の誘起を試みた.また,PSE筋を予防する上での温度管理の重要性を明らかにするために,屠殺前後の環境温度が筋肉特性に及ぼす影響を評価した.Sprague-Dawley系雄ラットを,立ち直り反射がなくなり,直腸温が43.0°C以上に上昇するまで(90±23分),43.0±0.5°Cの高温に暴露した.暑熱負荷を加えた個体と加えないものとを,ともにエーテルで屠殺し,曙体を4•25•35°Cの異なる環境温度に,2時間まで維持し,その間,腰方形筋の死後変化を測定した.暑熱負荷により,体温が37.2±0.4°Cから43.6±0.5°Cに上昇した.高体温ラットの筋肉の死後変化は,豚PSE筋のそれに似たものであった.すなわち,腰方形筋におけるグリコーゲン•ATP含量の低下,乳酸上昇,pH低下は,無処理ラットより,暑熱負荷ラットで急速に起きた.暑熱負荷は筋の保水力を低下させ,トランスミッション値を上昇させた.これらのPSEに関係する筋パラメータの変化は,死後の環境温度の上昇により促進された.屠殺後35°Cに維持した高体温群の筋肉は,著しく白色化し,全色素•ヘモグロビン•ミオグロビン量が無処理群より低下した.43.0°Cに約1.5時間暴露し,屠体を35°Cに1時間おくことにより,PSEに酷似した筋変性をラットで引き起こすことができる.すなわち,遺伝的ストレス感受性を有しない動物でも,屠殺前後の体温上昇によりPSE様筋変性が誘起されることが示された.
  • 岡本 全弘, 宮崎 元
    1990 年61 巻5 号 p. 424-427
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    無処理稲わら(RS)とアンモニア処理した稲わら(ARS)をそれぞれ8頭のめん羊に一日一回,代謝体重あたり22g給与した.これらのめん羊を飼料給与前(0h)ならびに飼料給与後,2,6および12時間後(それぞれ2h,6hおよび12hとする)に屠殺し,反芻胃内容物の量とその粒度分布を測定した.粒度分布の測定は湿式ふるいがけによったが,前処理として中性デタージェント液中で60分間煮沸した.反芻胃内の乾物,中性デタージェント繊維(NDF)および1.2mmのふるいを通らないNDF量の平均値はARSを給与しためん羊がRSを給与しためん羊にくらべて,いずれも有意に少なかった.1.2mmのふるいを通らないNDFの割合は0hでは30%以下であったが,RSを給与しためん羊の2hおよび6hとARSを給与しためん羊の2hにおいては60%以上であった.6hと12hにおける,この割合のARS群の平均値はRS群の平均値より低かった.反芻胃内容物の平均modulus of fineness (MF)と平均幾何平均径(GMD)は0hにおいてはそれぞれ2.63±0.20および0.58±0.15mmであったが,2hにおいてはそれぞれ3.89±0.09および3.57±0.60mm(いずれも,平均植±標準誤差)に上昇し,その後徐々に低下した.ARSを給与しためん羊のMFおよびGMDはRSを給与しためん羊にくらべて.速やかに低下する傾向を認めた.
  • 仲田 正, 田中 耕作
    1990 年61 巻5 号 p. 428-432
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    放卵誘起因子(OIF)が自然の放卵時期以外においても放出されているかどうかを調べるため,クラッチ最終卵(Ct)の放卵直前膣部を短時間結紮し自然放卵を阻止した.この結果,51羽のうち17羽においては結紮処置当日,25羽において翌日のクラッチ第1卵(C1)の排卵の約1時間前,残りの9羽は同処置後3日目にCs卵(C1とCtを除く連産内の卵)の排卵と同時期にそれぞれ放卵された.一方,Cs卵の放卵直前に膣の短時間結紮と同時に,ろ斗部を結紮し,次の予定排卵の卵が卵管内へ取り込まれなくした場合,5羽は膣結紮糸の除去直後又はその後間もなく放卵した.一方残りの15羽においては,処置当日に放卵は行なわれず,すべて翌日のCs卵の排卵と同時期に行なわれた.これらの結果から,Ct放卵当日の午後OIFが放出されるが,卵形成中にはこれの放出は起こらないものと推定された.
  • 川畑 享子, 高橋 寿太郎, 安田 泰久, 谷村 一郎
    1990 年61 巻5 号 p. 433-437
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    Wistar系成熟雌ラットの妊娠20日目の胎盤の微細構造と母体静脈血中に投与したポリスチレン粒子の胎盤への透過性を検討した.妊娠20日目の血絨毛性胎盤は,栄養膜細胞が明確な三層に分化し,血管分布が多く複雑な迷路構造を構成している.母体と胎子間は,栄養膜第I層,第II層,第III層と基底膜および胎子血管内皮より構成されている.ポリスチレン粒子の胎盤への透過性では,投与1時間後で,第1層内に粒子が単独でみられた.投与2時間後では,第1層内に集塊となった粒子群が多く認められ,投与3時間半後では,第1層と第II層内に集合体となった粒子が多くみられた,投与2時間と3時間半後では,第I層の栄養膜が突起を旺盛に出し粒子を取り込んでいる像が特徴的であった.第III層には粒子の侵入は全く認められなかった.このことより,第III層が防御機構として働くものと考えられる.
  • 西村 和行
    1990 年61 巻5 号 p. 438-440
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
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