子豚におけるリジン要求量を, 体重区分5-10kg (1期), 10-20kg (2期), 20-35kg (3期) および45-60kg (4期) について, 実用飼料, 不断給飼, 群飼の実際的飼養条件下で推定した. 1期と2期ではミネラルおよびビタミンを補足した市販後期用人工乳にカゼインとコーンスターチを組合わせて, 飼料中の粗蛋白質 (CP) 含量とリジン含量が, それぞれ, 14-26%および0.96-1.93%になるように調整した5種類の飼料を供試した. 3期および4期では, トウモロコシを主体とする基礎飼料に大豆粕とコーンスターチを組合わせ, CP含量 (リジン含量) を, 各期でそれぞれ, 11-23%(0.60-1.32%) および8-20%(0.42-1.14%) に調整した5種類の飼料を用いた. また, いずれの飼料でもリジンが第1制限アミノ酸になるようにした. 豚のCPに対する反応は, 実際にはリジンに対する反応であるとの前提のもとに, 1日増体量 (DG), 飼料要求率および血漿中尿素窒素濃度を指標として, 折れ線モデルへのあてはめによってリジンの要求量を求めた. 1) リジン要求量 (飼料中%) の推定値には指標による差はほとんどみられず, 3者を平均すると, 1, 2, 3および4期で, それぞれ, 1.43, 1.42, 0.86および0.73%となった. また, 飼料中の可消化エネルギー含量 (DE) あたりで示すと, それぞれ, 4.39, 4.24, 2.87および2.37mg/kcalDEとなった. 2) 1日に必要なリジン量は, それぞれ, 6.5, 11.1, 15.3および19.6gと推定され, その点でのDGの推定値は, それぞれ, 0.338, 0.583, 0.834および0.912kgであった. これらの値から, 1kgの増体に必要なリジン量は, それぞれ, 19.4, 19.1, 18.4および21.5gと算出された. 3) 以上の結果から, リジンの要求量は, 飼料中含量あるいはエネルギー含量あたりで示した場合には, 子豚の体重あるいは日齢によって大きく変動するが, 増体あたりのリジン要求量はほぼ一定であり, 約20g/kg増体であることがわかった. この数値を用いることにより, 実際の子豚のDGや飼料中のエネルギー含量に応じた, きめ細かいリジン要求量の設定が可能となる.
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