前報1)と同じ方法で,マウスおよびモルモツト摘出精管の運動性ならびに薬物に対する感受性の部分的差異を調べ,あわせて精管と精のうの運動性の比較を行なつた。
さらに同様の事柄について,去勢ラツトの精管と精のうを用いて実験した。その結果,
1. モルモツトの精管,精のうは自発運動を発現しやすく,これは薬物に対する感受性がマウスやラツトよりも高い2)という事実とともに,モルモツトの付属性器官の運動性が高いことを物語つている。
2. マウスでは,アセチールコリン(Ach)およびアドレナリン(Adr)に対する精管の部位による感受性の差異が,ラット精管と似ていて,睾丸側が尿道側よりも高いが,モルモツトでは特にAchに対するこのような差異は見られなかつた。
3. Achに対する感受性を精管と精のうについて比較すると,マウスでは,精のうは精管睾丸側よりも低く,尿道側とほぼ同じで,モルモツトでは両器官の間にほととんど差はなく,いずれもラツトの場合と趣を異にしている。Adrに対しては,ラツトの精管と精のうとの関係に似ていて,精管睾丸側と精のうの感受性はほぼ同じであつた。塩化バリウムに対する感受性は,マウスでは精のうが低く,10-4g/ccの高濃度でも反応はすべて陰性であつた。モルモツトにおいては,かかる差異は認められなかつた。
4. 去勢ラツトの精管のAchに対する感受性は,両部分とも正常群よりも高いが,ことに尿道側で著しく,もはや部分的差異は認められなかつた。また精のうにおいては,去勢による変化が明きらかでなく精管の場合と異なつているが,去勢ラットの精のうはなお精管よりも感受性が大であつた。
Adrに対するこの関係は,正常群におけると同様で,これはこの薬物に対するラツト精管の感受性が去勢によつても変化しないという以前の結果4)を強調するものである。
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