日本畜産学会報
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79 巻, 2 号
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一般論文
  • 川田 智弘, 福井 えみ子, 吉澤 緑
    2008 年 79 巻 2 号 p. 173-183
    発行日: 2008/05/25
    公開日: 2008/11/25
    ジャーナル フリー
    肥育牛の脂肪交雑を生体で客観的に推定するために,脂肪交雑基準(BMSナンバー)ごとの超音波診断画像の特性を画像特徴量として評価し,枝肉のBMSナンバーとの比較を行った.出荷直前の黒毛和種肥育牛56頭を,測定位置を胸最長筋と周辺組織との位置関係により決定して超音波測定したところ,枝肉実測値との間に胸最長筋面積で0.98(P < 0.01)の相関係数が得られた.この超音波診断画像の特定領域をテクスチャー解析して画像特徴量を算出し,BMSナンバーとの関係を比較したところ,胸最長筋領域の画像特性と肉質との間に非線形的相関が見られ,同一画像上における胸最長筋と周辺領域との画像特徴量は異なる傾向が見られた.このことから,胸最長筋と僧帽筋との画像特徴量の差分および胸最長筋面積を説明変数,BMSナンバーを目的変数として重回帰分析を行ったところ,重相関係数0.75(P < 0.01)が得られ,超音波診断における肉質の客観的推定が可能であることが証明された.
  • 大澤 剛史, 日高 智, 宝寄山 裕直, 加藤 貴之, 上舘 信幸, 口田 圭吾
    2008 年 79 巻 2 号 p. 185-192
    発行日: 2008/05/25
    公開日: 2008/11/25
    ジャーナル フリー
    北海道内の子牛市場ならびに枝肉市場で取引された,黒毛和種去勢牛の子牛市場出荷時体重と格付ならびに画像解析形質間の遺伝的関連性を調べることを目的とした.北海道内の子牛市場で取引され格付記録と枝肉横断面画像を持つ黒毛和種去勢牛805頭を分析に用いた.子牛市場時成績として子牛市場出荷時体重,格付形質として枝肉重量,ロース芯面積,ばらの厚さ,皮下脂肪厚,歩留基準値およびBMSナンバー,画像解析形質としてロース芯の脂肪面積割合,全体的な粒子のあらさおよび最大粒子のあらさについて分析を行った.また,過肥の影響をみるために格付形質ならびに画像解析形質の分析には子牛市場出荷時体重を子牛市場出荷時日齢で除した日齢体重 (kg/日) を6つのサブラクス(0.8,0.9,1.0,1.1,1.2および1.3 kg/日)に分類し,母数効果として含め分析を行った.子牛市場出荷時体重の直接および母性遺伝率は,0.15 ± 0.07および0.12 ± 0.07であった.子牛市場出荷時体重と格付形質間の直接遺伝相関は,ロース芯面積,皮下脂肪厚,歩留推定値およびBMSナンバーで負の値が推定された(-0.76~-0.08).画像解析形質との直接遺伝相関も,すべて負の値が推定された(-0.70~-0.34).さらに,脂肪交雑において1.0 kg/日付近の日齢体重が最も望ましい値であることが示唆された.子牛市場出荷時体重の改良を行う場合,これら形質との遺伝的関連性について注意が必要である.
  • 大澤 剛史, 日高 智, 加藤 浩二, 口田 圭吾
    2008 年 79 巻 2 号 p. 193-201
    発行日: 2008/05/25
    公開日: 2008/11/25
    ジャーナル フリー
    黒毛和種の発育形質,飼料利用形質,枝肉格付形質およびロース芯の画像解析形質間の遺伝的関連性について分析した.分析には間接検定材料牛1,492頭を用いた.発育形質は,肥育開始時の体重や体高など6形質,飼料利用形質は,濃厚飼料摂取量や要求率など4形質,枝肉格付形質は,BMSナンバーなど6形質,画像解析形質は,“全体の粒子のあらさ”や“細かさ指数”など6形質を用いた.BMSナンバーと各発育形質および各飼料利用形質間で,低いあるいは無の遺伝相関(-0.13~0.16)が推定されたが,“全体の粒子のあらさ”および“細かさ指数”と各発育形質間の遺伝相関は,それぞれ0.17~0.37および-0.29~0.06が推定された.“全体の粒子のあらさ”および“細かさ指数”と濃厚飼料摂取量間の遺伝相関は,それぞれ0.41および-0.23が推定され,それらと要求率間においては,それぞれ-0.16~-0.07および0.19~0.25が推定された.したがって,発育性や飼料効率が良い個体は,あらい脂肪交雑粒子が増加し,細かい脂肪交雑粒子が減少する遺伝的関連性が示唆された.
  • 阿部 隼人, 増田 豊, 鈴木 三義
    2008 年 79 巻 2 号 p. 203-209
    発行日: 2008/05/25
    公開日: 2008/11/25
    ジャーナル フリー
    初産分娩月齢と3産までの経産牛繁殖形質ならびに生産形質間について,AIREML法を用いた2形質アニマルモデルにより,遺伝的パラメータを推定した.記録は,(社)北海道酪農検定検査協会に集積された繁殖ならびに乳期記録,および(社)日本ホルスタイン登録協会北海道支局に集積された血統記録である.計算機の能力の制約からすべての記録を同時に分析することは困難であったため,牛群単位の無作為抽出により10万記録程度のサブセットを10個生成し,各サブセットに対し分析を行なった.遺伝率は,初産分娩月齢に対し0.22,経産牛繁殖形質に対し0.03~0.05と推定された.初産分娩月齢と経産牛繁殖形質との遺伝相関は絶対値で0.2を上回らなかった一方,生産形質との遺伝相関は2産以降で-0.3から-0.4と比較的高かった.2産以降の生産形質との好ましい関連から,初産分娩月齢の改良による長期的な生産性の向上の可能性が示された.
  • 宮地 慎, 大下 友子, 青木 康浩, 秋山 典昭
    2008 年 79 巻 2 号 p. 211-219
    発行日: 2008/05/25
    公開日: 2008/11/25
    ジャーナル フリー
    妊娠末期の乳牛における採食量と採食行動の関係を明らかにするため,分娩前37-31日(-5週),23-17日(-3週)および9-3日(-1週)の自由採食量,採食行動および消化管滞留時間を測定した.ホルスタイン種乳牛10頭を2群に分け,分娩予定日の45日前から分娩日までイネ科牧草サイレージ(GS)主体飼料(GS区)あるいはGS区のGSの25%をトウモロコシサイレージに代替した飼料(CS区)を自由採食させた.いずれの項目においても給与飼料による差はなかった.自由採食量は分娩3日前まではほぼ一定で推移した(13.4 kgDM/日).採食期(ミール)回数は-1週で最も多く(P < 0.05),この時ミールサイズは小さくなる傾向であった(P < 0.1).また,1ミールあたりの平均継続時間は,-1週が-5週より短かった(P < 0.05).1日の反芻時間,反芻期数および継続時間は分娩前時期による影響はなかった.第一胃および全消化管内滞留時間は,-1週が-5週に比べ短かった(P < 0.05).
  • 芦原 茜, 吉岡 豪, 今枝 紀明, 八代田 真人, 大谷 滋
    2008 年 79 巻 2 号 p. 221-226
    発行日: 2008/05/25
    公開日: 2008/11/25
    ジャーナル フリー
    哺乳期のビタミンA給与量制限がブタの筋肉内脂肪蓄積に及ぼす影響について調査した.雌子豚10頭を2区に分け,生後3日齢から28日齢の哺乳期間中,養分要求量を満たす量を給与する区(対照区)とビタミンAのみ対照区の1/5量給与した区(低VA区)の2区に分けて授乳させ,生後28日齢でと畜した.低VA区の増体量は対照区とほぼ等しかった.また,低VA区の総血中脂質と筋肉内脂肪含量は対照区よりも低かった(P < 0.001,P < 0.01).哺乳期におけるVA摂取量不足は,発育に影響を及ぼさずに,血清中脂質画分とIMF含量を低下させた.以上から,生後3日齢から28日齢のブタにおける哺乳期のビタミンA給与量制限は,筋肉内脂肪蓄積を減少させることが示唆された.
  • 芦原 茜, 吉岡 豪, 今枝 紀明, 八代田 真人, 大谷 滋
    2008 年 79 巻 2 号 p. 227-234
    発行日: 2008/05/25
    公開日: 2008/11/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,ブタの筋肉内脂肪蓄積に影響を及ぼす要因を探索するために,同一の環境条件下で飼養し,かつ父方半兄弟である供試豚(n = 151 去勢雄n = 73,雌n = 78)を作出したところ,胸最長筋中の筋肉内脂肪含量が1から10%に広範囲に分離した.そこで,この分布の高低10%に相当する個体を抽出し,筋肉内脂肪含量が高い個体(HF群 : 去勢雄n = 7 ; 8.1 ± 1.6(%),雌n = 8 ; 5.5 ± 0.8(%))と低い個体(LF群 : 去勢雄n = 7 ; 2.9 ± 0.2(%),雌n = 8 ; 2.1 ± 0.3(%))間で,IMF含量と有意な相関が認められた発育成績,胸最長筋肉重量,筋肉内脂肪細胞の体積と数を比較し,筋肉内脂肪含量に関連する形質を探索した.その結果,HF群の生時体重はLF群よりも有意に軽く(P <0.05),体重115 kg到達日齢はHF群がLF群より有意に長かった(P < 0.05).また,HF群の胸最長筋の筋肉重量はLF群よりも有意に低い(P < 0.05)値であった.一方,HF群の筋肉内脂肪細胞の数および体積はLF群より有意に多かった(P < 0.05).これらのことから,飼養条件が同一で,父方半兄弟である供試豚の筋肉内脂肪蓄積は,生後の発育遅延および筋肉発達の抑制と関連があることが示唆された.
技術報告
  • 山本 朱美, 古谷 修, 小堤 恭平, 小川 雄比古, 吉栄 康城
    2008 年 79 巻 2 号 p. 235-238
    発行日: 2008/05/25
    公開日: 2008/11/25
    ジャーナル フリー
    畜産臭の臭気指数を市販ニオイセンサ指示値から簡易に推定する目的で,におい識別装置による臭気指数相当値と市販ニオイセンサ指示値との関係を検討した.ウシ,ブタ,ニワトリについて,畜舎臭と堆肥舎臭の採取および糞尿と堆肥の臭気の調製を行い, 115点のサンプル臭気のにおい識別装置による臭気指数相当値およびニオイセンサ指示値を測定した.におい識別装置の臭気指数相当値(Y)とニオイセンサ指示値(X)の折れ線モデルへの当てはめにより,X = 144,Y = 20.8を変曲点とする2本の回帰直線,Y = 0.094X+8.1(r2 = 0.47,RSD = 3.1,X ≦ 144)およびY = 0.029X+16.7(r2 = 0.73,RSD = 2.2,145≦X)が得られた.この結果から,供試した畜種および臭気の発生源にかかわらず,得られた2つの回帰式により,「市販ニオイセンサ,XP-329III」を用いて臭気指数が精度良く推定できると考えられた.
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