ピアノ弦は,響板に対して垂直に振動を始めるが,次第に回転運動となる。この現象を説明するため,著者らは弦,駒,響板から成る等価回路モデルを提案している。本論文は,このモデルが実際のピアノにおける弦振動を表すことを検証し有効性を示したものである。対象はピアノ低音部の1本弦とし,実測した物性値を適用した数値シミュレーションの結果と,高速度カメラで撮影した2次元振動とを比較した。ピアノ弦振動は,打弦から時間が経過すると,響板に対して傾いた平面内の振動となる。本論文では,この傾きの角度が弦の垂直方向と水平方向の結合の度合いにより定まることを示し,弦の2次元振動が直交する振動成分に分離されることを示した。