日本畜産学会報
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40 巻, 9 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • I. 生肉における動物種鑑別法の検討
    小沢 総一郎, 矢野 幸男, 阿部 恒夫, 茂木 一重
    1969 年 40 巻 9 号 p. 357-362
    発行日: 1969/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    1. 豚,牛,めん羊,馬,家兎,まぐろ肉の生理食塩水抽出液を抗原とし,家兎または山羊に,静脈注射法,およびアジュバント法により免疫し,種特異的抗血清を得た.
    2. 抗血清によっては類属反応を認めたが,吸収することにより特異的な抗血清とすることができた.
    3. 免疫反応法として,沈降反応重層法とOUCHTERL-ONY法を比較した結果,反応の安定性および術式の平易さによって後者の方が良好な結果が得られ,本方法による肉種鑑別は可能であることが明らかにされた.
    おわりにあたり,御指導御校閲を賜わりました農林省畜産試験場細田達雄部長を始め,御鞭撻戴きました社団法人日本食肉加工協会川辺長次郎会長ならびに高坂和久課長に深謝の意を表します
  • I. マウスおよびラットにおける血清エステラーゼの電気泳動像について
    萬田 正治, 大木 与志雄
    1969 年 40 巻 9 号 p. 363-369
    発行日: 1969/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    血清エステラーゼの多型現象とその遺伝,生理的調節機構を明らかにすることを目的として,まず澱粉ゲル電気泳動法によって分離検出されるマウスおよびラットの血清エステラーゼ泳動像について検討を行なった.
    1) 血清エステラーゼ泳動像は系統および個体によってかなりの変異を示すが,マウスでは13本,ラットでは14本の活性帯が分布する.
    2) Es-14およびEs-15活性帯がラットでは認められ,系統および個体的にかなり変異している.マウスで検出されるEs-6活性帯は,ラットでは認められない.
    3) 血清エステラーゼの活性濃度は系統および性によってかなり変異しているが,マウスおよびラットともにEs-3~4活性帯は全体の約40~50%,Es-13活性帯が9~17%を占めていて,血清エステラーゼの主要な活性帯を構成している.
    4) 基質特異性および阻害剤の実験結果からEs-9, Es-13, Es-14およびEs-15活性帯はpseudo-choline sterase, Es-10活性帯はaliesteraseならびにEs-3~4活性帯はalbuminと結合しているarylesteraseの一種であることが判明した.
  • IV.牛乳中への移行
    阿部 又信, 神立 誠
    1969 年 40 巻 9 号 p. 370-375
    発行日: 1969/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    牛乳のN成分合成における尿素態Nの利用性と,その利用経路について検討した.その結果次の知見を得た.
    1. 本実験において投与した尿素態Nのうち,6日間に12.9%が牛乳中に移行した.
    2. 投与した尿素は主として反芻胃内微生物による蛋白質合成を経て,牛乳蛋白質合成に利用される.
    3. 尿素から生じたNH3の一部は,第一胃壁から吸収されて体内N代謝過程に入り,その結果生じた何らかのN化合物も体N成分合成に利用される.その際,牛乳中においては,このようなN化合物は主として残余N区分に移行する.
    4. このN化合物はアミノ酸ではなく,主としてグルタミンなどのアマイドであると考えられる.
    終りに,実験遂行上多大の協力をいただいた日本配合飼料株式会社研究場長西川哲三郎博士,ならびに同場第6研究室長粂野交雄博士に感謝の意を表する.また,質量分析は秋山陽子氏の協力を得た.付記して感謝する.なお,本報告は阿部又信が東京大学大学院農学系研究科に提出した学位論文の一部である.
  • III. 腎臓の組織学的所見
    粟原 昭三
    1969 年 40 巻 9 号 p. 376-383
    発行日: 1969/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    テレフタール酸を0.3-2.0%添加した飼料で鶏雄雛を生後8日目より60日間飼育し,TPAの腎臓におよぼす影響の有無について2回の試験で調べた.
    試験1はロックホーン種を用いて腎臓重量および腎小体と尿細管の組織に関して検討した.TPA投与後50-60日目における腎臓重量およびその体重比では相異は認められなかった.この試験の腎小体と尿細管の直径においてはTPA投与により差異は認められず,また組織学的所見にも病理学的変化と考えられる所見は得られなかった.
    試験2は白色レグホン種を用いて腎臓重量と腎小体の直径および組織学的観察をTPA投与後10-60日につき行なったが,TPA添加量の多少および経過日数によって重量ならびに組織学的変化は認められなかった.
    両試験により本試験に使用したTPA添加量の範囲内では鶏腎臓の変化は見られず,TPAの毒性は認められなかった.
    終りに臨み懇篤なる指導と校閲の労をとられた名古屋大学教授保田幹男博士に心から拝謝する.また本試験の実施にあたり御援助を戴いた帝人株式会社西沢佶博士,武田薬品工業株式会社に感謝の意を表する.
  • II. イオン交換樹脂により分画した各区分における窒素分布
    大山 嘉信
    1969 年 40 巻 9 号 p. 384-389
    発行日: 1969/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    草サイレージの水溶性区分における未同定窒素の性質を知るために,Amberlite IRC-50およびDowex 50を用いて,サイレージ抽出液を,酸性および非電解質区分(A区分),塩基性区分(B区分),および両性区分(C区分)に分け,おのおのについて全窒素,揮発性塩基態窒素および第1級アミノ態窒素を定量した.
    供試サイレージとしては,良質のもの3点,劣質のもの2点,および低水分サイレージ2点を用いた.
    その結果,良質サイレージにおいては,水溶性全窒素(WTN)の61~63%がC区分に存在し,29~34%がB区分,6~9%がA区分に認められた.未同定窒素の大部分はC区分にあった(WTNの10~19%).
    劣質サイレージにおいては,WTNの41~42%がC区分に,53~54%がB区分に認められ,C区分の未同定窒素はWTNの7~10%であった.
    低水分サイレージにおいては,WTNの約67%がC区分,23~24%がB区分に認められ,C区分の未同定窒素はWTNの約18%であった.
    各サイレージとも,A区分(WTNの5~11%)の大部分は未同定窒素であった。
    B区分の不揮発性成分として,高水分の良質および劣質サイレージには,リジン,アルギニンの他にヒスタミンおよびチラミンが認められたが,低水分サイレージではアミンはほとんど存在しなかった.
    C区分のアミノ酸の種類を調べた結果から,未同定窒素化合物の大部分は,ニンヒドリン反応陰性の両性化合物であると推定された.
  • 渡辺 泰邦, 久馬 忠, 村井 秀夫
    1969 年 40 巻 9 号 p. 390-397
    発行日: 1969/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    反芻動物の第一胃内において,給与脂質は第一胃内微生物によって加水分解をうけ,また不飽和脂肪酸は水素添加されて飽和脂肪酸となることが認められている.このような第一胃内においての脂質のうける変化の過程を明確にするために,不飽和脂肪酸としてのリノール酸を多量に含むトリグリセリドを給与した場合の,第一胃内における脂質各分画とその脂肪酸組成の経時変化を,飼料給与後24時間にわたって検索した.
    やぎ2頭を実験に用い,乾草と大豆粕を基礎飼料とし,リノール酸含量が77%のサフラワー油を50g加えて実験飼料とした.実験飼料給与後,24時間にわたって9回,第一胃フィステルより第一胃内容を採取して総脂質を抽出した.抽出総脂質は薄層クロマトグラフ法によってトリグリセリド,モノおよびディグリセリド,FFA,リン脂質,コレステロールおよびコレステロールエステルに分画して,それぞれ定量した.各脂質分画についてその脂肪酸組成をガスクロマトグラフ法によって定量した.その結果は次のように要約される.
    1. 第一胃内においてトリグリセリドはきわめて短時間内に加水分解をうける.このために第一内にはFFAがもっとも多く存在した.またモノおよびディグリセリドが常に9-10%存在してほとんど経時変化がなかった.リン脂質,コレステロールも常にほぼ一定量が存在した.
    2. FFA分画にはオレイン酸が給与後6時間にすみやかに増加し,以後やや減少した.ステアリン酸が12時間後まで徐々に増加し,以後その量を保った.リノール酸はFFA分画に6時間以後ほとんど存在せず,遊離した脂肪酸はただちに水素添加をうけることが認められた.トリグリセリド分画の脂肪酸組成は採食9時間以後はほぼ一定の組成を示し,トリグリセリドへの水素添加は比較的少なく,またその脂肪酸組成より9時間以後のトリグリセリドには菌体脂質の存在が推察される.
    3. モノおよびディグリセリドの脂肪酸組成は,サフラワー油の給与によっても一定の変化はなく,トリグリセリドの部分水解によるこれらの蓄積はほとんどないと考察される.常時10%前後存在するモノおよびディグリセリドは菌体脂質に由来するものであることが推定される.
    4. リン脂質はその脂肪酸組成より主として菌体脂質であることが考えられる.リノール酸およびオレイン酸がリン脂質分画においてFFA分画とほぼ同樣の傾向を示すことより,これらの菌体リン脂質へのとりこみが推定される.
  • I. 2つの異なる栄養条件下で体重大に選抜された マウス系統の酵素活性および血清蛋白
    山岸 敏宏, 水間 豊, 西田 周作, 河本 泰生
    1969 年 40 巻 9 号 p. 398-403
    発行日: 1969/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    同一の基礎集団から18および13%蛋白質飼料の下で体重大へ選抜された2系統マウスの間の生理的差異を明らかにしようとしてこの実験を行なった.
    各系統の成長中の血清蛋白および酵素活性の変化は,8,11および12世代の雄マウスを用いて調査した.8世代のマウスについて血清蛋白濃度,血清および肝臓のアルカリホスファターぜ活性度(Al-P)と肝臓のコハク酸脱水素酵素活性度(SDH)を,11および12世代のマウスについては血清蛋白濃度と血清Al-Pをそれぞれ測定した.
    各系統マウスを,かってそれぞれが選抜された時と同じ栄養条件下で飼育したとき,2系統の間の成長中の血清蛋白濃度および酵素活性を比較すると,8世代では血清および肝Al-P活性と肝SDH活性に,11世代では血清蛋白濃度と血清Al-P活性にそれぞれ著しい差が認められた.しかしながら,12世代において2系統マウスをそれぞれ26,18,13および9%蛋白質飼料下で26日間飼育したとき,分散分析の結果では2系統の間で血清蛋白濃度および血清Al-P活性に差はなく,また系統と飼料の間の相互作用も認められなかった.
    以上の結果から,これら2系統の間の生理的差異は測定時の栄養条件の違いによって生じたものと考えられた.
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