澱粉ゲル電気泳動法によって分離検出されるマウスの血清エステラーゼ電気泳動像の系統的差異を検討するため,CFW, CF#1, C
3H/He, C
57BL/6, DDK, NC, KK,RR, AA, DSDの11系統マウス(農林省家衛試)を用いて分析を行ない,次ぎの結果を得た.
1. マウスの血清エステラーゼ電気泳動像は陽極側に11~13本のzoneが検出されるが,Es-2, Es-3, Es-5, Es-6, Es-7, Es-8, Es-9, Es-12, Es-13のzoneはいずれの系統にも認められた.
2. albumin領域に出現するEs-4 zoneはすべての系統の中でC
57BL/6においてのみ検出されず,この系統は他の系統マウスに比べて特異的なエステラーゼ泳動像を示した.
3. 同一のzoneにおいてもその活性濃度にかなりの系統的差異が認められた.血清cholinesterase isozymeのEs-9 zone活性はかなりの個体変異を有するが,雌では大別して高活性(CFW, CE#1, SS, RR),中間活性(DDK, C
57BL/6, NC, AA)および低活性(KK, C
3H/He, DSD)のグループに,雄では雌に比べて相対的に低いが,高活性(CFW, CF#1, KK, DDK, C
57BL/6)と低活性(SS, RR, NC, AA, C
3H/He, DSD)のグループに分けられた.同じく血清cholinesteraseisozymeの主要成分であるEs-13 zone活性においても系統的差異が認められた.しかしEs-9とEs-13 zone活性の系統的差異に平行関係は見られなかった.
4. aliesteraseの1タイプであるEs-10 zoneの活性に顕著な個体および系統的差異が認められた.いずれの系統も個体変異が大きいが,大別して高活性,(CFW, CF#1, C
3H/He, DDK),低活性(DSD, NC, RR, C
57BL/6)および陰性(SS, AA, KK)のグループに分けられた.またEs-10 noneの活性は雌に比べて相対的に雄では高い傾向にあることが認められた.
5. 易動度のもっともはやい陽極端のEs-1 zone活性に系統的差異が認められ,CF#1の酵素活性はもっとも高い値を示した.RR, CFW, C
57BL/6, NC, AA, DSD, DDK, SSでは低活性を有し,KK, C
3H/Heについては本酵素活性は検出されなかった.またEs-1 zoneの活性は雌に比べて雄で高い傾向にあることが認められた.
6. 血清エステラーゼ電気泳動像には,起源の異なる外国系統と国産系統の間に特徴ある差異は認められないが,Es-10 zoneについてはいづれの外国系統においても検出されるのに対して,国産系統ではKK, AA, SSのように検出されない系統も存在し,かなり変異していることが認められた.
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