日本畜産学会報
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41 巻, 2 号
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  • II. 塩蔵成牛皮の施塩前の時間経過および保存条件がクロム革の性状におよぼす影響
    岡村 浩, 白井 邦郎, 川村 亮
    1970 年 41 巻 2 号 p. 55-62
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    成牛皮について剥皮後施塩までの時間経過と塩蔵時の保存条件が塩蔵皮およびクロム革の性状におよぼす影響を検討した.既報2)の子牛皮の場合には剥皮後24時間経過施塩の塩蔵皮ではその影響が顕著に認められたのに対し,本実験の成牛皮では,24時間経過後の施塩ではその影響は認められず,48時間経過後施塩の塩蔵皮で鮮度低下が認められ,クロム革の機械的性質,特に銀面の強さが低下した.輸入塩蔵皮(成牛)の保存は,30°C程度の温度では3カ月間保存してもその変化は余り顕著ではないが,これに高湿(RH 86~96%)が加わると鮮度低下が明白に認められ,クロム革の性質,特に引裂強さ,銀面の強さの低下が顕著となる.前報5)で,塩蔵成牛皮では保存中の乾燥の影響は少ないことと考え合せると,塩蔵成牛皮の保存は高温•高湿を避けるよう努めるべきである.
  • IV. 緬羊血球と他種動物血球間の共通性抗原について
    赤木 昭治, 渡辺 誠喜, 鈴木 正三
    1970 年 41 巻 2 号 p. 63-68
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    動物血球間の共通性抗原に関する研究は過去多くの研究者によって試みられ,馬血球については,KRAH u. WITEBSKY2),吉原5),加賀山1),細田4)らによって詳細に報告されている.すなわち,吉原は各種動物血球であひるを免疫して得た抗血清を,加賀山は山羊を免疫して得た抗血清を,また細田は,鶏を免疫して得た抗血清を用い馬血球と種々の動物血球の抗原間の相互関係について試験し,それぞれ共通性抗原の存在を報告している.
    また鈴木3)は山羊血球免疫鶏血清により,馬,牛,豚,兎,モルモットの血球および人のB型血球との間の共通性抗原について検索しており,渡辺6)は兎に鶏血球を免疫し,鶏血球と他の動物血球間の共通性抗原について報告している.
    しかし,これまでの報告には,緬羊血球からみた他の動物血球との共通性抗原に関する詳細な成績はない.そこで著者らは,緬羊,山羊および牛血球相互間ならびに緬羊血球とその他2,3種動物血球間の共通性抗原につき試験した.
  • III. 体重大および小に選抜されたマウス系統の成長中の血清アルカリホスファターゼと血清蛋白
    山岸 敏宏, 河本 泰生, 水間 豊, 西田 周作
    1970 年 41 巻 2 号 p. 69-74
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    体重大および小に選抜されたマウス系統の成長中の血清アルカリホスファターゼ(Al-P)と血清蛋白を測定した.実験には大•小系および無選抜の対照系の11および12世代の雄マウスを用いた.
    1. 選抜系と対照系のマウスの間で体重の差は3週令で明らかに認められ,52週令においてもその差は維持された.
    2. 大系および対照系は小系よりも血清Al-P活性が3-16週令において著しく低く,血清蛋白では2-52週令において著しく高かった.大係は対照系よりも血清蛋白が3-4週令で著しく低く,逆に6-10週令では著しく高かった.血清Al-P活性は成長の全過程で大系と対照系は同じように変化した.体重に対する血清Al-P活性と血清蛋白の回帰には3系統の間に有意の差はなかった.
    3. 3系統マウスが3週令以後それぞれ3つの異なる栄養条件下で26日間飼育されたとき,分散分析の結果によれば大系および対照系は小系よりも血清Al-P活性は低く,血清蛋白は高く,有意の差が認められた.しかしながら,大系と対照系の間には体重に顕著な差があるのにかかわらず.それらの値には差は認められなかった.
    このように体重の小さい方向へ12世代まで選抜されたマウス系統は,無選抜の対照系に比べて血清Al-P活性が著しく高く,血清蛋白濃度が著しく低かった.このことは,これらの生理的差異が体重小への選抜と密接に関連していることを示唆している.なおこれらの生理的形質の体重選抜に対するasymmetrical responseについても考察を加えた
  • VI. 牛乳および人乳の糖脂質含量
    森 茂, 土肥 達, 井上 芳子, 佐々木 敬卓, 鈴木 徳信
    1970 年 41 巻 2 号 p. 75-79
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    1. 牛乳および人乳の糖脂質量を測定するため,透析,酸沈殿,FOLCH抽出,珪酸カラムクロマトグラフィーによる方法を組合せ糖脂質試料を精製した,その試料をそのままかFOLCH法による水洗処理あるいはセファデックス処理した試料につき糖とりん含量を測定した.糖はガラクトースを標準としてAnthrone法により測定し,得られた値を4.6倍して糖脂質含量とした.りんはFISKE & SUBBAROW法により測定し,24.5倍してりん脂質含量とした.
    2. 牛乳および人乳を48時間透析することにより,牛乳では99%,人乳では97%の乳糖が除去された.
    3. 牛乳糖脂質含量は未処理で12.3mg%,水洗処理で10.1mg%で,未処理と水洗処理とではあまり差がなかった,
    4. 人乳糖脂質は未処理で15.4mg%,水洗処理で6.9mg%,セファデックス処理で7.8mg%と水洗およびセファデックス処理することにより減少した.この結果から,人乳糖脂質中には糖含量の高い糖脂質が多く含まれているのではないかと推定された.
  • II. マウスにおける血清エステラーゼ電気泳動像の系統的差異
    萬田 正治, 大木 与志雄, 猪 貴義, 西田 周作
    1970 年 41 巻 2 号 p. 80-87
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    澱粉ゲル電気泳動法によって分離検出されるマウスの血清エステラーゼ電気泳動像の系統的差異を検討するため,CFW, CF#1, C3H/He, C57BL/6, DDK, NC, KK,RR, AA, DSDの11系統マウス(農林省家衛試)を用いて分析を行ない,次ぎの結果を得た.
    1. マウスの血清エステラーゼ電気泳動像は陽極側に11~13本のzoneが検出されるが,Es-2, Es-3, Es-5, Es-6, Es-7, Es-8, Es-9, Es-12, Es-13のzoneはいずれの系統にも認められた.
    2. albumin領域に出現するEs-4 zoneはすべての系統の中でC57BL/6においてのみ検出されず,この系統は他の系統マウスに比べて特異的なエステラーゼ泳動像を示した.
    3. 同一のzoneにおいてもその活性濃度にかなりの系統的差異が認められた.血清cholinesterase isozymeのEs-9 zone活性はかなりの個体変異を有するが,雌では大別して高活性(CFW, CE#1, SS, RR),中間活性(DDK, C57BL/6, NC, AA)および低活性(KK, C3H/He, DSD)のグループに,雄では雌に比べて相対的に低いが,高活性(CFW, CF#1, KK, DDK, C57BL/6)と低活性(SS, RR, NC, AA, C3H/He, DSD)のグループに分けられた.同じく血清cholinesteraseisozymeの主要成分であるEs-13 zone活性においても系統的差異が認められた.しかしEs-9とEs-13 zone活性の系統的差異に平行関係は見られなかった.
    4. aliesteraseの1タイプであるEs-10 zoneの活性に顕著な個体および系統的差異が認められた.いずれの系統も個体変異が大きいが,大別して高活性,(CFW, CF#1, C3H/He, DDK),低活性(DSD, NC, RR, C57BL/6)および陰性(SS, AA, KK)のグループに分けられた.またEs-10 noneの活性は雌に比べて相対的に雄では高い傾向にあることが認められた.
    5. 易動度のもっともはやい陽極端のEs-1 zone活性に系統的差異が認められ,CF#1の酵素活性はもっとも高い値を示した.RR, CFW, C57BL/6, NC, AA, DSD, DDK, SSでは低活性を有し,KK, C3H/Heについては本酵素活性は検出されなかった.またEs-1 zoneの活性は雌に比べて雄で高い傾向にあることが認められた.
    6. 血清エステラーゼ電気泳動像には,起源の異なる外国系統と国産系統の間に特徴ある差異は認められないが,Es-10 zoneについてはいづれの外国系統においても検出されるのに対して,国産系統ではKK, AA, SSのように検出されない系統も存在し,かなり変異していることが認められた.
  • 田先 威和夫, 柴田 章夫, 伊藤 敏男
    1970 年 41 巻 2 号 p. 88-96
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    羊において,第4胃以下でのカゼインの利用性をしらべるために,第1胃フィステルを装着したコリデール種雌羊を用いて窒素出納試験を行なった.
    基礎飼料として,乾草およびフスマ,スターチ,ミネラル等よりなるペレットを給与した.得られた結果を示すと次のごとくである.
    (1) 第4胃内カゼイン注入時における飼料窒素の蓄積量は,経口給与時のそれよりも高かった.また,カゼイン窒素の蓄積率も同様であり,これは,第4胃注入カゼインの利用性が高いことを示すものである.
    (2) 経口的に与えたカゼインの消化率は,スターチ含量の高い飼料を与えることにより低下した.第4胃内注入カゼインの消化率は,単胃動物のそれと類似し,経口投与の場合よりも高かった.これは,反芻動物の第4胃以下での消化能力が,単胃動物のそれと類似していることを示している.
    (3) カゼインを経口(第1胃内)投与すると,第1胃内アンモニア濃度は著しく高まり,これにスターチを同時投与すると,アンモニア濃度の低下がみられた.しかし,カゼインを第4胃内に投与したときには,第1胃内アンモニア濃度の上昇はみられなかった.これらのことから,反芻動物における第1胃内バクテリア作用の大きさを推論でき,また,飼料窒素の利用性を推定する目安ともなり得ると考えられる.
  • I. 赤クローバー汁液中の遊離モノアミノジカルボン酸の消長について
    大島 光昭
    1970 年 41 巻 2 号 p. 97-103
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    前報7)において,牧草汁液の醗酵の際に蛋白質の分解にともないほとんどの遊離アミノ酸が増加するにもかかわらず,グルタミン酸およびアスパラギン酸はむしろ減少することを報告した.本実験は,赤クローバー汁液中に添加した14Cモノアミノジカルボン酸の変化を経時的に追跡することによって,その減少の様相を明らかにしようとしたものである.その結果,両アミノ酸は下記のごとくまったく異なる経過をたどることが判った.
    1. インキュベイト開始後4時間以内に14Cアスパラギン酸の比放射能の10%が有機酸画分に移行し,1日後には20%に達した.14Cグルタミン酸においては,初期にはわずかの比放射能が有機酸画分に移行したが,以後しばらくは増加がみられなかった.しかし14Cグルタミン酸をインキュベイト開始後3日目に添加すると,末期には18%の移行が認められた.
    2. pHの低下にともない14Cアスパラギン酸の比放射能の一部が糖画分に移行し,2日目に約4%に達したが,以後有意の増減はなかった.14Cグルタミン酸添加における糖画分は詰込直後1%に達し,以後は0.3から0.5%の間にあった.
    3. 14Cグルタミン酸はインキュベイト開始と同時に大きな脱炭酸作用をうけ,4時間以内に14Cグルタミン酸は添加量の20%に減少し,2日後には添加したすべての14Cがグルタミン酸以外の成分に移行した.なお,そのうち約80%はγ-アミノ酪酸中に見出された.インキュベイト開始後3日目に添加した14Cグルタミン酸の変化は非常に小さかった.一方,14Cアスパラギン酸においてはインキュベイト開始時の脱炭酸はグルタミン酸に比し小さかったが.以後徐々に脱炭酸が進行し14C-α-アラニンが増加した.
  • 田先 威和夫, 横田 浩臣
    1970 年 41 巻 2 号 p. 104-109
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    鶏腸管からのアミノ酸吸収に対し,ビタミンB6の関与を調べるため,阻害物質を使用し,一連の実験を行なった.
    体重1.6~2.5kgの5ヵ月令ロックホーン雄を開腹し,メッケル憩室の前20cmおよび後10cmの間の腸管を用い,田先⋅高橋のin situ還流装置によってアミノ酸吸収を測定した.
    用いたアミノ酸は,L-ロイシン,L-メチオニンおよびグリシンで,それぞれ単独に,10mMの濃度になるようにKrebs-Ringer phosphate bufferに溶解し,還流液とした.ビタミンB6の拮抗物質であるdeoxypyridoxineを投与した鶏では,アミノ酸吸収阻害作用は,L-ロイシンおよびL-メチオニンでは同程度であったが,グリシンでは阻害作用は少なかった.
    還流液中のL-メチオニン濃度を変化させ,これにdeoxypyridoxineを投与して,L-メチオニンの吸収速度に対する阻害作用を観察した.その結果,L-メチオニンが10mMの場合にのみ阻害作用が認められたが,2mMおよび20mMの濃度ではこれが認められなかった.
    以上の事実から,鶏腸管からのL-アミノ酸吸収には,ビタミンB6が関与するものと考えられる.
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