日本畜産学会報
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41 巻, 9 号
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  • I. ルーメン内に投与したVFA-14Cの乳成分への移行性について
    箭原 信男, 西部 慎三
    1970 年 41 巻 9 号 p. 435-438
    発行日: 1970/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ルーメンVFAsの乳成分への移行性について,VFA1-14Cをトレーサーとして解析を試みた.
    ホルスタイン種の泌乳牛6頭を供試し,通常の飼料構成および管理のもとで,ルーメン内容を同等化しつつ,トレーサーを飼料と共に採食させ,3日間の搾乳々成分へ移行した14Cを計測した.
    14Cの移行程度は,乳脂肪に対しC2〓C4>C3(P<0.01),乳糖に対しC3>C2〓C4(P<0.05)の順位であったが,カゼインに対しては有意な順位が認められなかった.
    乳成分へ移行した全14Cの約90%は,トレーサー投与後24時間以内の搾乳中に出現した.
    各乳成分の14C比放射能は,乳牛個体および泌乳量の多少にかかわらずほぼ一定しており,したがって,14Cの移行程度は泌乳量にほぼ正比例する傾向にあることが認められた.
  • II. 毒性物質の検索
    甲賀 清美, 渡辺 紘, 持田 芳照, 平塚 佐久二
    1970 年 41 巻 9 号 p. 439-444
    発行日: 1970/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    TFの元素分析を行なった結果,含有As, Hgの毒性関与は否定された.しかし,TFおよびその不〓化物のCl含量は異常に高く,かつ不〓化物のアルミナカラムクロマトグラフィーによる有毒フラクションF2に,不〓化物のClが集中したことより,塩素化合物がTFの毒性に関与する可能性が推定された.
    また.F2フラクションには,ガスクロマトグラフィーにより,熱媒体として使用されていた塩素化ビフェニール市販品(KC 400)の存在が確認され,しかも,Cl含量の測定からTF中のClの大部分は,KC 400に由来する結果となった.
    以上の事実から,TFの毒性は,含有されるKC 400にもとづくとの可能性がきわめて強くなった.
  • I. 酵母の選択およびそれを用いたチーズの製造実験
    津郷 友吉, 張 堅二
    1970 年 41 巻 9 号 p. 445-452
    発行日: 1970/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    牛乳蛋白分解力の強い酵母を選択し,これを乳酸菌スターターと共に用いてチーズ内部にまで繁殖させ,約3週間で熟成が完了する風味良好な半硬質チーズを製造することができた.
    嫌気培養で牛乳蛋白質を強く分解する乳糖発酵酵母としてS. fragilisおよびCan. pseudotropicalisが選択された.これら酵母の乳蛋白分解力に対する培養温度の影響を調べた結果,2株の酵母とも20°Cで培養した時最大の牛乳蛋白分解力を示したのでこれらを用いたチーズの熟成は20°Cで行なった.しかし,S. fragilisは15°Cで培養した時にも牛乳蛋白分解力が20°Cの半分程度あるため,この酵母を用いたチーズは15°Cでも熟成を行なった.
    熟成中におけるチーズの熟成率および遊離チロシン含量の増加はこれら酵母の使用により明らかに促進された.従って,チーズ中にこれらの酵母が存在することにより,チーズ熟成中の蛋白分解作用が促進されることが知られた.酵母を用いたチーズの酸度は乳酸菌のみを用いたチーズのより低くなった.乳酸菌のみを用いたチーズは3週間の熟成でも酸味のみが強く,旨味を全く示さないが,酵母を用いたチーズは3週間の熟成で組織がなめらかになり,良い風味を示した.またこれら酵母を用いて熟成したチーズにはアルコールや香気性エステルのにおいが認められた.これまでの製造実験の結果によれば,最も安定した製品を得るためにはS. fragilisを用いて15°Cで熟成を行なうのが適しているように思われた.
  • 田中 桂一
    1970 年 41 巻 9 号 p. 453-458
    発行日: 1970/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    1) 泌乳中のホルスタイン種乳牛2頭を供試し,色々な量の鱈油を給与した際,乳量,乳成分,乳脂肪の脂肪酸組成および第1胃内溶液のVFAモル濃度におよぼす影響を検討した.実験は6つの処理期から成っている.すなわち1) 無添加期,2) 50g添加期,3) 150g添加期,4) 300g添加期,5) 450g添加期,6) 無添加期.おのおのの処理期間は14日間である.
    2) 乳量は450g添加期,また乳脂率は300gおよび450g添加期にそれぞれ減少した.
    3) 乳脂肪の脂肪酸組成は300gおよび450g添加期に4:0から18:0までの飽和脂肪酸は減少し,16:1,18:1,18:2,20:1および20:4の不飽和脂肪酸は増加した.
    4) 第1胃内溶液の酢酸:プロピオン酸比は300gおよび450g添加期で減少した.
  • XVI. ローズグラスの乾草とサイレージの化学的成分と飼料価値におよぼす窒素施用水準の効果について
    三秋 尚
    1970 年 41 巻 9 号 p. 459-464
    発行日: 1970/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    わが国の暖地で有望なローズグラス(カタンボラ種)の乾草あるいはサイレージの飼料価値が充分明らかでないので,1番刈り乾草および2番刈りサイレージの飼料価値を,第一生長期に施用した窒素0,10,30,60kg(10a)の4施用水準との関連で検討した.
    1. 1番刈り乾草の各窒素施用水準の平均DCP含量は6.9±1.8%,TDN 含量は49.9±0.8%(何れも乾物中),またCa, P, Mg含量はそれぞれ0.52±0.02,0.41±0.05,0.24±0.02%であった.窒素の施用量の増加でDCP含量が漸増し, TDN含量は変化しなかった.
    2. 同一施肥条件下のメヒシバ乾草とローズグラス乾草を比較すると,DCPおよびTDN含量ともメヒシバ乾草がすぐれた.
    3. 2番刈リサイレージの平均DCPとTDN含量はそれぞれ3.1±0.9; 44.1±3.4%であった.またCa,P, Mgの平均含量はそれぞれ0.58±0.14,0.36±0.04,0.25±0.05%であった.窒素施用量の増加でDCP含量が増加し,TDN含量が減少した.
    4. サイレージの品質はきわめて不良で,その原因として材料の可溶性炭水化物の低含量,粗繊維の高含量および茎葉が粗剛でサイロ詰めこみの時の空気の排除の困難性などが考えられる.
  • 伊出 優
    1970 年 41 巻 9 号 p. 465-470
    発行日: 1970/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    反芻動物においては,蛋白質の消化の結果生ずるアンモニアの一部は,第1胃粘膜から吸収される.このアンモニアは第1胃粘膜であまり代謝をうけることなく,肝に運ばれるものと考えられる.したがって,肝におけるアンモニアの解毒は,反芻動物においてはきわめて重要な問題と考えられる.本報では,門脉からNH4Clを山羊に負荷した場合の肝からのアンモニアのクレアランスについて調べ,得られた結果から,山羊肝のもつアンモニアの解毒能を推定した.またアンモニアの解毒にあずかる諸酵素の活性を調べ,その役割を解毒能との関連において考察した.
    体重15~30kgの成山羊に,麻酔下で,異なる量のNH4Clを門脉から負荷し,そのあと経時的に肝静脉から採血し,負荷に伴う肝静脉のアンモニアの濃度の増加を観察した.その結果,負荷量と肝静脉のアンモニアの増加量とのあいだには密接な関係があり,一定量以下の負荷では,肝からのアンモニアのクレアランスの増加はみられないことがわかった.これらの実験から,山羊肝のもつアンモニアの解毒能は,おおよそ40μmoles/min/kg•体重であろうと考えられた.
    肝について,尿素生成の場合に制限因子のひとつになると考えられるArginine synthetase,ならびにグルタミンとグルタミン酸の生成反応と触媒するGlutamine synthetaseとGlutamic dehydrogenaseのおのおのの活性を調べた.その結果,Arginine synthetaseの活性から,山羊肝のもつ尿素生成能は,体重1kg当りで32.3μmoles/minと推定された.またGlutamine synthetaseの活性は,Arginine synthetaseの活性と比較すると低く,グルタミンの生成能は,体重1kg当りで9.5μmoles/minであろうと考えられた.また山羊肝は,Glutamic dehydrogenaseの高い活性を示した.アンモニア解毒におけるこの酵素の役割については明確に評価しえないが,ArginineおよびGlutamine synthetaseの活性から考えると,山羊肝はアンモニアをグルタミンよりも尿素により多く代謝する能力をもつものと考えられた.
  • 中村 良
    1970 年 41 巻 9 号 p. 471-475
    発行日: 1970/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    肉の軟かさにおよぼす強制運動の影響を調べるために,屠殺前に運動させた鶏について筋肉のpHおよびATP含量の変化を経時的に測定することにより,死後変化の状態を調べると共に肉の軟かさの測定を行なった.その結果,強制運動を行なうと,死直後の筋肉Glycogenは減少し,究極pHは上昇し,熟成後の肉は軟かいことが確かめられた.しかし,同時に測定した保水性の値は,運動させない場合とほぼ等しいことが認められ,強制運動による肉の軟かさの増加は,高い究極pHによる保水性の増加によるものではないことが推定された.
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