日本畜産学会報
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46 巻, 3 号
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  • 渡部 英一
    1975 年 46 巻 3 号 p. 133-139
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ニワトリの消化管内で産生される揮発性脂肪酸(VFA)量と,その構成についての動態を把握する必要性から,産卵を開始してから15ヵ月を経過した単冠白色レグホーン種メスを実験動物として,消化管各部位内容物中に存在するVFAをガスクロマトグラフィーを用いて測定し,各部位におけるVFAの分画などについて検討した.その結果,消化管内VFA濃度は部位により差異がみられた.すなわち,盲腸部位が最も高くついで結直腸,〓のうの各部位であり以下,空回腸前部,同後部,十二指腸下向部,同上向部とつづき筋胃が最も低かった.また,全消化管内VFA濃度は114.62±3.28mg/gwet WT.であった.とくに,盲腸,結直腸,〓のうの各部位と十二指腸下向部から空回腸後部にいたる各部位との間では,VFA濃度にかなりの差異がみられた.消化管内VFAとしては,各部位共に酢酸(C2),プロピオン酸(C3),iso-酪酸(iso-C4),n-酪酸(n-C4),iso-吉草酸(iso-C5),n-吉草酸(n-C5)が存在することが認められた.各消化管内VFA分画のうちで,量的に最も多く存在しているものはC2でありついでC3, n-C4, n-C5, iso-C5, iso-C4の順序であった.これから,各消化管内に存在するVFAの中で主体を占めているものはC2,C3, n-C4であることが明らかになった.各VFA分画では盲腸と結直腸,〓のうを除く各部位との間に,各部位のC2濃度とC2以外の各酸濃度との間に有意差がありまた,総VFA濃度では盲腸,結直腸および〓のうの各部位と他部位との間に有意差が認められた.消化管内に存在するVFA量は〓のう,盲腸,結直腸,空回腸前部ならびに同後部の各部位に多い傾向を示した.
  • 小原 嘉昭, 新林 恒一, 米村 寿男
    1975 年 46 巻 3 号 p. 140-145
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    自家配合した低蛋白質飼料を基礎飼料として,これに尿素を0%,3%,5%レベルでそれぞれ添加した尿素飼料を試作し,これらの飼料を第一胃フィステル装着めん羊に給与した時の第一胃内性状の変化を採食後経時的に観察し,大豆カスを蛋白質源とした濃厚飼料給与時の場合と比較して尿素の蛋白質代替飼料としての有効性について検討した.第一胃内pHの採食に伴う経時的変化は,慣用飼料区,低蛋白質飼料区では差がなく採食後減少し,その値を採食後6時間目まで持続した.尿素添加区では採食後1時間目まで採食前の値(pH7.10前後)を維持し,その後減少した.VFA濃度は慣用飼料区が4区中で最も高く,低蛋白質飼料区に切換えると減少した.しかし尿素添加区では低蛋白質飼料区と比較してVFA濃度の増加が観察された.VFAモル比は慣用飼料区では酢酸の比率が高かった.低蛋白質飼料区では酢酸の比率が低下しプロピオン酸の比率が増加した.しかし尿素を添加すると酢酸が増加する傾向があった.NH3濃度は低蛋白質飼料区で採食後経時的に減少し6時間目で最低値を示した.また尿素飼料区では採食後著しい増加を示し,その後急激に減少した.血清尿素レベルは,慣用飼料区,低蛋白質飼料区,3%尿素飼料区,5%尿素飼料区で,それぞれ18.4±0.9(平均値±S.D.), 7.7±3.7., 16.8±1.8, 22.1±2.5mgN/dlで摂取窒素量に従って明らかに差が見られた.
  • 新林 恒一, 小原 嘉昭, 米村 寿男
    1975 年 46 巻 3 号 p. 146-153
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    1) はじめ,めん羊を低蛋白質の実験配合飼料と乾草で飼い,次いで飼料の量は同じくして,実験配合飼料に対し3%おにび5%になるように尿素を添加した2種の飼料で3週間ずつ順次に飼養した.各飼養期の末日に第一胃液および血液を採取した.第一胃液の遊離アミノ酸濃度は採食前に比べて採食後は急激に減少した.採食前の遊離アミノ酸濃度は尿素添加量の増量に伴って増加した.遊離アミノ酸中アルギニンは非常に少ないか見出されなかった.2) 第一胃壁からのアミノ酸の吸収をみるために,第一胃静脈血と動脈血の遊離アミノ酸濃度の差を検討した.その結果,大部分のアミノ酸は吸収されないが,わずかにアスパラギン酸とグルタミン酸の吸収が示唆された.3) 尿素添加量の増加に伴う血漿遊離アミノ酸濃度の変化を検討した.その結果,総アミノ酸量変化しなかったが,必須アミノ酸がわずかに減少し,非必須アミノ酸が増加した.したがって,その比はわずかながら減少した.尿素添加によってグリシン濃度が顕著に増加し,アラニンは減少した.4) 飼料のアミノ酸組成と第一胃内容物のアミノ酸組成を比較すると,後者がリジン,メチオニン,イソロイシンが高く,シスチン,ヒスチジンなどが低かった.蛋白質の転換が起っていることが示された.
  • 信国 喜八郎, 古賀 脩
    1975 年 46 巻 3 号 p. 154-160
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    本実験は甲状腺の除去あるいは抗甲状腺剤の投与によって,その機能を抑制した雄雛の生存ならびに成長におよぼす環境温度の影響を検討する目的で行ったものである.実験Iとして,5°C,20°Cおよび35°C区を設定し,それぞれの温度区に対照群,サイロキシン投与群(甲状腺除去雛に19日齢から37日齢まで毎日1回サイロキシンを筋肉内注射),サイロキシン無投与群(甲状腺除去),0.075%サイオユラシル投与群(偽手術雛に19日齢から37日齢まで経口投与)および0.1%サイオユラシル投与群(同様の手術,投与期間)の5群を設け,28日齢から10日間,温度処理を行い,その間の雛の成長および生存について記録した.実験IIとして,5°Cおよび20°C区を設け,それぞれの温度区に対照群,サイロキシン2回投与群(甲状腺除去雛に温度処理開始1日前および直前の2回サイロキシンを筋肉内注射),サイロキシン連日投与群(甲状線除去雛に温度処理開始1日前より毎日1回サイロキシンを筋肉内注射)の3群を設置し,28日齢から温度処理を開始し,雛の生存期間について観察した.その結果,実験Iでは,甲状腺機能を抑制した雛の成長は5°Cおよび20°C区で著しく抑制され,抑制の程度は5°C区の方が20°C区より顕著であった.一方,35°C区では前2区ほど明らかな甲状腺機能の抑制効果は認められなかった.また死亡雛は5°C区のサイロキシン無投与群およびサイオユラシル投与群にのみ生じ,とくにサイロキシン無投与群では雛の大多数量温度処理後1日以内に死亡した.これに対し,サイオユラシル投与群の死亡数は少なく,両者の間に明らかな差が認められた.実験IIで,甲状腺除去雛に温度処理開始の1日前および直前の2回サイロキシンを投与すると,5°C処理後の生存期間は5~7日間と延長され,また処理1日前から毎日1回投与をつづけた雛は死亡しなかった.以上の結果から,甲状線ホルモンは雛の成長に関連をもち,とくに低温環境下においてはその影響が著しく,また低温で処理した初期の段階から生命の維持に重要な役割を果しているものと推察される.
  • 山本 禎紀, 伊藤 敏男, 伊藤 久孝, 松本 千秋, 三村 耕
    1975 年 46 巻 3 号 p. 161-166
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    乳牛•育成豚につづいて環境温•湿度条件に対する産卵鶏の体感温度を定めた.25~37°Cの高温域における産卵鶏の乾球温度(以下DBTと略す)に対する呼吸数の増加率は18~22(回/73)/DBT•1°Cと大きく,これに比べ湿球温度(以下WBT)上昇につれての増加率は5~9(回/分)/WBT•1°Cと小さかった.WBTに高い感受性を示しためん羊や乳牛と異なり,産卵鶏の呼吸数増加反応はDBTに高い感受性を示し,育成豚に近い反応を呈した.DBTとWBTの種々の組合せ条件下で得た平均呼吸数を,両温度に重み付けをした体感温度で表示したところ,0.7~0.8•DBT+0.3~0.2•WBTが適当であると判断された.これまでに得た乳牛0.35•DBT+0.65•WBT,育成豚0.6•DBT+0.4•WBTなどの成果と比較検討し,体感温度表示の意義について考察した.
  • 山本 禎紀, 藤井 正裕, 三村 耕
    1975 年 46 巻 3 号 p. 167-171
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    白色レグホン系交雑種産卵鶏5羽(体重,平均1.78kg)について,濃硫酸を用いた除湿•捕湿装置を使用し,環境温度15-35°Cの範囲で,呼吸数と蒸発量の関係を調べた.呼吸数の増加が認められなかった30°C付近まで蒸発量にも変化はなく,少なくともこの温域までは,体表からの蒸発は増加しないものと考えられた.蒸発量の増大は呼吸数の増加と一致して現われ,両者の関係は回帰直線として示すことができた.すなわち,5羽の平均値で示すと,Y=0.0178X+1.98 (r=0.97,P<0.001).ただし,Yは総蒸発量g/hr, Xは呼吸数回/分であり,いずれの個体においても高い相関関係を示した.実験条件は低湿度条件にあったが呼吸数20,100,200および300回/分での1羽当たりの蒸発量は,それぞれ2.3,3.8,5.5および7.3g/hrで,蒸発による放熱割合はそれぞれ約15,24,36および47%と算定された.呼吸数と蒸発量の関係は,呼吸数の増加に伴う呼吸型の変化などから,見かけ上高い相関関係を示しており,温熱環境を体感温度として表示するための生理的指標として呼吸数を用いることの妥当性を示すものと考えられた.
  • 張 勝善, 吉野 梅夫, 山内 邦男
    1975 年 46 巻 3 号 p. 172-179
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    卵白のアルカリによるゲル化について,卵白とその蛋白質成分のアルカリによる粘度変化を調べた結果,粘度増加またはゲル化の起こるのは卵白のほか,オボアルブミンとコンアルブミンであった.粘度の増加またはゲル化はpH,蛋白質濃度または温度が高くなるにつれ著しくなり,とくにそれらが一定の値を過ぎると粘度の増加が急激に起こる.また,pH,蛋白質濃度,温度が同じ場合は,卵白はオボアルブミンより粘度が高くまたはゲル化しやすいことが認められた.卵白の蛋白質成分間の相互作用を調べるために,オボアルブミン,コンアルブミン,オボムコイド,リゾチーム,オボムチンなどを卵白中に存在する割合に準じて混合し,一定pHおよび温度で粘度を測定した結果,オボアルブミンとその他の蛋白質成分の混合により粘度が著しく増加した.しかし,コンアルブミンとオボムコイド,リゾチームまたはオボムチンの混合,あるいはオボムコイド,リゾチーム,オボムチンの相互混合では粘度の増加は認められなかった.アルカリによりオボアルブミンよりも卵白がゲル化しやすいのは,卵白ではオボアルブミンを中心とする各成分の相互作用が存在し,単独ではゲル化しないオボムコイド,リゾチーム,オボムチンなどがゲル生成に関与しているためと思われる.
  • 野田 寛, 渡辺 裕
    1975 年 46 巻 3 号 p. 180-184
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    76頭の正常分娩母馬の血清中には凝集素,非定型抗体の存在するものがあるが,溶血素は全く存在しない.また過去あるいは最近に黄疽子馬を生産した母馬,また溶血素と非定型抗体の存在から黄疽子馬生産の可能性のある母馬41頭の血清中にはA1,C, P1, Q, E2,に対するものと思われる抗体(溶血素)が単一または複合した形で存在し,また母馬と子あるいは父馬との間にこれらの血液型に対する違和がみられた,P1を除いてこれらの血液型の出現頻度はかなり高い.これらの溶血素は初めて黄疽子馬を生産した場合は出産後急速に消滅するが,2回あるいはそれ以上の既応症のある場合はかなり長期間残存している.またこれらの血液型と発症産次との間にもある種の関係がみられる.このことは標準血清作製時の同種免疫の際にみられる抗原性の差と関連がある,著者らの血液型分類用抗血清はいまだ単一化されていないものがあるので,初生駒の溶血性黄疽と血液型との関係についてはいまだ問題が残されているが,黄疽子馬生産を予知する方法は出産直前に母馬がその子馬に対する溶血素を所有しているかどうかということである.
  • 小笠原 利保, 古賀 脩, 西山 久吉
    1975 年 46 巻 3 号 p. 185-191
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    白色レグホーン種産卵鶏の卵殻腺部内腔に対してリン酸溶液を注入し,その影響について検討した.排卵後卵が卵殻腺部に到達して約3時間後の時期に,オルトリン酸溶液(1.0ml)を注入した場合,卵殻腺部に存在していた卵の放卵が早期に誘起され,注入後30分以内に大部分の卵が軟卵として放出された.このリン酸溶液による放卵誘起率は,注入する溶液のリン酸濃度の増加にともなって上昇した.すなわち,50,100,200mMリン酸溶液注入区において,それぞれ40.0,70.0,90.9%であった.しかしながら,注入するリン酸溶液のpHの変化(6.0ないし8.0)ならびにその注入溶液のNa+とK+の濃度比の変化は,放卵誘起率にほとんど影響をおよぼさなかった.さらに,卵殻線部に硬い卵殻を持つ卵が存在する時期にリン酸溶液を注入した場合,その放卵誘起効果は軟卵が存在する時期のものより高かった.また,ピロリン酸およびATP溶液の注入によっても,きわめて強い放卵誘起効果が認められた.これらの結果から,放卵直前の卵殻腺液あるいは卵殻腺部内腔におけるリン酸濃度の急激な増加が,卵殻腺部からの卵の放出と関連している可能性が考えられた.
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