日本畜産学会報
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52 巻, 3 号
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  • 日野 常男
    1981 年 52 巻 3 号 p. 171-179
    発行日: 1981/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ルーメンプロトゾアに対するモネンシンの作用を24時間の培養実験により検討した.プロトゾアの生存に与える影響から,毒性効果を調べたところ,Entodinium属は4μg/ml程度,またDiplodinium属,Ophryoscolex属および全毛類は8μg/ml程度の濃度で,明らかに生存を阻害することが認められた.次に,毒性が認められた水準以下の濃度で,発酵パターンに対する影響を調べたところ,貧毛類の場合は0.5~1μg/ml以上,また全毛類の場合は1~2μg/ml以上で,モネンシン濃度が高くなるにつれて,VFA生成量が減少したが,特に酪酸の減少が大きかったため,酢酸とプロピオン酸のモル比率が増加する形となった.ぎ酸のモル比率は,貧毛類の場合は増加し,全毛類の場合は減少した.また,H2はモネンシンにより著しく減少した.一方,乳酸は,貧毛類の場合は顕著な変化が認められなかったが,全毛類の場合は1~2μg/mlのモネンシンにより,有意に増加することが示された.これらの結果から,モネンシンを投与したルーメン内においては,プロトゾア数が減少する場合だけでなく,数に大きな変化がない場合でも,プロトゾアに与えるモネンシンの作用は,プロピオン酸のモル比率の上昇とメタン生成の低下という方向に,ルーメン発酵を導く要因の一つとなる可能性があると推察される.
  • 坂内 良二, 星野 貞夫
    1981 年 52 巻 3 号 p. 180-189
    発行日: 1981/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    フィードロット方式で飼養されているホルスタイン種雄去勢肥育牛群から鼓脹症を頻発する2頭(鼓脹症区),発症をみない健康牛2頭(対照区)を選び,独房に収容し,市販のペレット状肥育用配合飼料,ヘイキューブ,グラスサイレージを1日2回給与する粗飼料多給で50日間飼養した後,上記の配合飼料と稲わらを1日2回,飽食できる程度の量を与える濃厚飼料多給に切り替え,35日間飼養養し,この間の第一胃内揮発性脂肪酸(VFA),アンモニア濃度,pH,プロトゾアと細菌の数と種属構成を測定した.粗飼料多給から濃厚飼料多給への切り替えによって,対照区では総酸量に変化はみられなかったが酢酸濃度は減少し,構成割合では酢酸が減少し,プロピオン酸が増加し,酢酸:プロピオン酸(A/P)比が低下した.鼓脹症区では総酸,酢酸,プロピオン酸濃度が減少し,構成割合では酢酸が減少し,酪酸が増加し,A/P比は変らなかった.対照区の比較では,総酸,プロピオン酸,酪酸濃度が低く,A/P比は高かった.pHは対照区では,飼料切り替えによって低下したが,鼓脹症区では変らず,対照区より高いpH値が得られた.アンモニア濃度は,両区とも飼料切り替えによって低下したが,鼓脹症区の値の方が高かった.プロトゾアは飼料切り替えによって,対照区では減少する傾向,鼓脹症区は変らないか,増加する傾向がみられたが,両区に顕著な差はなかった.第一胃液1ml中の細菌数は,対照区では飼料切り替えによって増加したが,鼓脹症区は変らなかった,菌群割合は飼料切り替えによって,対照区では4(グラム陽性球菌),19(グラム陽性小型桿菌)が減少し,13(グラム陰性小型桿菌)が増加し,鼓脹症区では1(グラム陰性球菌),13,14(グラム陰性中型桿菌)が増加,4,19が減少した,両区の比較では,鼓脹症区で1,4が多く,13,14が少なかった.粗飼料多給時には切り替え後10日目に鼓脹症区の1頭に軽度の発症が認められただけで,発症は大巾に抑制された.しかし,濃厚飼料多給に切り替えると,鼓脹症区では10,13,16,23,27,31,35日目に発症が認められた.
  • 勝川 秀夫
    1981 年 52 巻 3 号 p. 190-193
    発行日: 1981/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    マウス顎下腺のテストステロン(T)おこび5α-ジヒドロテストステロン(DHT)の濃度の週齢に伴う変動を,ラジオイムノアッセイ法を用いて調べた.T濃度は出生時に著しく高いが,その後3週齢まで急速に低下した.DHT濃度も出生時に比較的高い値を示したが,1週齢ではいったん低下し3週齢で再び高くなった.以後,両アンドロジェンとも7週齢まで濃度の高まる傾向が見られたが,10週齢では再び低下した.出生時から10週齢までの期間ではT濃度は1.40から12.6ng/g組織,またDHT濃度は1.10から8.64ng/g組織の範囲にあった.比較のため血清および脳におけるTならびにDHT濃度の週齢に伴う変動についても調査した.
  • 高坂 哲也, 新村 末雄, 石田 一夫
    1981 年 52 巻 3 号 p. 194-197
    発行日: 1981/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    排卵前36時間から1時間までのハムスターの胞状卵胞卵子には,内腔の電子密度の低い小胞状の滑面小胞体が細胞表層部に常に散見されたが,排卵前10時間の卵子に限って,このほかに,内腔の電子密度の高い管状の滑面小胞体が細胞表層部と核周辺部に多数出現し,さらに,有窓層板が細胞表層部に認められた.内腔の電子密度の高い管状の滑面小胞体は有窓層板と連絡しており,有窓層板から形成されることが推察された.これらの小器官の出現はLHサージの時期に一致しており,卵子に取り込まれたLHの処理に関与していることが考えられた.
  • 古谷 修, 杉本 亘之, 高橋 正也, 亀岡 暄一
    1981 年 52 巻 3 号 p. 198-204
    発行日: 1981/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    豚における高せん維質飼料の栄養価を推定するため,胃および小腸での消化を模倣したin vitro法にナイロンバッグ法(NB法)による大腸での消化過程を加えた方法(in vitro-NB法)について検討した.1)この方法は,約0.2gの試料とin vitro法と同様にペプシン溶液および小腸液で人工的に処理した後,残渣をナイロンバッグに詰め,これを小腸末端に装着したカニューレに投入,糞とともに回収して,残渣の乾物量から消化(消失)率を求める方法である,供試試料は,品種および刈取時期が異なる7種のとうもろこしサイレージと,ルーサンミール,麸および稲わらから酸およびアルカリ処理によって調製した3種の粗せん維物質で,これらについてin vitro法およびin vitro-NB法で乾物消化率を測定し,また,とうもろこしサイレージの場合には,その値を豚によるin vivoの値と比較した.2) とうもろこしサイレージのin vitro法による消化率は平均43.8%となり,in vitro-NB法(61.0%)およびin vivo法(61.8%)よりも明らかに低かった(P⟨0.01).in vitro-NB法とin vivo法では,とうもろこしサイレージ7点のうち1サンプルを除けば,各試料で類似した値をえた.in vivoの乾物消化率がin vitro-NB法よりも著しく高くなった試料を除いた6点についての相関をみると,in vitro法とin vivo法で0.98,in vitro-NB法とin vivo法で0.99といずれもきわめて高かった.3) ルーサンミール,麸および稲わらから調製した粗せん維物質のin vitro法による乾物の消化率はいずれもほとんどゼロであった.in vitro-NB法での消化率はそれぞれ21.2,19.3および7.2%となり,日本標準飼料成分表に記載のあるルーサンミール(アルファルファミール)および麸の粗ぜん維の消化率,それぞれ,23および21%と極めて近似した値となった.
  • 長谷川 信, 松井 和貴, 氷上 雄三, 水野 利雄
    1981 年 52 巻 3 号 p. 205-211
    発行日: 1981/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    前報において鶏脂肪組織の脂質代謝はエストロジェンの影響下にあることが明らかにされたが,本実験では,このようなエストロジェンの作用機構を解明する目的で,3週齢の白色レグホーン種雄雛の腹腔内脂肪組織を用いて,その脂質代謝に対するエストラジオール-17βのin vitroでの直接添加効果について検討を行なった.10-11~10-9M濃度のエストラジオール-17β添加は,ホルモン感受性リパーゼ活性及び[1-14C]酢酸の総脂肪酸への取り込みを有意に増加させ,[1-14C]酢酸のCO2への酸化分解を有意に減少させた.また,エストロジェン処理鶏血清の添加は,リポプロテインリパーゼ活性を有意に減少させた.以上の結果から,エストラジオール-17βは,生理的濃度において鶏脂肪組織におけるホルモン感受性リパーゼ活性,酢酸からの脂肪酸合成能及び酢酸のCO2への酸化分解能を,直接変化させることが示唆された.
  • 高橋 和昭, 秋葉 征夫, 松本 達郎
    1981 年 52 巻 3 号 p. 212-218
    発行日: 1981/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    成長中の鶏ヒナの脂質代謝におよぼす飼料中脂肪の量と質の影響について検討した.成長中の鶏ヒナに,代謝エネルギーと蛋白質の摂取量が同一となるように,低脂肪飼料(代謝エネルギー摂取量の5.5%が大豆油),ラード飼料(代謝エネルギー摂取量の5.5%が大豆油,27.3%がラード)ヤシ油飼料(代謝エネルギー摂取量の5.5%が大豆油,27.3%がヤシ油)を14日間給与した.ヤシ油飼料給与区の血漿中遊離脂肪酸濃度はラード飼料または低脂肪給与区より有意に増加した.脂肪酸およびグリセライド-グリセロールのin vitro合成能は,肝臓,脂肪組織および筋肉とも飼料中脂肪の量と質により影響されなかった.すべての飼料で,肝臓における脂肪酸合成能は脂肪組織や筋肉よりも高かった.脂肪組織における脂肪分解はヤシ油飼料給与により有意に増加した.以上のことから,飼料中脂肪の脂肪酸組成により脂肪合成能が変化しない原因について考察した.その結果,少なくとも本実験条件下では,飼料の大豆油に含まれていたリノール酸およびリノレン酸が脂肪合成能に対する主たる調節因子であると考えられた.また血漿中遊離脂肪酸濃度には必ずしもin vitroにおける脂肪合成とは相関がないことが示唆された.一方,ホルモン関与のない脂肪動員(basal lipolysis)は飼料中脂肪の脂肪酸により影響されることも示唆された.
  • 左 久
    1981 年 52 巻 3 号 p. 219-226
    発行日: 1981/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    めん羊の第一胃内容物の物理的性質が1日の採食パターン形成に果す役割を明らかにする目的で,時間制限給飼を行ない,採食行動の適応と第一胃内容物の堅さとの関係を検討した.第一胃フィステル装着めん羊4頭に1日1回3, 6, 12, 24時間給飼をラテン方格法に従って施し,ヘイキューブを給与した.第一胃フィステルに取付けたトルクメータで第一胃内容物の堅さを経時的に測定し,第一胃内飼料充満度の日周変動を推定した.採食,反芻,飲水行動は顎運動と飼槽の重量変化の記録から観察した.めん羊は給飼時間を制限されると,1回の採食の長さを伸ばし,採食速度をあげて1日採食量を維持しようとする傾向がみられた.しかし,1日採食量は給飼時間の短縮と共に減少し,1日反芻時間には変化がなかった.1日の採食行動の終了時に近いFSS到達時の第一胃内飼料充満度は,給飼時間が異なり1日採食量が変化しても同じ水準に維持されていた.その値は各めん羊にfistula feedingで満腹させた時の飼料充満度の約63%に相当した.これらのことから,時間制限給飼におけるめん羊の1日採食量の決定にはFSS時の飼料充満度が深く関与していることが示唆された.又,めん羊の1日の採食パターン形成は第一胃内容物の堅さの相対値である飼料充満度の変化によってよく説明できるものと思われた.
  • 加世田 雄時朗
    1981 年 52 巻 3 号 p. 227-235
    発行日: 1981/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    宮崎県都井岬にある約500ヘクタールの御崎牧場には,1980年夏現在85頭の御崎馬が生息しており,その内訳は種馬が9頭,雌馬が29頭,2歳以下の子馬が32頭,それに去勢馬が15頭である.1978年9月から1980年9月の間にこの御崎馬の群の構造について調査した.4月末から5月の初めに,1頭の種馬に1~7頭の雌馬とその子馬から構成された安定した群が形成され,その群の構成は繁殖シーズン後の10月まで変らなかった.全ての種馬と雌馬はこれらの群のいずれかに属した.冬には,夏に形成された群が種馬と1~2頭の雌馬の群,種馬と1~2頭の雌馬及びその子馬から構成された群あるいは雌馬とその子馬の群などの小群に分れた.しかし翌年の夏には分れた小群が集まって前年とほとんど同じ構成の群が形成された.冬に若い種馬の群や雌馬と子馬の群に2~3頭の去勢馬が加わることがあったが,夏はもちろん冬でも成熟した種馬と去勢馬が同じ群を作ることはなかった.一年を通じて去勢馬だけの群が形成され,その構成がほとんど変らないものもあった.種馬と雌馬及びその子馬から構成された群の大きさは,3~13頭の範囲で平均6頭であった.種馬と雌馬から構成された群13例中,1:1の構成が7例,1:2の構成が5例,1:3の構成が1例であった,雌馬と子馬から構成された群の大きさは,2~5頭の範囲で平均2.9頭であった.去勢馬だけの群の大きさは,1~6頭の範囲で平均3.2頭であった.
  • 坂内 良二, 星野 貞夫
    1981 年 52 巻 3 号 p. 236-238
    発行日: 1981/03/25
    公開日: 2008/03/10
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