フィードロット方式で飼養されているホルスタイン種雄去勢肥育牛群から鼓脹症を頻発する2頭(鼓脹症区),発症をみない健康牛2頭(対照区)を選び,独房に収容し,市販のペレット状肥育用配合飼料,ヘイキューブ,グラスサイレージを1日2回給与する粗飼料多給で50日間飼養した後,上記の配合飼料と稲わらを1日2回,飽食できる程度の量を与える濃厚飼料多給に切り替え,35日間飼養養し,この間の第一胃内揮発性脂肪酸(VFA),アンモニア濃度,pH,プロトゾアと細菌の数と種属構成を測定した.粗飼料多給から濃厚飼料多給への切り替えによって,対照区では総酸量に変化はみられなかったが酢酸濃度は減少し,構成割合では酢酸が減少し,プロピオン酸が増加し,酢酸:プロピオン酸(A/P)比が低下した.鼓脹症区では総酸,酢酸,プロピオン酸濃度が減少し,構成割合では酢酸が減少し,酪酸が増加し,A/P比は変らなかった.対照区の比較では,総酸,プロピオン酸,酪酸濃度が低く,A/P比は高かった.pHは対照区では,飼料切り替えによって低下したが,鼓脹症区では変らず,対照区より高いpH値が得られた.アンモニア濃度は,両区とも飼料切り替えによって低下したが,鼓脹症区の値の方が高かった.プロトゾアは飼料切り替えによって,対照区では減少する傾向,鼓脹症区は変らないか,増加する傾向がみられたが,両区に顕著な差はなかった.第一胃液1ml中の細菌数は,対照区では飼料切り替えによって増加したが,鼓脹症区は変らなかった,菌群割合は飼料切り替えによって,対照区では4(グラム陽性球菌),19(グラム陽性小型桿菌)が減少し,13(グラム陰性小型桿菌)が増加し,鼓脹症区では1(グラム陰性球菌),13,14(グラム陰性中型桿菌)が増加,4,19が減少した,両区の比較では,鼓脹症区で1,4が多く,13,14が少なかった.粗飼料多給時には切り替え後10日目に鼓脹症区の1頭に軽度の発症が認められただけで,発症は大巾に抑制された.しかし,濃厚飼料多給に切り替えると,鼓脹症区では10,13,16,23,27,31,35日目に発症が認められた.
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