屠殺前の温度環境の違いが鶉の肉質にどのような影響を与えるかを知るために,屠殺前に4種の異なった温度に置いた鶉の浅胸筋を用いて,pH値,保水力,タンパク抽出量,トランスミッション値,水分量,粗タンパク量,ATP量,グリコーゲン量,乳酸量,肉色および総色素量の11項目について測定を行った.また,各測定値は,くり返しのある二元配置分散分析およびTUKEYの多重比較法で統計処理を行ないその肉質の違いを検討した.その結果,高温区(40°C,1hr)のものではpH値(pH5.69)が低く,保水力(81.83)が悪く,トランスミッション値(72.76T%)が高く,肉色(L:33.62,aL:10.75,bL:8.59)も白っぽくなり,豚などにみられるPSE (Pale, Soft, Exudative)肉に近い肉質となっていた.また,低温区(4°C,2hr)の肉質はpH値(pH6.14)が高く,保水力(96.88)が良く,トランスミッション値(24.37T%)が低く,肉色(L:30.85,aL:12.89,bL:8.39)も赤味の強い高温区とは逆の肉質であることが認められた.一方,高→低温区(40°C,1hr→4°C,1hr)ではpH値(pH6.07),保水力(98.80),トランスミッション値(47.93T%)等が対照区(20°C恒温)や低温区の値に近くなったことから,一度高温状態に置かれた鶉でも,屠殺前に低温処理を行うことにより,その肉質をほぼ正常な状態にもどすことが出来た.
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