1. 平板型UFP-10限外〓過装置を用いて,加熱処理条件,〓過温度,pH,脂肪含量および〓過膜種(IRIS3038および3072)の限外〓過処理条件が,牛乳の透過液流束ならびに分画液の理化学的性状に及ぼす影響について検討した.2. 平均透過液流束は,殺菌条件,〓過温度および膜種の影響を受けた.濃縮倍率1.1倍時の透過液流束と濃縮倍率2および3倍までの平均透過液流束は高い相関を示した.3. 濃縮液のpHは,いずれの源過処理条件においても,濃縮によりほとんど変化しなかった.酸度の透過性画分比率は,殺菌温度および〓過温度の昇温ならびに供試牛乳のpH低下に伴ってやや上昇した.4. 膜透過性溶質の平均分子量は,〓過温度の上昇により増加したが,供試牛乳のpH低下により減少した.透過性非乳糖溶質の平均分子量はいずれの場合とも増加した.5. 濃縮液の粘度[η(cp)]は,濃縮倍率をNとしてη=A•exp (B•N
1.4)で表現された.濃縮に伴う増加率を表わすB値は,検討した全ての〓過処理条件の影響を受けて変化した.6. 濃縮液のレンネット凝固時間は,濃縮に伴って,未殺菌牛乳•10°C〓過では変化しなかったが,殺菌牛乳•15°C〓過で短縮し,逆にpH 5.8の牛乳で延長した.〓過温度50°Cでは一度短縮した後延長した.7. 濃縮液のカードテンション[CT(g)]は,濃縮倍率をNとして,CT=A•N
Bで表現された.濃縮に伴う増加率を表わすB値は,殺菌および脱脂により上昇し,膜種の変更(IRIS 3038→3072)により低下した.8. 濃縮液の130°Cにおける熱安定性は,濃縮倍率の上昇に伴って低下したが,〓過処理条件を変更しても,pH-熱安定性曲線のパターンは大きく変化しなかった.9. 乳清蛋白質の阻止係数は,85°C10分間殺菌牛乳およびIRIS 3072膜分画において低値となった,非蛋白質態窒素の透過性画分比率は,IRIS 3072で高率であった.
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