畜産の悪臭の主要成分のーつである低級脂肪酸(VFA)の畜産業からの発生状況を把握し,悪臭対策を確立するために現地調査を実施した.
VFAの分析は環境庁制定のアルカリ•ビーズ法を一部改変して行なった.現地調査は畜試の畜舎,家畜排泄物処理施設および周辺の養豚場2個所を主とし,適宜一般の畜舎施設の調査を加えた.管理がよく,スノコ,ニップル飲水器等を備えた採卵鶏舎内のVFAはプロピオン酸(C
3)でも2.4ppb以下と低く,環境も良好であった.ブロイラー鶏舎(新聞故紙敷料)では糞の堆積,湿潤化に伴い20.3ppmのアンモニアと共存して多量のVFA(n-酪酸,C
4で97.4ppb)がみられた.搾乳牛舎ではサイレージ給飼時にC
3やC
4が増加したが糞尿由来は少なかった.これに対し,肉豚舎では管理がよくてもVFAはやや高めであった.さらに周辺の豚舎の仔豚舎,肥育舎などではC
3,C
4は数十ppb,ときには各々170,131ppbに達し夏期ばかりでなく冬期でも高濃度であった.これらの豚舎構造は部分スノコ床構造でスクレーパ,オーガー搬送又は糞尿混合処理であった.一方床の管理のよいオガ屑豚舎では夏冬期ともVFAはC
3,C
4で5.9,2.2ppb以下と比較的低濃度であった.処理施設では豚糞発酵乾燥施設入口で高い例がみられたが,豚糞急速堆肥化物置場,堆肥化排気,堆肥盤,鶏糞発酵機室,同堆積場,岡発酵乾燥施設,汚水処理施設等では処理物を含めてVFAは僅かでC
3,C
4で2.9,1.5ppb以下であった.
以上,VFA等の臭気の発生には舎内管理だけでなく畜舎構造および施設が特に関連が深いという結果がえられた,同時に,生物学的処理過程で容易に除去されることも示唆された.
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