日本畜産学会報
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41 巻, 1 号
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  • I. 塩蔵皮の乾燥がクロム革の性状におよぼす影響
    岡村 浩, 白井 邦郎, 川村 亮
    1970 年 41 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    塩蔵子牛皮および塩蔵成牛皮を試料皮として,塩蔵皮の水分と,これにより製造されたクロム革の化学分析値,機械的性質および外観検査による品質との関連性をしらべ,塩蔵皮の保存中の乾燥がクロム革の性状におよぼす影響を検討した.この結果,子牛試料皮の含水量の減少は,1kg/mm2荷重時の伸び,銀面の機械的性質(7mm高の荷重,銀面われ時の荷重および高さ)に影響することが認められ,クロム革の外観検査による品質も著しく低下することを知った.これらの結果から,一般に塩蔵子牛皮の含水量は30%以上を保持することが望ましい.
    これに対し成牛試料皮の場合には,含水量と20%いったかなり強度の乾燥状態におかれても,1kg/mm2時の伸び,銀面の機械的性質に若干の影響を与えるが明瞭な変化ではなく,一般に塩蔵成牛皮は塩蔵子牛皮に比較して保存時の乾燥の影響は著しく少ないことを知った.
  • II. 亜鉛の吸収および代謝回転に及ぼす飼料中の亜鉛とカルシウム含量の影響
    斎藤 守, 松本 達郎
    1970 年 41 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    黄色とうもろこし,大豆粕およびカゼインを主体として調製した基礎飼料にZnSO4•7H2OとCaCO3を添加して6種の飼料区を設けた.すなわちZnについて標準Zn区(36ppm Zn)と高Zn区(100ppm Zn)の2群に分け,さらにCaについてそれぞれ低Ca区(0.3% Ca),標準Ca区(1.0% Ca)および高Ca区(2.0% Ca)に分けた.供試動物には白色レグホーン種雄初生雛を用い,14日令に各区5羽ずつに65Znと45Caとの混合液を経口投与または筋注投与し,その後経時的に5羽分の排泄物を-緒に集め,吸収率および代謝回転の速さを求めた.
    1. 65Znと45Caの排泄:筋注投与した65Znの排泄は,飼料中のCa含量が増すと減少した.経口投与した65Znの排泄は,飼料中のCa含量が増加するにつれ高まった.
    筋注投与した45Caの排泄は,飼料中のCa含量が増加するに連れ増し,経口投与した45Caの排泄は,飼料中のCa含量が増すと著しく増加した.
    2. 65Znと45Caの吸收率:65Znの吸收率は,飼料中のCa含量の増加につれ著しく減少した.45Caの吸収率は,飼料中のCa含量が増加すると低下し,飼料中のZn含量が高まると45Caの吸収率は増加した.
    3. 大腿骨のCa/P比率:飼料中のZn含量がN. R. C•要求量(35ppm)に近い時には,飼料中のCa含量が変化しても骨のCa/P比率は,ほぼ2:1に保たれたが飼料中のZn含量が100ppmに高まると骨のCa/P比率は低下した.
    4. 65Znと45Caの生物学的半減期(biological halflife, B. H. L.):経口投与した65Znの蓄積曲線より第1の成分(0~48時間)および第2の成分(48時間以降)のB. H. L.を求めた結果,飼料中のCa含量の増加とともに第1の成分のB. H. L.は減じ,逆に第2の成分では増した.しかし,高Zn区は標準Zn区に比べて低い値を示した.第1の成分のB. H. L.の長短は,吸収率の大小と極めてよく対応していた.経口投与した45Caの第1の成分のB. H. L.は,飼料中のCa含量の増加によって徐々に減じ,高Zn区は標準Zn区に比べて消化管内の通過速度が遅かった.第2の成分についても同じ傾向を示したが,高Zn区は標準Zn区に比べて代謝回転が速く飼料中のZn含量の増加によってCaの吸収率が増加することと関連しているものと考えられる.
    5. 高Zn群(10Oppm Zn)の標準Ca区(1.0% Ca)および高Ca区(2.0% Ca)で死亡した雛を剖検した結果,いずれも尿酸沈着症(Gout)であることが認められた.しかし,他の区では,本症が認められなかったことから考えると,飼料中のZnとCa含量が高い場合には,本症の発生率の高まることが推測される.
  • III. 繊毛虫類の粒食性について
    小野寺 良次, 神立 誠
    1970 年 41 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    反芻胃内繊毛虫類による細菌その他の粒子の取り込みを確認するために,染色した細菌等を使って,顕微鏡下で観察した.その結果,繊毛虫類は,細菌,酵母およびクロレラをよく取り込むこと,また,EntodiniinaeおよびDiplodiniinaeは,セルロース粉末や炭素粉末をもよく取り込むことが観察された.
    このように,反芻胃内繊毛虫類はよく粒状物質を取り込むことから,これは,繊毛虫の特異的な食物摂取様式であろうと考えられた.また,炭素粉末をも取り込む事実から,これらの繊毛虫には,粒子の栄養性に関する選択性はないものと考えられた.
    虫体内に取り込まれた可消化の粒子は,すみやかに分解をうけることが明らかとなった.
    本報告は,東京大学大学院農学系研究料に提出した博士論交(1967)の一部である
  • I. 肥育豚の評価およびブロイラー鶏の保健衛生技術の検討
    吉村 喜彦
    1970 年 41 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    畜産技術は,経済的裏付によって経営の生産性向上に結びつく時,その技術は経営技術となる.本報では,畜産経営における技術と経済の交渉する場を具体的に把え,それを検討することによって,主題への接近を試みたのである.
    生産原価の問題は,生産の物理的技術的関係にふれずしては解明できなく,畜産経営における技術と経済の交渉は,生産原価の問題を通じて具体的となる.この視点に立って,まず肥育試験による肥育豚の増体量を原価計算へ適用することによって,FCR(技術指標)が増体1kgに必要な飼料給与量-飼料費という形で貨幣表示され,さらに生産費(経済指標)と密接に交渉をもつことが明らかになった.
    加えてブロイラー養鶏経営の場合,保健衛生費の生産費に対する割合は,小さかったが,動物の生存率上,経畜産技術の経営経済的検討営経済上きわめて重要な問題であることが,明らかになった.すなわち,動物薬品利用の増加は,基礎理論の応用によって生存率,生産を高め,栄養剤の消費増加は,普通の薬品と併わせて利用される傾向となってきた.これらの薬品の付加的利用は,畜産の技術的効果を発揮したが,一方経営経済上では,経費の増加となってあらわれてきた.
    しかしながら,実態調査によれば,過剰使用でなく,生産費に占める動物薬品の割合は,1.0%-4.4%であり,動物薬品の使用量と育成率との間には,一定の比率が示されなかった.このことは,薬剤や栄養剤使用の経営経済的限界が未だ明らかでないからであって,動物薬品使用の経営経済的限界は,育成率(技術指標)と保健衛生費(経済指標)の間に一定の関係を見出した時に,明らかにすることができ,生産性を最大限に発揮することが可能となると考えられる.
    終りに臨み,ご校閲をいただいた農業総合研究所桜井守正博士に対して,深く感謝の意を表する次第である.
  • IX. 燐脂質の存在下におけるカルボニル化合物の反応(その2)牛筋肉燐脂質の加熱により生成する長鎖のα,β-不飽和アルデヒドについて
    中西 武雄, 須山 享三
    1970 年 41 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    牛大腿部筋肉より抽出した燐脂質を窒素ガスを封入した封管中で,100°C,2時間加熱を行なって,生成するカルボニル化合物の同定を行なった.その結果,炭素数28~36と考えられる長鎖のα,β-不飽和のアルデヒドの存在を確認した.
    このα,β-不飽和のアルデヒドはプラズマローゲンから,加水分解によって分離したC14~C18アルデヒドが,燐脂質のアミノ基の塩基性触媒作用により生成するものと考えられた.
  • I. 稲藁の化学的組成-特に炭水化物について
    保井 忠彦, 岩松 君子, 張 勝凱
    1970 年 41 巻 1 号 p. 34-43
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    稲藁の利用性向上をはかるための基礎として,その炭水化物の種類と分布とを明らかにする目的で本実験を行ない,次のような結果を得た.
    (1) 供試稲藁は乾物中5.96-6.48%の粗蛋白質を含有し,その65.6-74.5%がトリクロル酢酸沈澱性純蛋白質であった.
    (2) 供試稲藁は乾物中56.4-63.4%の炭水化物を含有し,その全量の48.6-55.5%がセルロース,35.9-46.0%がヘミセルロースであった.ヘミセルロースはキシランを主体とし,キシログルコサン,キシロガラクタンより成るものと推定された.澱粉系統の炭水化物は全量の3.8-7.3%にすぎなかった.試料Aでは単糖類としてフラクトース1.99%(炭水化物の3.15%),グルコース1.10%(同1.75%),二糖類ではシュクロース0.51%(同0.81%)の存在を確認した.試料B(陸稲藁)の単糖額,二糖類含有量は水稲藁のそれの約40%にすぎなかった.
    (3) 稲藁には乾物中35.6-37.0%の粗繊維を含有するが,主としてセルロースとヘミセルロースからなり,試料Aではその比率は85:15であった.若干のリグニンを含有していた.
    (4) 試料Aでは乾物中13.57%のリグニンを含有していた.
  • I. DEAE-セルローズカラムクロマトグラフィーによるγ-カゼインの分別
    三上 正幸
    1970 年 41 巻 1 号 p. 44-50
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    HIPPらのアルコール法により得られたフラクションCについて2°C,0.02M燐酸緩衝液(pH7.0)でDEHE-セルローズによる分別を試みた.最初に溶出する区分はセルローズに吸着されないで,室温においては白濁沈澱するいわゆるtemperature sensitive (TS)-カゼインであった.この区分はポリアクリルアマイドゲル電気泳動では移動度の遅い5つの成分から成り,以前にWAKEand BALDWINが報告したγ-カゼイン区分に相当した.さらにこの区分のチゼリウス電気泳動法によって,主要な2成分はそれぞれγ-カゼインおよびTS-カゼインである事が推測された.他の3成分については今後検討したい.セルローズに吸着した物質は食塩濃度を上げると溶出したがαs-, κ-, β-カゼインであった.
    フラクションCの上澄液を-20°Cで10-14日間保持して得られた沈澱をフラクションDとしたがそのほとんどはγ-カゼイン区分に相当する事が認められた.
    このγ-カゼイン区分のアミノ酸分析ではプロリン含量の多いのが特微であり又窒素含量12.8%であった.
    4.5M尿素を含む燐酸緩衝液中の超遠心分析では単一のピークであり,解離会合系を示した.
  • IV. カテージチーズ中の酸可溶性核酸関連物質
    林 慶文, 吉野 梅夫, 津郷 友吉
    1970 年 41 巻 1 号 p. 51-53
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    カテージチーズ中の酸可溶性核酸関連物質をDowex1-X8(ぎ酸型)のカラムクロマトグラフィーによって分析した.その結果,カテージチーズには5´-AMP.,GTP, ADPおよびATPの4種類が検出され,それらの平均含量はチーズ100gあたり,それぞれ0.68,0.75,0.70および0.63μMであった.これら物質の全含量(100g当り2.76μM)はゴーダおよびチェダーチーズとほぼ同じ程度で,プルーチーズの約1/3の含量であった.
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