日本畜産学会報
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62 巻, 11 号
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  • 向井 文雄, 石田 孝史
    1991 年 62 巻 11 号 p. 1015-1021
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    肉用種雄牛の能力検定の対象となる形質のように,測定が性によって限定され,世代が重複する選抜集団を想定した,モンテカルロシミュレイションによって,アニマルモデルによる育種価予測値に及ぼす形質記録および血統情報量の影響を検討した.
    集団は,雄5頭,雌100頭とし,初期遺伝率は0.3として,育種価予測値による選抜を7繁殖単位にわたり行なった.この選抜が加わったデータを用いて,基礎集団から順次,記録ならびに血統情報を削除し,育種価評価を行なった.
    その結果,3世代,少なくとも2世代に相当する記録ならびに血統情報を用いれば,育種価の真値と予測値の相関の低下や予測誤差分散の上昇を抑制できることが明らかになった.さらに,2ないし3世代さかのぼった情報による予測値による選抜シミュレイションを行なったところ,これらの結果と全情報を利用した選抜結果との間には大きな差異は生じなかった.
  • 古賀 新, 近宗 干城, 金井 幸雄, 本間 秀弥, 田島 淳史, 石川 尚人, 古川 良平, 上野 孝志, 中嶋 雅仁, 渡邊 利夫
    1991 年 62 巻 11 号 p. 1022-1028
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    沼沢水牛およびホルスタイン牛各2頭を入工気象室に収容し,25°C,30°C,35°Cおよび38°Cの各環境温度下での両種の熱産生量,赤血球数,ヘマトクリット値,ヘモグロビン濃度,2,3-DPG濃度,血液pHおよび静脈血炭酸ガス分圧を測定した.
    水牛,牛ともに環境温度が上昇すると呼気量が増加した.環境温度が30°Cから35°Cに上昇したとき,牛の熱産生量は有意に増加したが,水牛の熱産生量は変化しなかった.発汗量は全温度区を通して,水牛の方が牛よりも有意に低い値を示し,高温度環境でも大きくは増加しなかった.これは発汗による熱放散は水牛の体温調節にとってあまり大きな役割を果していないことを示している.環境温度が35°Cを越えたとき,水牛の赤血球数,ヘマトクリット値およびヘモグロビン濃度は減少し,牛の値より低くなったが,これは水牛においては高温度環境下で,水が脈管外から脈管内に移動していることを示唆しているように思われる.すべての環境温度区において,水牛の静脈2,3-DPG濃度は牛と比較して高かったが,両種ともに環境温度の上昇にともなって減少した.また環境温度の上昇にともなって,両種ともに静脈血炭酸ガス分圧も減少したが,血液pHは牛では一定に保たれたのに対して,水牛では有意に上昇した.
    以上の結果は,水牛と牛の高温度負荷に対する体温調節反応には大きな違いがあることを示しており,特に熱性多呼吸中の血液pHが上昇したことは,この動物の暑熱環境下での生理的適応能力が低いことを示唆するものと思われる.
  • 谷田 創, 千田 賢一郎, 鈴木 さと子, 田中 智夫, 吉本 正
    1991 年 62 巻 11 号 p. 1029-1034
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    豚における色の識別能力の有無を明らかにするために2つの実験を行なった.
    実験I:供試豚として離乳子豚2頭(ランドレース種(L)×大ヨークシャー種(W)の交雑種1頭とL種1頭)を用いた.T字型迷路を用いて,明度の等しい有彩色(赤,青,緑)を2色ずつ対比させ,子豚が正刺激側の色を選ぶと報酬として飼料を与えた.1セッションを30試行とし,左右のカードの交換は乱数表に基づいて行なった.X2検定により1セッション21試行以上の正解(P<0.05)を基準とし,その基準に3回連続して到達した時点でその色の組合せを識別したものと見なした.その結果,2頭の子豚はいずれも青と緑,青と赤を識別したが,赤と緑を識別できなかった.
    実験II:供試豚として離乳子豚2頭(L×Wの交雑種1頭とデュロック種×Wの交雑種1頭)を用いた,実験Iで用いた有彩色(赤,青,緑)と,各有彩色と同明度の無彩色(灰)を対比させ,子豚が正刺激側の有彩色パネルの下に取り付けたスイッチを鼻で押すと報酬として飼料を与えた.識別判定基準は実験Iに準じた.その結果,2頭の子豚はいずれも青と灰を識別したが,赤と灰および緑と灰の組合せについては識別できなかった.以上の結果から,離乳子豚は3原色(青,赤,緑)の中で,青だけを,明度の差ではなく色として識別していることが推察された.
  • 長峰 孝文, 堀川 由美, 竹井 謙一郎, 長澤 孝志, 小野寺 良次
    1991 年 62 巻 11 号 p. 1035-1042
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    反芻家畜のメチオニンスルホキシド(MSO)還元能は豚などの単胃動物よりも高いかもしれないとの仮説のもとに,屠場試料を用いて牛および豚の肝臓および腎臓におけるMSO還元活性を比較した.后性はMSOからのメチオニン(Met)生成量で表した.まず,各組織のMSO還元活性の存在を確認した後,それぞれのMSO還元酵素の性質を検討した.その結果,最適pH,最適温度,基質特異性は,各動物間および組織間に差が見られた,続いて,最適pHおよび39°C(生理的温度)の条件下で,また,還元剤として肝臓にはNADH,腎臓にはNADPH(各1mM)を添加し,最大活性が得られる基質濃度で,牛37頭および豚10頭の活性を測定した.その結果,nmolMet/h/g組織重で表すと,肝臓においては,牛(平均220)は豚(平均97)の2.3倍,腎臓においては,牛(平均586)は豚(平均269)の2.2倍の活性が見られ,肝臓および腎臓ともに,牛は豚よりも有意(P<0.001)に高い活性をもつことが分った.したがって,牛は,MSOをMetとして利用する能力が,豚よりも高いと考えられた.
  • 松井 徹, 北川 晴茂, 藤原 勉, 春本 直
    1991 年 62 巻 11 号 p. 1043-1047
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    エルファゼパムによる採食促進作用を,粗飼料のみを給与した場合と,濃厚飼料を多給した場合について比較した.まず3頭の雌メンヨウに,スーダングラス乾草を飽食させ,3×3のラテン方格に割り当て,0.05,0.1mg/kg体重のエルファゼパムまたは溶剤(エチルァルコール)を1日に2回,7日間にわたり経口投与した.ついで,これら3頭のメンヨウ中2頭に,大麦およびフスマ主体のペレッ卜飼料を飽食させ,5日間,エチルアルコールを経口投与し,その後7日間,0.1mg/kg体重のエルファゼパムを,1日に2回経口投与した,いずれの飼料給与時にも,エルファゼパムは採食量を増加させた.エルファゼパムの採食促進作用は,濃厚飼料多給時には7日間持続したが,一方粗飼料給与時では投与5日目には消失した.これらの結果から,エルファゼパムの採食促進作用は,給与飼料の種類によって異なることが明らかとなった,エルファゼパムの作用は,濃厚飼料飽食時のように,エネルギー供給が要求量を越える場合には持続的に認められるが,組飼料のみを給与し,第一胃内消化物の滞留が,採食を制限していると考えられる場合には,エルファゼパムの消化管内容物の通過速度減少作用のために,その採食促進作用が生じにくい可能性が示唆された.
  • 平野 雅彦, 本間 和宏, 大松 孝樹, 早川 江, 大泉 純, 財満 耕二, 菅家 祐輔
    1991 年 62 巻 11 号 p. 1048-1054
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    牛乳中のビオチンの存在形態と,その経時的変化を明らかにするために,ホルスタイン5頭から3カ月間牛乳を採取し,Lactobacillus plantarum ATCC8014を用いた新しいディスクプレート法により,その総ビオチン量と遊離型ビオチン量を測定した.
    牛乳の総ビオチン含有量は,出産後の日数の経過とともに有意に増加(p<0.01, r=0.718),遊離型ビオチン量も同様に有意に増加した(p<0.01, r=0,744).総ビオチン量に占める遊離型ビオチン量の割合は,日数の経過にかかわらず,泌乳期間を通して約81%と一定であった.
    また牛乳のビオチニダーゼ活性は,初乳に比べ移行乳(p<0.05),成乳(p<0.01)と有意に上昇し,更に総どオチン量(p<0.Ol, r=0.428),遊離型ビオチン量(p<0.01, r=0.425)とも有意な相関を示した.
    以上の結果から,牛乳中のビオチニダーゼ活性は,牛乳の遊離型ビオチンや総ビオチン含有量に影響していることが示唆された.
  • 細見 修, 竹屋 章, 矢澤 伸
    1991 年 62 巻 11 号 p. 1055-1061
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ニワトリをヒト血液型B血球で免疫すると,その卵黄に抗B抗体が移行した.この抗体活性を含むニワトリのIgY画分は哺乳類のIgG画分に相当し,ポリエチレングリコールとエタノールによって,他の卵黄成分から分離された.また,化学合成されたH-2型糖鎖(Fucα1-2 Galβ1-4 GlcNAcβR),A型三糖類(GalNAcα1-3[Fucα1-2]GalβR)やB型三糖類(Galα1-3[Fucα1-2]Ga1βR)をSilicaに結合させたSynsorbビーズを順次用いることで,抗B抗体が精製できることを明らかにした.こうして精製された抗B抗体は,ヒトのBおよびAB型血球のみを凝集し,AやO型血球は凝集しなかった,また,この抗体とB型血球との反応は,BおよびAB型の分泌型唾液によってのみ阻止され,これらの非分泌型やAおよびO型の分泌•非分泌型唾液では阻止されなかった,次に,この抗体の特異性を明らかにするために,糖鎖結合Synsorbビーズを用いた血球凝集阻止試験を行なった.その結果,B型三糖類とB-like二糖類(Galα1-3 GalβR)によって凝集阻止がみられ,更にB型三糖類によってより強く血球凝集反応が阻止されることが明らかになった.また,B型亜型(A1Bw,Bm)血球に対し,抗体は正常B血球に比べA1Bw型血球をやや弱く凝集したが,Bm型血球は凝集しなかった.これらの結果は,従来使用されてきたヒト由来のポリクローナル抗B抗体(β凝集素)の凝集パターンに一致し,ニワトリの卵黄由来の抗B抗体が,ヒト血液型判定用試薬として有用であることを示したものと言える.
  • 阿部 又信, 入来 常徳
    1991 年 62 巻 11 号 p. 1062-1064
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
  • 村松 達夫, 丹羽 信宏, 森山 直己, 古瀬 充宏, 奥村 純市, 大宮 邦雄
    1991 年 62 巻 11 号 p. 1065-1068
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
  • 寺脇 良悟, 榎島 拓朗, 福井 京子, 浅野 義人, 花 憲一, 福井 豊, 小野 斉
    1991 年 62 巻 11 号 p. 1069-1073
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種雄牛の凍結精液に関する質的改善や効率的生産および選抜形質としての可能性を検討する基礎的調査を目的として,精子の奇形率および細胞質小滴をもつ精子の割合(未成熟精子率)に影響する要因を検討し,さらに,奇形率および未成熟精子率の反復率を推定した.調査対象は,北海道の6カ所で繋養されている44頭のホルスタイン種雄牛から採精され,作製された凍結精液である.調査対象の凍結精液は1986年6月から1987年5月に作製されたもので,検査は原則的に各種雄牛について1回/月で行なった.全奇形率の平均値は9.1%であった.部位別では,中片部奇形が最も多く観察され4.2%であった.未成熟精子率は奇形率と比較して低く1.2%であった,分散分析の結果.奇形率および未成熟精子率に対する種雄牛の有意な影響が認められた(p‹0.01).一方,採精間隔および採精月の影響はまったく認められなかった(p›0.05).尾部欠損精子率および頚部奇形率の反復率は最も高く約0.65~0.76であった.また,全奇形率および中片部奇形率の反復率も0.55前後と高かった.分散分析の結果および反復率の推定値から,奇形率の外部要因による変動は比較的小さく,個体間変動が大きいことが推察された.
  • 木村 英司, 藤本 泰裕, 澤田 勉, 松永 寛, 森 純一
    1991 年 62 巻 11 号 p. 1074-1079
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    牛の行動変化による分娩予知についての基礎的知見を得るために,ホルスタイン種経産牛12頭を用いて,分娩前の起立回数および起立時間の変化を検討した.1日あたりのこれらの行動量は分娩日が近づくにつれて増加し,分娩0~1日前に最高値を示した.昼夜の区別では,昼間はほとんど行動量に変化が認められなかったが,夜間に著しい変化がみられ,1日あたりの行動量の変化は主として夜間の変化を反映したものであった.特に分娩3日前と前日との間に著しい変化が認められ,分娩予知のためには,この時期の夜間における行動の観察が重要であり,これによって分娩の時期をある程度予測しうることが示唆された.すなわち,夜間において,起立回数が9回以上,起立時間が6時間32分以上観察されたものでは,3日以内に分娩したものが多かった.
  • 土屋 剛
    1991 年 62 巻 11 号 p. 1080-1085
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    性ホルモン投与したウズラの性差および週齢差が骨髄骨の形成に及ぼす影響について画像解析装置を用いて調べた.
    1. 1~4週齢の雄と雌のウズラでは,骨髄骨の形成はエストロジェン単独投与より,エストロジュンとテストスラロンの併用投与で大きかった.
    2. 精巣重量が急激に増加する5~8週齢の雄ウズラの骨髄骨の形成は,エストロジェン単独投与で週齢とともに増加したが,エストロジェンとテストステロンの併用投与では逆に減少した.
    3. 5週齢のテストテロン単独投与の雌ウズラでは骨髄骨の形成は見られず,6週齢では無処理の雌に比べて骨髄骨の形成は小さかった.
    4. 8週齢の雌ウズラの骨髄骨はエストロジェンとテストステロンの併用投与で最も大きかった.
    5. 血清中のカルシュウム(Ca)値はエストロジェン単独投与の雄と雌のウズラで1週齢から6週齢にかけて増加したが,6週齢から8週齢にかけてやや減少した.
  • 鈴木 一郎, 古川 左近, 染谷 幸雄, 吉野 正純
    1991 年 62 巻 11 号 p. 1086-1094
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    1989年1月から11月にかけて,4地域(北海道,茨城,千葉の酪農家および農林水産省畜産試験場)の牛群から隔月毎に6回,5頭分ずつ採取した個体乳中のカゼイン含量,ホエータンパク含量を測定した.
    その結果,全乳タンパクに占めるカゼインの割合(カゼインナンバー,カゼインNo.)は全サンプル平均(脱脂乳)で76.7%であったが,各地域の牛乳の中には5頭平均で67.5%,71.6%,72.2%と非常に低い牛乳も存在した.
    カゼインNo.の低い牛乳でも全乳タンパク含量は低くはなかった.低カゼインNo.の牛乳ではβ-ラクトグロプリン(β-Lg)含量が多かった.カゼインNo.の低い牛乳ではホエータンパク中のβ-Lgのほか,プロテオ-スペプトン,γ-グロブリンが多い傾向にあった.カゼインNo.の低い牛乳ほど血液成分の影響を強く受けていると考えられた.
    牛乳を5°Cで1,500×g,30分遠心分離した際,カゼインの4%以上が沈殿した牛乳が多く存在した,低カゼイン含量牛乳は乳製品製造上好ましくないものであり,飼養技術面からの改善が必要と考えた.
  • 根岸 晴夫, 夏野 めぐみ, 吉川 純夫
    1991 年 62 巻 11 号 p. 1095-1103
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    熟成期間の不明な牛肉の熟度を幅広い期間で推定できる指標を求めるために,屠殺後3日のホルスタイン種去勢牛のロイン部を2°Cで,4,11,14,31日間貯蔵し,食味性,剪断力価(SFV),筋原線維の小片化率(MFI),およびSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)パターンの変化を調べた.牛肉の食味性は,貯蔵11日目(死後15日)頃から官能的に柔らかくなり,香味も改善されたが,31日目には柔らかくなり過ぎ,逆に好ましくなかった.一方,物理化学的特性は何れも11日目までは比較的顕著に変化し,SFVは減少,MFIは増加の傾向を示した.更にSDS-PAGEの結果,30,000ダルトン成分(30KD)も貯蔵4日目から認められ,その濃度は貯蔵中,次第に増加する傾向を示した.これらの変化は食味性が良好となる時期と一致するため,このときに熟成効果は最大に達していると考えられた.SFVは,この間(熟成前期)の熟度指標として有効であったが,その後(熟成後期)は好ましくなかった.一方,MFIと30KDは後期熟成中も漸増傾向を示したことから,由来不明の牛肉の熟度を幅広く推定するための指標として,より好ましいと考えられた.
  • 広岡 博之
    1991 年 62 巻 11 号 p. 1104-1106
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
  • 仲田 正, 田中 耕作
    1991 年 62 巻 11 号 p. 1107-1109
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
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