ウシ血液型判定用モノクローナル抗体は必要量を無制限に生産でき,多数の研究室で共通な標準試薬として使用可能である.さらにこれらの抗体はヨーロッパ系牛,ゼブー系牛,バリ牛といった起源の異なる種々のウシに対する血液型判定用試薬として吸着せずに使用することができる可能性もある.これらの観点から我々の研究室ではウシ血液型判定用モノクローナル抗体の作製を試みた.
モノクローナル抗体の作製は細胞融合法の常法により実施した.即ちウシ赤血球を抗原とし,これをBALE/c系マウスに免疫した.またミエローマ細胞はSP2,653,あるいはNS-1を用いた.作製した抗体の特異性はホルスタイン種,黒毛和種,褐毛和種および韓牛の合計2,000頭以上の血球を用いて分析したほか,1989年国際比較同定試験に参加して同定した.
26回の細胞融合実験の結果,A, B, C, F, SおよびZシステムに属する合計60株,33種のモノクローナル抗体を確立した.マウスハイブリドーマ手法によって作製されたこれらの抗体は,これまでに異種免疫から得ることができると報告されている全ての抗体を綱羅するものであった,なかでもAおよびFシステムに属する抗原に対する抗体は高頻度で得られ,これらの認識する抗原はウサギ,マウスにとって最も認識しやすいウシの赤血球抗原であることが示唆された.抗-A
2,FcおよびZ
1モノクローナル抗体の中には量的反応を示す抗体も認められた.抗-Fcと命名した抗体は抗-F
1と同一の反応を示したが,高力価ではV型血球をも溶血させ,さらにこのFc抗原はすべてのウシ個体に共通に存在する赤血球抗原であることが判明した,またSシステムの2つの因子の共通エピトープをとらえる抗体も作出された.
得られたハイブリドーマは現在なお安定して抗体を産生しており,これらのモノクローナル抗体はウシの血液型判定並びに同一システム内の亜型抗原の解析に有用であると判断した.
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