日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
63 巻, 3 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 半澤 恵, 渡邉 誠喜
    1992 年 63 巻 3 号 p. 249-255
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    サラブレッド種馬の赤血球中の遊離アミノ酸組成をLi型カラムにより分析し,遊離アミノ酸組成とBAシステムおよびARGase (AR)システムとの関係を調査した.馬赤血球は23種類のアミノ酸並びに1種類のペプチド,即ちo-Phosphoserine, Taurine, Aspartate, Threonine, Serine, Asparagine, Glutamate, Glycine, Alanine, Citlulline, Valine, lsoleucine, Leucine, Tyrosine, Phenylalanine, β-Alanine, β-Amino-iso-butyrate, γ-Amino-butyrate, Histidine, 1-Methylhistidine, Carnosine (β-alanylhistidine), Ornithine, LysineおよびArginineを含有していた.
    BA+型の馬赤血球中のAspartate, Threonine, Serine, Alanine, Tyrosine, HistidineおよびLysineの濃度はBA-型のそれらに比べて有意に高濃度であった.AR•H型の馬赤血球はAR.L型のそれに比べてOrnithine濃度が高く,Arginine濃度が低かった.ARシステムとBAシステムにより分類された4種類の馬赤血球では[AR•H:BA+]型のOrnithnie濃度(2138-27nmol/ml)は[AR•H:BA-]型のそれ(851±27nmol/ml)に比べて有意に高濃度であり,また,[AR•L: BA+]型のArgnine濃度(2099±21nmol/ml)は[AR•L:BA-]型のそれ(724±21nmol/ml)に比べて有意に高濃度であった.
  • 西田 隆雄, 林 良博, 庄武 孝義, 前田 芳實, 山本 義雄, 黒澤 弥悦, 道解 公一, 本江 昭夫
    1992 年 63 巻 3 号 p. 256-269
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    1986年,1988年および1989年の第一,二,三次ネパール在来家畜調査において,赤色野鶏の亜種の形態学的同定と生態学的調査を行なった.タライ地方で雄6,雌5個体を収集し,そのうちの成体雄4,雌4個体について生体計測を行ない,また雄1と雌2個体を剥製標本にし,詳細な形態学的研究を行なった.生態的聞きとり調査は16地点で行ない,タライとシワリク丘陵地域の4地点で野鶏の観察を行なった.ネパールとタイの赤色野鶏の剥製標本を比較し,両者の羽色と羽装の相違に基づき,ネパールの野鶏の亜種をGallus gallus murghiと同定した.7計測部位を用いて多変量解析を行ない,ネパールの赤色野鶏の大きさと形はインドネシアのGallus gallus murghiに類似し,タイのGallus gallus gallusおよびジャワのGallus gallus bankivaより大きいことを明らかにした.生態的調査によって,タライ地域では国立公園や保護区以外の地域にも,かなり大きい赤色野鶏の集団が生息していると推定された.成体の雄3と雌2個体が,退縮した生殖腺をもつことを剖検によって確認し,繁殖季節の存在を証明した.また繁殖季節には地理的あるいは気象的な地域差があるものと考えられる.在来鶏と赤色野鶏との交雑の可能性が示され,ネパールの赤色野鶏の産卵数は,他の東南アジアの野鶏のそれとほとんど同じであることが明らかにされた.
  • 川本 芳, 天野 卓, 並河 鷹夫, 西田 隆雄, H. B. RAJUBHANDARY
    1992 年 63 巻 3 号 p. 270-276
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ネパールの在来水牛にみられる乳蛋白変異を調査するために,国内の4地点から22乳試料を採取した.乳中のαs1-カゼイン,β-カゼイン,κ-カゼイン,β-ラクトグロプリンの4種類の蛋白の多型を,尿素を含む薄層ポリアクリルアミドゲルによる等電点電気泳動法を用いて検索した.
    この結果,κ-カゼインとβ-ラクトグロブリンでは検体間の差異が検出されなかった.一方,αs1-カゼインとβ-カゼインには各々2つの表現型が見いだされ,2つの対立遺伝子による支配が予想された.また,牛で既知の乳蛋白変異の表現型と比較した結果,水牛のβ-カゼイン変異の一方は牛のA2型と同じ等電点を示すこと,水牛のβ-ラクトグロブリンは牛のB型と同じ等電点を示すことが明らかになった,他研究者の等電点電気泳動法による分析から乳牛や緬羊の品種について得られている乳蛋白座位の遺伝的変異性と今回の結果を比較したところ,ネパールの水牛では全体的に乳蛋白の合成に関与する各座位における変異性のレベルが低いことが示唆された.
  • 小櫃 剛人, 谷口 幸三, 山谷 洋二
    1992 年 63 巻 3 号 p. 277-285
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    山羊とめん羊を用いて,反芻家畜における有機物及び繊維の消化と窒素利用に及ぼす第一胃内への尿素注入速度の影響を検討した。実験1では第一胃カニューレ装着山羊3頭にイタリアンライグラス乾草(粗蛋白質含量6.4%)を1日2回(08:00と20:00)等分給与し,給飼直後から尿素(19.4g/d)を3,6, 12時間かけて第一胃内に注入した.対照として尿素無注入の場合について調べた.尿素を注入しても有機物,NDF, ADFの消化率は変わらなかった.注入速度の違いもこれらの消化率に影響を及ぼさなかった.窒素蓄積量は尿素を注入することにより増加したが,注入速度の違いによる影響は認められなかった.実験2では第一胃と十二指腸にカニューレを装着しためん羊3頭にイタリアンライグラス乾草と圧片トウモロコシからなる飼料(粗蛋白質含量7.3%)を1日2回(08:00と20:00)等分給与し,給飼直後から尿素(22.0g/d)を2, 6, 12時間かけて第一胃内に注入した.第一胃内容液のアンモニア態窒素濃度とpHの日内変化に,尿素注入速度による影響が認められた.第一胃内容液の日平均pHは,尿素を2時間で注入した場合に低くなった.有機物,NDF, ADFの胃内および全消化管消化率には,尿素注入速度の影響は認められなかった,尿素を2時間で注入した場合,反芻胃での窒素消失量が少なく,菌体窒素合成量と下部消化管での窒素吸収量が多くなり,その結果窒素蓄積量が多くなった.これらの結果から,第一胃内への尿素の供給速度は有機物や繊維の消化率には影響を及ぼさないが,反芻胃内での微生物蛋白質の合成に影響を及ぼす可能性が示唆された.
  • 梶川 博, 長崎 祐二, 甘利 雅拡, 阿部 亮
    1992 年 63 巻 3 号 p. 286-294
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    飼料中のデンプン含量を変化させた時の,ルーメン内微生物相の変化を測定すると同時に,各々の給与条件下で調製した洗滌ルーメン菌体を用いて,牧草および数種類の製造粕より抽出した総繊維のインビトロ消化試験を行なった.
    供試動物としてルーメンフィステル装着黒毛和種去勢牛を用い,イタリアンライグラス乾草にトウモロコシを0, 1.5, 5.Okg/日添加した飼料(それぞれ飼料A, B, C)を給与した.キシラン発酵菌は総生菌,デンプン分解菌と同様にデンプン給与によりその数が増加した.一方,セルロース分解菌は飼料Cで減少した.またメタン産生菌およびプロトゾアは飼料Bで増加する傾向を示した,インビトロ消化率は全ての試料において飼料C給与時に低い総繊維消化率を示した.また飼料Bは飼料A給与時に比べて,全ての試料において低いADF消化率を示したが,総繊維中の非ADF成分の消化率が増加したために,総繊維全体での消化率には差は見られなかった.この飼料B給与時での非ADF消化率の増加は,ヘミセルロース発酵菌の増加に対応したものと考えられる。
  • 松井 寛二, 板野 志郎
    1992 年 63 巻 3 号 p. 295-300
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ヒト用に開発された心拍メモリー装置を放牧牛に応用し,24時間以上の長期間にわたり心拍数を記録してきた.本報告は,ホルスタイン育成牛あるいは成牛を用いてこの装置の性能と放牧時の測定精度を調査したものである.心拍メモりー装置の心電図誘導法として,QRS群の電位が大きく,しかも波形が安定しているA-B誘導法が最適であった.毎分50拍程度から160拍まで測定できた.A-B誘導法による測定で、草地に昼夜放牧中の育成牛の24時間総心拍数(DHB)は約14万拍で,そのうちの0.2~0.45%がミスカウントで,過大に測定された.このミスカウントの大部分は食草時に見られた.以上の結果から長期間にわたり心拍数を自動記録できる心拍メモリー装置は牛においても測定精度が高く,放牧牛の心拍数記録装置として広く利用できることが再確認された.
  • 森田 英利, 宮本 拓, 片岡 啓, 西川 登之
    1992 年 63 巻 3 号 p. 301-307
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ラクトース発酵性およびプロテアーゼ活性がない(Lac- Prt-)ため牛乳中での生育がみられず,従来,乳業用乳酸菌とは考えられていなかったPediococcus acidilacticiから,著者らは接合法を用いて牛乳中で生育可能なLac+ Prt+ P. acidilactici (Lac+ Prt+交配菌)を作出した.本研究では,そのLac+ Prt+交配菌の脱脂乳培地における芳香生産性と生酸性を試験し,発酵乳を作るための培養条件を検討した.その結果,Lac+ Prt+交配菌は良好な芳香生産性を示し,脱脂乳培地を凝固した.しかし,培地の凝固には36時間を要した.一方,生酸性において脱脂乳培地中のグルコースおよび無脂乳固形分の影響を検討したが,滴定酸度は0.85%(発酵乳の嗜好上,至適乳酸酸度)に及ばなかった.そこで,発育の促進を図るためフィルター滅菌したシイタケジュースを添加したところ,培地の凝固時間および生酸性は著しく改善された.
    以上のような検討結果から,Lac+ Prt+交配菌を用いた実用的な発酵乳の製造条件を決定した.すなわち,12%還元脱脂乳に8%量のショ糖を加えて殺菌した後,フィルター滅菌したシイタケジュースを1%量添加する.このミックスにLac+ Prt+交配菌を2%量接種し,30°Cで16~18時間培養することによって発酵乳が製造できた.つまり,P. acidilacticiの牛乳への利用が可能になったものと思われた.一方,このLac+ Prt+交配菌は発酵乳製造60日以上も安定した滴定酸度(約0.9%)と生菌数(106/mlレベル)を保持し,また法Pediococcus属細菌由来の耐塩性(8~9%NaCl)をもつことから,今後,チーズスターターへの利用も期待される.
  • 星野 貞夫, 小林 泰男, 脇田 正彰
    1992 年 63 巻 3 号 p. 308-309
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
  • 関口 総一郎, 草薙 正克, 渡辺 和紘, 下郡 洋一郎
    1992 年 63 巻 3 号 p. 310-317
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    豚の血巾早期妊娠因子(Early Fregnancy Factor; EPF)の測定に適したロゼット抑制試験(Rosette Inhibition Test; RI Test)系を確立した後,その測定法を用いて豚の早期妊娠診断を行なった.すなわち,交配後,3週間以内の豚27頭について血清を採取し,RI Testを用いて血清中のロゼット抑制力価(Rosette Inhibition Titer; RIT)を測定した.
    RI Testの結果,27頭中17頭は4または5の高いRITを,他の10頭は1または2の低いRITを示したため,前者を妊娠,後者を非妊娠と診断した.その後,これらの豚は胎子の存在,流産または分娩の確認によって18頭が妊娠と診断され,また発情の回帰確認によって9頭が非妊娠と診断された.そこで,RITによる診断結果と実際の妊娠の有無を照合した.その結果,高いRITを示した17頭中2頭は非妊娠であり,RITの低い10頭中に3頭の妊娠豚が含まれていた.したがって, RI Testによる妊娠または非妊娠の診断率は,各々15/18頭で83.3%,7/9頭で77.8%の値を示した.また,これらの結果を胚の着床の前後で分けて比較した場合,妊娠,非妊娠にかかわらず診断の的中率は着床前で80.0%,着床後では83.3%とほぼ同様な成績を示した.
    したがって,RI Testを用いて豚の妊娠診断を行なった場合,胚の着床する以前に高率で妊娠を判定出来る可能性が見出された.
  • 新井 吉典, 四谷 伊公子, 新村 末雄, 石田 一夫
    1992 年 63 巻 3 号 p. 318-324
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    hCG注射後96から126時間までのマウスの無処置胚盤胞,Day 10とDay 24の着床遅延胚盤胞および着床を開始させたDay 10の胚盤胞の細胞表面について,レクチン結合を組織化学的に観察した.PNA, GS-I, SBA, WGAおよびDBAは,どの胚盤胞においても栄養膜と内細胞塊の細胞に弱度または強度に結合していたが,GS-IIとLPAは全く結合しなかった.UEA-Iは108時間までの無処置胚盤胞では栄養膜細胞にのみ結合したが,114時間以降のものでは内細胞塊細胞に結合が出現し,栄養膜細胞では強くなった.この結合は着床遅延胚盤胞にはみられなかったが,着床を開始させた胚盤胞では栄養膜と内細胞塊の細胞に認められた.BPAは102時間までの無処置胚盤胞では栄養膜細胞にのみ結合したが,それ以降の胚盤胞と着床遅延胚盤胞では栄養膜と内細胞塊の細胞に結合した.MPAとCon Aは108時間までの無処置胚盤胞と着床遅延胚盤胞では栄養膜細胞にのみ結合したが,114ないし126時間の無処置胚盤胞および着床を開始させた胚盤胞では内細胞塊と栄養膜の細胞に結合した.これらのことから,マウス胚盤胞は着床へ向けて,栄養膜細胞表面ではN-アセチルガラクトサミンを含む複合糖質の減少とフコースを含むものの増加,また内細胞塊細胞表面ではBPAとMPAに親和性のあるN-アセチルガラクトサミン,UEA-Iに親和性のあるフコースまたはCon Aに親和性のあるマンノースを含む複合糖質の出現が考えられた.
  • 浦田 克博, 萬田 正治, 渡邉 昭三
    1992 年 63 巻 3 号 p. 325-331
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    塩味(塩化ナトリウム),酸味(酢酸),甘味(ブドウ糖),苦味(塩酸キニーネ),旨味(グルタミン酸ナトリウム)に対する鶏•鶉の味覚反応を2瓶選択法で調べた.これらの味物質を水道水に溶かしてそれぞれ11段階の濃度を設定し,低濃度から高濃度へ向けて実験を行なった.各濃度における総飲水量に対する試験液の摂取割合を選好指数とし,濃度上昇に伴う選好指数の推移を味覚反応曲線として表し,味覚反応を推察した.X2-検定により,選好指数39.7%から60.3%は不弁別範囲,60.3%以上は嗜好範囲,39.7%以下は拒絶範囲と定義した.塩味の濃度は鶏が0.64%,鶉が1.28%まで弁別せず,鶏が1.28%,鶉が2.5%以上で拒絶反応を示した.酸味の濃度は鶏が0.04%,鶉が0.16%まで弁別せず,鶏が0.08%,鶉が0.32%以上で拒絶反応を示した.甘味の濃度は鶏が20%まで弁別せず,鶉は1.28%と2.5%で弱い嗜好を示した.苦味の濃度は鶏が0.02%まで弁別せず0.04%以上で拒絶反応を示し,鶉は0.32%まで弁別しなかった.旨味の濃度は鶏が0.64%,鶉が5%まで弁別せず,鶏が1.28%以上,鶉が10%で拒絶反応を示した,以上の結果より,鶏と鶉は特に強い嗜好を示す味物質はないことと,鶏は鶉より味覚が敏感であることが明らかとなった.
  • 板野 志郎, 大久保 忠旦, 沢崎 徹, 松井 寛二
    1992 年 63 巻 3 号 p. 332-334
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
feedback
Top